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錬金術士だよ?

140.装備を相談しよう

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 本日もログイン。
 前回レナードさんに教えてもらったことをもとに、今日は錬金術で新アイテムを開発するぞー。

「――というわけで、まずはリリとルトの装備を作ろうと思うんだけど、どうする?」

 同じタイミングでログインしてきたリリとルトを捕まえて、木属性耐性装備について説明する。レナードさんにおすすめをいくつかピックアップしてもらったから、プレゼンしたよ。

 ふんふん、と頷きながら聞いていた二人は、悩ましげに腕を組んで考え込んだ。

「どれも良い装備で迷う。けど、木属性特化なんだよなぁ」
迷彩小竜カモフラミニドラゴンとの戦い直前に装備変更するのがいいのかな?」
「だよな。ボス戦用の装備って割り切って考えた方が良さそうだ」

 木属性特化の装備は使い所が難しいみたいだ。
 二人が今使っている装備を教えてもらうと、どれも体力・魔力・攻撃力・素早さ増強のステータスアップ系だった。各属性特化の装備を用意するほどの余裕はまだないんだって。

 アクセサリーしか装備できない僕とは結構違うんだね。アクセサリーは、属性に関係するものの方が効果が高いし、組み合わせて色んな属性に対応できるから。

「今後も木属性の強敵が出てくるかもしれないし、持ってて無駄になることはないんじゃない?」
「作ってくれるって言ってんだから、ありがたく受け取ることにする。幸い、今は少し懐に余裕があるし」

 ルトが軽く肩をすくめた。リリが微笑みながら、ルトに続いて頷く。

「モモがどんなアイテムを用意しても、使った素材の費用を割り勘できるように、資金集めしてたもんね。使い道がちょっと予想外なことになったけど」
「ボス戦への対応策って考えたら、全然違うってわけじゃねぇだろ」

 僕と別行動をしてた時も、ルトたちが積極的にバトルフィールドに出てたのは知ってたけど、そんな理由だったんだ? お金なんて気にすることないのに~。

「んー、別にお金もらうつもりはなかったんだけど」
「受け取れ。俺らが信者どもに睨まれる」
「なんで? っていうか、信者ってなに……?」
「お前のファンのことだよ。一応調べておいたけど、この世界じゃ、宗教団体の設立には領主の許可がいるらしいぞ」
「なんで調べてるの?」

 説明されるほどに理解が遠のいてる気がする。
 でも、僕のファンの人たちが信者って呼ばれちゃうのは、わからないでもない。なんたって、僕は『もふもふ教教祖兼アイドル』らしいから。

 複雑な気分で首を傾げてたら、リリが「それより――」と話を本題に戻した。もっと僕の心に寄り添ってくれても良いと思うんだけど。

「私は服とかの装備よりアクセサリーがいいかな。まだ一つしか付けられないけど、洋服とかは今作れる最上級のもので揃えてあるし」
「俺もそうだな。どれを変更するのも惜しい」

 二人が頷き合ってる。
 その姿を頭から足まで眺めて、僕も「そっかー」と納得した。

 トータルコーディネートされた装備は見た目だけじゃなくて、効果も特別に良いものらしい。生半可な装備には変えたくないのも当然だろうな。
 それなら、たった一枠しかなくても、アクセサリーで木属性に対応する方がいいってことだ。

 でも、そうなると、一つ問題がある。

「……琥珀足りないかも」
「なんでだ? 二つあるんだろ?」

 テーブルに載せていた琥珀をルトがつつく。リリも不思議そうな顔だ。

「琥珀一個で作れるアクセサリーはあるんだけど、複数の琥珀で宝石強化をしてから作った方が、効果が高くなるんだよー」

 普通の洋服系の装備だったら、強化琥珀は使えなくて、一人一個消費する計算だったんだけど。アクセサリーを作るなら、一つに複数の琥珀を使うことになってでも高い効果があるものがいいよねぇ。

「あー、なるほど。それなら足りないな」
「それじゃあ、私たちで取りに行ってこようか? モモは他のアイテムを作ってたらいいよ」
「え、いいの?」

 思いがけない提案だった。
 ぱちりと目を瞬かせると、リリがにこりと微笑んで頷く。

「どうせ今日はレベリングとか素材集めに行こうと思ってたしね」
「まぁ、話を聞いた感じじゃ、川の中にいるモンスターが琥珀をドロップするみたいだし、どう探すか考えないといけないけどな」
「だよねぇ……」

 困った感じで頬を手で押さえるリリと、なにかを期待するような目を向けてくるルトを交互に眺める。

「うーん……じゃあ、まずは疑似魚ルアニアムを捕まえるためのアイテムを作ろっか!」

 実はレナードさんに疑似魚ルアニアムの効率的な見つけ方を教えてもらってたんだ。

 琥珀探しに行く前に教えてくれたら良かったのに、言われたのは別れ際だった。「だってモモが聞いてこなかっただろ?」ってレナードさんが笑うから、ぷんぷん怒って文句を言ったのは二人には秘密。

 たぶんレナードさんは、役に立つ情報は自ら探る癖をつけろ、って教えてくれたんだと思うけど。師匠なりの厳しい優しさかな。

「へぇ、そんなアイテムあんのか」
「最初から期待してたでしょ?」
「モモならどうにかしてくれんだろうな、とは思ってた」

 悪びれない笑みを浮かべるルトを軽く睨んでみたけど、そんな顔されたら文句を言えないよ。というか、頼りにしてもらえるのは嬉しい。

「ふふん、当然!」

 僕が胸を張ったら、リリが「わーい、モモ頼りになるー」と褒めてくれた。さらに舞い上がっちゃう。必要そうなアイテム、全部作ってプレゼントするよ。

「代金は払うからな」
「……ここは、僕がプレゼントする流れだったよね?」
「そうはいくか。絶対金払う」

 本気の目をしてるルトは、なにがなんでも僕にお金を渡してきそう。断ったら実際の素材代を上回るお金を押し付けてくる気がする。
 なんでこんなにお金を払うことにこだわるんだろう?

「ルトはね、モモに甘えすぎるのが嫌なんだよ。対等な関係でいたいの」
「アイテムをプレゼントしたからって、対等な関係であることに変わりなくない?」

 こそこそ、と耳打ちしてきたリリに、僕も小声で尋ね返す。目の前にルトがいるんだから、内緒話になってない気がするけど。

「そうかなぁ? 行き過ぎると、もらうのが当然って思うようになっちゃうかもしれないでしょう?」

 ルトがそうなるとは思えない。でも、ものをもらったりあげたりする関係じゃなくて、友だちとしての関係を重視してくれてるって考えたら、なんだか嬉しいかも。

「……わかった。じゃあ、適度にお金はもらうようにするね」
「うん、そうして」
「最初っからそう言ってりゃいいんだよ」

 ふん、と鼻で笑って憎まれ口を叩くルトを見てから、リリと目を合わせる。
 リリが「ルトってツンツンしてても、性格が優しいのが滲み出てるから可愛いでしょ」と小声で言ってくるから、思わず笑っちゃった。

 ――うん、ルトもリリも可愛い。僕の大切な友だちだよ!

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