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錬金術士だよ?

144.オーダーメイドです

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「ルトはどうするの? 私のおすすめはイヤリングだよ」

 リリがルトの腕をツンツンとつつき言う。ルトは訝しげな表情だ。

「なんでだ?」
「ルトってリアルラック低いから。ステータスで上げとかないと」
「ぶふぁっ!」
「なっ、ちょ、リリ、お前っ!」

 にこやかに容赦のなく言い放たれたルトのリアルラック事情を聞いて、思わず吹き出して笑っちゃった。
 そういえば、ノース街道で採掘に行った時、ルトの幸運値の低さでアイテム収集苦労したんだよなぁ。

 思い出しながらも、笑いが止まらなくてお腹を抱えてたら、ルトに頭をバシッと叩かれた。

「モモ、笑いすぎだぞ!?」
「ふはっ、だって、ルト、どんだけ……っ、ははっ」
「うっせー! ほっとけ!」

 ルトが拗ねちゃった。
 顔を背けるルトを見てから、リリに視線を向ける。微笑ましげな表情だから、ご機嫌取りをする必要はなさそう。

「それで、ルトのはイヤリングでいいよね?」
「……好きにすれば」
「ということで、ルトの分はイヤリングでお願いね」

 リリってば、強い……。笑顔でルトの不満を受け流してる。さっさと話を進めちゃうし。僕の方が、本当にそれでいいのかなって思っちゃうよ。

「ルト。僕とお揃いになるけど」
「げっ……」

 盛大に顔を顰められた。そこまで嫌がられると、僕も傷つくんですけどぉ?!

「お揃い、いいね! でも、ルトの装備は黒と銀だからなぁ。モモ、ゴールドじゃなくてシルバーじゃ作れないの?」

 急にリリから無茶振りされたんだけど。
 えー、錬金玉に表示されないレシピで作ったら、オリジナルレシピ扱いになるんだよ? 成功率激下がりになっちゃう。
 いくら、僕の錬金玉がアリスちゃんのおかげで特別になってて、オリジナルレシピも成功しやすくなってるとはいえ――。

「……完全にお揃いよりは、色違いの方がマシ」
「気軽に言うんだから、もう」

 ルトにまで言われちゃったら、やってみるしかない。お揃いは断固拒否しそうだし。
 幸い、ルトたちが琥珀をたくさん取ってきたから、失敗しちゃってもなんとかなるはず。

「――えっと。強化した琥珀とー、シルバーを載せてー」

 準備完了。錬金玉を見たら、予想通りオリジナルレシピ表示になってた。成功するかなぁ。

「モモ、ふぁいと!」
「うん。がんばるよー。というわけで、【錬金スタート】!」

 リリの声援に答えてから、呪文を唱える。途端に始まる錬金術の演出を、固唾をのんで見守った。やっぱり緊張するぅ……。

「――あ、成功した!」

 錬金布の上に載る銀色のイヤリング。琥珀が控えめに光を反射してて綺麗。
 僕は成功率の低さに打ち勝ったぞー!

「すげぇじゃん」
「感想が軽くない?」

 喜びもそこそこに、ルトの言葉で気が抜けた。もっと褒めてくれていいんだよー? このすごさ、ルトは本当にわかってるのかな?

「……見た目、カッコいいぞ?」

 褒め言葉を絞り出してくれた。ルトなりに、オリジナルレシピを製作させたことに気が引けてるのかも。まぁ、見た目しか褒めてくれてないけど。

「一応褒めてくれるの、ルト優しい」
「モモって、ルトに激甘な時あるよね」

 それはクールな対応をされまくってるからだと思う。ちょっと優しくされるだけで嬉しくなっちゃうんだ。
 リリに苦笑されて、目を逸らした。

「とにかく、つけてみてー」
「あ、話逸らした」

 リリの声は聞こえませーん。
 ルトがイヤリングを装備したら、想像してた以上に似合ってた。銀髪の合間から見える琥珀がいいね。

「おー、さすがイケメンは、なにを身に着けてもカッコいいねー」
「おだてすぎじゃね? こんなん、たいていの人間に似合うようにデザインされてるもんだろ」
「そうかな?」

 ちょっと照れた感じでイヤリングをいじってるルトを眺める。
 装備は見た目に反映させない方法もあるけど、ちゃんと見えるようにしてるんだから、ルトも気に入ってくれてるんだと思う。

 僕はほとんどのアクセサリーを非表示にしてるけど、イヤリングは常時見えるようにしておこうかな。親友アピールです!

「気持ち悪いこと考えてるだろ」
「ひどい! そんなこと考えてないよ!」

 半眼で睨まれたけど、プンプン怒り返す。

「うーん、仲良し兄弟みたい」
「どこがだよ!? 人間とウサギだぞ!?」
「兄弟……それもいいかも」

 リリに文句を言ってるルトの声を聞き流して頷く。今日から僕とルトは兄弟を名乗ろう!

「ひとつもよくねえっ」
「そんなに拒否すること?」
「モモみてぇに、脳内お花畑仲間だと思われるの、すげぇ嫌だ!」
「脳内お花畑!?」

 ルトの僕評が想像以上にひどい気がするんだけど、その辺、リリはどう思いますか?
 視線でそう尋ねたら、リリは「うーん?」と首を傾げた。

「モモが普段なにも考えてなさそうなのは確かだけど――」
「リリの方がひどかった?!」

 がびーん、と項垂れた。古臭いリアクションとかのツッコミは、今いらないです。僕はとても落ち込んでるので。

「ほのぼのお気楽なのがモモの良さだから」
「全然フォローになってない気がするぞ?」

 まさかの、ルトがリリを窘めてくれた。ルトも否定してないんだけどね!
 僕、そんなになにも考えてなさそうかな? 楽しいことだけしてるのは事実だけど。ゲームなんだし、それで良くない?

 ぶつぶつと文句を言ってたら、リリが「そう!」とビシッと指を指してきた。

「モモはそれでいいの。ゲームだから、自分の好きを貫いて楽しんでるの、モモの魅力の一つだよ」
「……魅力」
「俺はその仲間扱いされたくねぇんだが?」
「ルトだって、バトル好きを貫いてるでしょ。同類同類」
「げぇ……」

 ルトと顔を見合わせる。リリはもう話が済んだみたいな顔をしてるし、ここで納得するしかなさそうだ。

「僕は脳内お花畑じゃないけど、よろしく同類」
「モモはさておき、俺はただバトルが好きなだけだが」

 最後まで同類拒否された。
 兄弟扱いは嫌、同類扱いも嫌って、ルトはイヤイヤ期かな?

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