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錬金術士だよ?

116.独特なキャラだね?

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 闇マントを作るために必要な素材は【影花】というアイテムなんだって。
 名前通り、日陰に咲いてる花らしいけど……どこにあるかなぁ。

「できたらお金になりそうな素材も集めたいんですけど」
「そっか。始めたてだとお金ないもんね」
「マジでそれです。闇マント作るのに、影花を持って来いって装備屋に言われたんですけど、その他の材料代と作成費に五千リョウかかるらしくて」

 ヤナが大きくため息をつく。
 五千リョウかー。最初の頃だと、結構大金だよね。

「じゃあ、とりあえず日陰を探しながら、モンスター討伐していこうか」

 てくてくと歩きながら、ところどころにある木を目指す。この辺で日陰っていうと、それくらいしかないもん。

「ありがとうございます!」
「うん。パーティー組もうね。それとバトルスタイル、聞いといていい?」
「バトルスタイル……」

 パーティー申請が無事受理されたけど、ヤナはちょっと困った顔だ。なんで? 一緒にバトルするなら、どういう戦い方するか聞くのって当然だよね?

「僕は魔術士で、基本の五属性魔術を使うよ。あと、パーティー全体に効く回復スキルとか持ってる!」

 まずは僕から、と教えたら、ヤナが「おー、すごいですね!」と拍手した。

「俺も魔術士で……闇魔術を持ってます」
「闇魔術!? それ、最初のスキル選択になかった気がするけど」
「たぶんアンデッド系限定で取得可能になってたんだと思います。他にも事前に調べた中にはなかったスキルがたくさんありましたし」
「へぇ、特殊なんだねぇ」

 驚いたけど、説明されたら納得できる。
 僕が飛翔フライスキルを使えるのと同じ感じかな。

「――他にはどんなスキルを選んだの?」
「えっと……ネクロマンシーとか、霊魂スピリットファイアとか……」

 指を折りながら教えてもらったけど、どれもちょっと霊的な感じでアンデッド系のスキルだと思う。よっぽどそういうキャラクターが好きなんだね?

「ネクロマンシーって霊を使役する感じの技だよね?」
「そうです! このスキルを持ってると、霊を召喚して使役できるんですよ!」

 なんか興奮してる。でも僕はホラーが苦手だから全然共感できないんだよなぁ。

「骸骨に使役される霊かぁ……」
「お前も霊みたいなもんだろ、とか思ってます?」
「いやいや、そんな」

 ――正直そう思ってる。けど、ゲームでどう遊ぶかはそれぞれの自由だし。楽しんでるならいいんじゃない?

 目を逸らしちゃったけど、ヤナから大きなため息が聞こえて視線を戻す。

「俺、こういうキャラ好きだし、ガチャで当たって、すっごいラッキーって思ったんですけど」

 たぶん、その好きって気持ちで引き当てたんだと思うよ。ほとんどの人は即「チェンジで!」って言っちゃうでしょ。
 もし僕がスケルトンを引き当ててたらって考えたら……うぅ、怖い! 天兎アンジュラパで良かった!

「――この体、衝撃に弱すぎなんですよね……っ!」

 打ちひしがれたように頭も腕も垂らして悲しむヤナに、「あぁ、そうだよね……」としか返せない。
 僕の火の玉ファイアーボールを食らって、バラバラになっちゃうんだもん。普通のモンスターから攻撃されたらどうなっちゃうんだろう?

「もしかして、物理的な防御力、めちゃくちゃ低い?」
「ダメージは負いません。バラバラになるだけです。大体五分くらいで元通りになれますけど。その途中でまた衝撃を受けたらバラバラになります」
「……それ、戦えるの?」

 頭の中で、跳兎ジャンプラビに突撃されたヤナが何度もバラバラになるイメージが浮かんだ。うん、実際に起こってそう。

「使役した霊を盾にして、ひたすら攻撃を受けないようにしたらなんとか。でも、魔力が続かなくなったらアウトです」
「ひぇ……ハードモードだなぁ。でも、ダメージは負わない?」
「そうです。スケルトンは日光・聖なるもの・火と光属性でしかダメージを受けないんです。反対に言うと、その弱点で受けるダメージは基本やばいってことになっちゃうんですけど」

 あはは……と乾いた笑いをこぼしてるヤナをどう慰めればいいのか。
 聖なるものがなんなのかわからないけど、基本的にサウス街道ではダメージを負わないと考えても良さそうだ。でも、衝撃を受けてバラバラになったら、体を取り戻すまでに時間がかかる、と。

「うーん……弱点はともかく、衝撃が問題なら、それに耐性を持てるアイテムを使ってみるのはどうかな?」
「そんなアイテムあるんですか!?」
「うん。僕が今つけてるアイテムは、耐衝撃の効果があるんだよ」

 アンクレットを見せる。錬金術で合成する前から、このアクセサリーは耐衝撃効果があったんだよね。はじまりの街の武器屋さんで買ったやつ。

「へぇ……お高いですよね?」
「まぁ、それなりに? でも、闇マントほどじゃないよ」
「それなら購入を視野に入れときます」

 うんうん、と頷いてるヤナにアンクレットを差し出す。

「お試しで使ってみる? どのくらい効果があるか試した方がいいでしょ」
「いいんですか!? 貴重なアクセサリーなのに……ありがとうございます!」

 ヤナの足首にアンクレットが付けられる。なかなか似合ってるよ。
 そこでふと、ヤナの装備が少ないことに気づいた。魔術士用の杖と木の盾みたいのだけ。

「装備は使わないの? スケルトンなら服を着れるよね」
「初期装備がこれだけなんですよー。そしてお金貯めてるところなんで、他の装備は買えません」
「あー、なるほど」

 やむにやまれない事情ってことか。それは早くお金貯めなきゃね。

 ――なんて会話をしながら、さくさくとモンスターを倒していく。ほぼ僕しか戦ってないけど、ヤナにもドロップアイテムや経験値はいってるはず。

「なんか完全に俺寄生状態ですね?」
「まぁ、いいんじゃない? 初心者特典だよ」
「でも、申し訳ないので、俺も戦います! 『闇より這い出し者――ネクロマンシー』!」

 止める前にヤナが詠唱してた。途中なんて言ってるかわからなかったんだけど、ちょっと厨二っぽい詠唱してたような? 魔術の詠唱とどっちがいいのか悩ましい感じ。

 地面から湧き出るように黒色のモヤが現れる。それは日光に存在を消されるようにしながらモンスターへ向かい、微ダメージを与えた。

「こわ、って思ったら、弱っ!?」

 思わずツッコミを入れちゃう。
 ヤナがしょんぼりと「まだ闇マント持ってないから、霊も日光に弱いんですよ。そっちには日光の影響を免除する特典期間がないんですよ……」と呟いた。

「それは、大変だね……」

 もはやそう言うしかない。迫ってこようとしたモンスターを指し、ヤナに「アクセサリーの効果試してみる?」と聞く。
 ヤナは力強く頷くと、木の盾を構えて「ヤー!」とモンスターに突進した。そして見事なくらい跳ね飛ばされて宙を舞う。

「うおっ!? バラバラになってない!」
「……そうだね」

 すごく喜んでるみたいだけど、骸骨が空を飛んでるのは結構シュールな光景だ。
 地面に落ちた衝撃でも体が保たれてるようで、耐衝撃効果の凄さが僕にも目に見えてわかったのは良かったけど。

「俺、絶対に耐衝撃効果のある装備を手に入れます!」

 やる気に満ちた宣言をするヤナを見て、なんだか憐れみを感じちゃう。作れそうだったら僕の錬金術で用意してあげようかな。

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