上 下
202 / 263
もふもふいっぱい?

183.友だちとピクニック

しおりを挟む
 はじまりの街まで転移して、西の海岸に行ってみたら、たくさんのプレイヤーが行き交ってた。
 なんでー? と思ったら、どうやら琥珀とゴムを入手するためにサクの川に行ってる人が多いみたい。……これ、僕のせいだね?

 たくさん買い取りに出されてるんだろうなー、と思いながら人目を避けるために場所を変えることにした。向かったのは東の草原。

「……ぜんっぜん人がいない!」

 見渡す限り緑の草原、その先に木々。プレイヤーが皆無。そんなのアリ?
 でも、ここはイベントモンスターもあんまりアイテムをドロップしてくれないみたいだし、仕方ないかー。もうゲームを始めたばかりって人も少ないだろうしねぇ。

「僕には好都合だけど」

 現れて挨拶してくるスライムたちに応えながら、少し奥の方へ進む。と言っても、草原狼プレアリーウルフが出てくる手前ね。

 改めて人目がないのを確認して頷く。テイムスキルはまだ珍しいみたいだから、僕はテイムモンスターをあからさまにアピールしたくないんだよ。

「【召喚】スラリン、ユキマル、ペタ、ショコラ、オギン!」
「きゅぃ」
「ぴぅ」
「くるぅ」
「くまま」
「キュオ」

 すぐさま現れた二体から少し間を置いて、ペタたちも姿を出てきた。
 やっぱりモンスター空間に入れてないと、ちょっと召喚に時間がかかるなぁ。バトルで喚び出す時は、ちゃんとそのことを計算に入れてないとダメだね。

 ちなみに、五体喚んだらフルパーティになって限界なので、今回はピアを喚んでない。ごめんねー、また今度喚ぶから!

「きゅ!」
「今日は遊びたいだけだよー」

 スラリンが『水がない……つまりバトル!』とテンションを上げてるので、そう答えた。水辺=漁、水辺以外=バトルの方程式ができてるみたいだけど、例外もあるからね?

「ぴぅ?」
「ううん、今回は浄化しなくていいよ。明かりもいらないからね」

 不思議そうなユキマルに答えながら、草原に食べ物を並べる。
 今日はみんなで仲良くピクニックだー。それぞれの好物も知りたいな。

「くるるぅ」

 伏せたペタが、興味深そうに食べ物を眺めてる。ショコラは早速チョコマフィンに手を伸ばして食べ始めてた。

「きゅい!」
「くまま?」

 スラリンが『ちゃんといただきますをしてから、たべるんだよ』と注意して、ショコラが『へぇ、そうなんだ?』と答えながら食べ続ける。ショコラはマイペースだなぁ。

 ちょっと怒ってるスラリンを宥めて、みんなに「好きなものを食べてね」と促した。

「ぴぅ……ぴ!」

 迷っていた様子のユキマルは、おにぎりを取ってモニュモニュと食べる。具材は焼き鮭にしたけど、どう?

「きゅぃ?」
「ぴぅ!」

 スラリンとユキマルが『おいしい?』『おいしいよ! ボク、これ好き』と話してるのを聞いて、ニコニコと笑っちゃう。仲良しなの、可愛いね。

「きゅ!」
「スラリンはお刺身が好き?」

 真っ先に暴鱸アバレスズキのお刺身を食べ始めたから聞いてみる。すると、『はじめてモモといっしょにとって、たべたものだから』という返事が来た。

「――なんか嬉しい! 僕との思い出を大切にしてくれてるんだね!」
「きゅぃ!」

 当然でしょ、と頷くスラリンに、ニコニコが止まらない。種族としての好物とは違うのかもしれないけど、そういう理由で好きな物ができるのもいいね。

「くるぅ」

 ペタは食べ物を見比べた後に、キュウリの漬物を食べ始めた。好みが渋いね? 他にも、キュウリのサンドウィッチや酢の物に手を出してるから、キュウリが好物なんだろうな。

「……カッパかな?」

 本物のカッパがキュウリ好きかどうかは知らないけど。水辺の生物っていうのは一緒だし。
 ペタの頭にお皿があるのを想像して、吹き出して笑っちゃった。可愛いのは間違いないんだけど……ふははっ。

「キュオ」
「オギンはお肉が好きなんだね」

 跳兎ジャンプラビの照り焼きを食べ始めたオギンを眺めて、ふんふんと頷く。続いて食べたのが跳兎ジャンプラビの塩コショウ焼き。その次が跳兎ジャンプラビのホワイトシチュー。

「――お肉の中でも跳兎ジャンプラビ肉が好きなのかー、あははー」

 ウサギの肉が好きってことは、僕を食べたいとか思ってない? とちょっぴり考えちゃったけど、すぐに忘れよう。
 それに、天兎アンジュラパは霊峰での仲間って言ってたし、僕は食べ物扱いはされてないはず! 決して、仲間=保存食ではない——ということで、いいよね?

「キュオ?」
「あ、ありがとう」

 オギンが『モモも食べる?』と跳兎ジャンプラビの照り焼きを差し出してきたので受け取る。僕も跳兎ジャンプラビのお肉好きだよ。

「くまま?」
「うまうまだよー。みんなで食べるとさらに美味しく感じるね」

 ショコラが『それ美味しい?』と聞いてきたので答えたら、『へぇ、ショコラは焼いたチョコが好き』という返事があった。勧められても跳兎ジャンプラビ肉を食べる気はないらしい。やっぱりマイペース! 僕以上かも。

 それぞれが食べ進めてるのを眺めながら、オギンに近づく。毛繕いしたら、アイテムゲットできそうだなって思って。

「――おお! 【ふわ艶毛】ゲットだ~」

 予想通りアイテムをもらえたので、毛繕いスキルを使って最大数ゲットする。またぬいぐるみ作れるかな~。

 オギンの次に、ショコラに毛繕いスキルを使ったら、【硬化毛】をゲットした。魔力を通すと硬化する毛らしい。元々がちょっと固めだから、ぬいぐるみには向かないかも?

 一応最大数入手してから、ペタを毛繕いする。もらえたアイテムは【撥水毛】だった。名前通り、水を弾く効果があるらしい。弾力がある触り心地で、こういう質感のぬいぐるみが好きな人もいそうだなぁ。

「僕、ぬいぐるみにすることばっかり考えすぎでは……?」

 ふと気づいて、笑っちゃった。ぬいぐるみ以外にも、便利アイテム作れたらいいね!

 ついでにスラリンとユキマルをタオルで磨いたら、【磨く】スキルを習得した。
 早速スキルを使うと、スラリンから【スライムジェル】、ユキマルから【浄化水】をゲット。何に使えるのか楽しみだなぁ。

 今日はそろそろログアウトしないとダメだから、次回アイテム作成しようかな? でも、早くテイマーになりたいし……悩むぅ!

 考え込んでたら、近くで草を踏む音がした。敵のモンスターの気配はなかったんだけど……?

「はぅ! ここがもふもふパラダイス……!」
「タマモ?」

 振り返ったらタマモがいた。なんでここにいるんだろう?
 パタッと倒れながらも、オギンたちを凝視してるから、ちょっと怖い。

「——うん、見なかったことにしよう!」
「キュオ?」

 オギンが『いいの?』と聞いてくる。でも、面倒くさそうなことはスルーした方がいいんだよ。

 さぁて、そろそろ召喚時間が切れるから、街に戻ろうかな~。

 ……え? タマモはどうするのって?
 もふもふがいなくなったら、正気に戻って自分で帰るでしょ。きっと。

しおりを挟む
感想 1,040

あなたにおすすめの小説

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!

よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

【完結】数十分後に婚約破棄&冤罪を食らうっぽいので、野次馬と手を組んでみた

月白ヤトヒコ
ファンタジー
「レシウス伯爵令嬢ディアンヌ! 今ここで、貴様との婚約を破棄するっ!?」  高らかに宣言する声が、辺りに響き渡った。  この婚約破棄は数十分前に知ったこと。  きっと、『衆人環視の前で婚約破棄する俺、かっこいい!』とでも思っているんでしょうね。キモっ! 「婚約破棄、了承致しました。つきましては、理由をお伺いしても?」  だからわたくしは、すぐそこで知り合った野次馬と手を組むことにした。 「ふっ、知れたこと! 貴様は、わたしの愛するこの可憐な」 「よっ、まさかの自分からの不貞の告白!」 「憎いねこの色男!」  ドヤ顔して、なんぞ花畑なことを言い掛けた言葉が、飛んで来た核心的な野次に遮られる。 「婚約者を蔑ろにして育てた不誠実な真実の愛!」 「女泣かせたぁこのことだね!」 「そして、婚約者がいる男に擦り寄るか弱い女!」 「か弱いだぁ? 図太ぇ神経した厚顔女の間違いじゃぁねぇのかい!」  さあ、存分に野次ってもらうから覚悟して頂きますわ。 設定はふわっと。 『腐ったお姉様。伏してお願い奉りやがるから、是非とも助けろくださいっ!?』と、ちょっと繋りあり。『腐ったお姉様~』を読んでなくても大丈夫です。

【 完結 】「平民上がりの庶子」と言っただなんて誰が言ったんですか?悪い冗談はやめて下さい!

しずもり
恋愛
 ここはチェン王国の貴族子息子女が通う王立学園の食堂だ。確かにこの時期は夜会や学園行事など無い。でもだからってこの国の第二王子が側近候補たちと男爵令嬢を右腕にぶら下げていきなり婚約破棄を宣言しちゃいますか。そうですか。 お昼休憩って案外と短いのですけど、私、まだお昼食べていませんのよ?  突然、婚約破棄を宣言されたのはチェン王国第二王子ヴィンセントの婚約者マリア・べルージュ公爵令嬢だ。彼女はいつも一緒に行動をしているカミラ・ワトソン伯爵令嬢、グレイシー・テネート子爵令嬢、エリザベス・トルーヤ伯爵令嬢たちと昼食を取る為食堂の席に座った所だった。 そこへ現れたのが側近候補と男爵令嬢を連れた第二王子ヴィンセントでマリアを見つけるなり書類のような物をテーブルに叩きつけたのだった。 よくある婚約破棄モノになりますが「ざまぁ」は微ざまぁ程度です。 *なんちゃって異世界モノの緩い設定です。 *登場人物の言葉遣い等(特に心の中での言葉)は現代風になっている事が多いです。 *ざまぁ、は微ざまぁ、になるかなぁ?ぐらいの要素しかありません。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

ある国立学院内の生徒指導室にて

よもぎ
ファンタジー
とある王国にある国立学院、その指導室に呼び出しを受けた生徒が数人。男女それぞれの指導担当が「指導」するお話。 生徒指導の担当目線で話が進みます。

【完結】平凡な容姿の召喚聖女はそろそろ貴方達を捨てさせてもらいます

ユユ
ファンタジー
“美少女だね” “可愛いね” “天使みたい” 知ってる。そう言われ続けてきたから。 だけど… “なんだコレは。 こんなモノを私は妻にしなければならないのか” 召喚(誘拐)された世界では平凡だった。 私は言われた言葉を忘れたりはしない。 * さらっとファンタジー系程度 * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

一家処刑?!まっぴら御免ですわ! ~悪役令嬢(予定)の娘と意地悪(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。

拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。

処理中です...