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商人への道?
79.僕たち友だちでしょ?
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乳製品直売所は、めちゃくちゃいいところです。
「ふあ~、ヨーグルト、チーズケーキ、ソフトクリーム……美味しそう!」
「全部うまいに決まってるだろ」
次々に目移りしちゃう僕に、スパルくんが胸を張る。
レジのとこに立ってるおねえさんが、微笑ましげに「あらあら」と声を漏らしてた。青乳牛を「サー」って呼んでる人かな?
「こんにちはー。スパルくんのお姉さんですか?」
「まあ! 嬉しいことを言ってくれるうさちゃんね。でも、私は姉じゃなくて、母親のキャリーよ」
「え!?」
うさちゃん、と呼ばれたことよりも、予想外の親子関係に驚いちゃった。どう考えても、そんな年齢差があるように見えない。
「……ケッ、ただの若作り――」
「ス・パ・ル?」
「なんでもないです」
笑顔の圧力を目の当たりにした。
目を逸らしながら呟くスパルくんの様子を眺めながら、ちょっぴり背筋を正す。キャリーさんに怒られるのは怖いよ。
「うさちゃんはスパルの友だちなのかしら? ソフトクリーム食べる?」
「食べる!」
「友だちじゃない」
「スパルの友だちは可愛いわねぇ」
キャリーさんが微笑みながら、ソフトクリームを作ってくれた。スパルくんの訂正を聞き流してる。
「僕たち、友だちじゃないの?」
うるっ、と目を潤ませながら見上げたら、スパルくんが「うっ……」と呻いて顔を背けた。効果は抜群かな?
「…………あー、あー……まぁ、そんなこともあるかもしれない!」
ピシッとなにかが投げられる。フレンドカードだった。……スパルくんってツンデレ?
増えたフレンド欄を見て、思わずにこにこと笑っちゃう。すぐさま「さっきの嘘泣きか!?」って言われた。
「友だち全否定されるのは悲しいもん」
「……悪かったよ」
嘘泣きと肯定する代わりの言葉に、スパルくんがバツの悪そうな顔で呟く。スパルくん、良い人すぎるー。騙されないように気をつけてね?
「はい、どうぞ。これでスパルを許してあげて」
「友だちになれたから、許すもなにもないよー。でも、ありがたくいただきます!」
キャリーさんからソフトクリームを受け取る。
牧場のソフトクリームって、格別の美味しさだよね。一口舐めた瞬間に、牛乳の甘さとコクを感じて頬が緩んじゃう。
「うまうま……」
「幸せそうに食ってるな」
スパルくんが僕を眺めて微笑んでる。絶対もふもふに弱いタイプだよね。
「スパルは昔からほんとモンスターが好きね。人の友だちも増やしてほしいんだけど」
「ほっとけ」
キャリーさんからプイッと顔を背けたスパルくんが、いくつかの商品を手に取る。
「――モモ、これおすすめ」
牛乳にヨーグルトに、チーズに……どんどんとカゴに放り込まれる商品にちょっぴり目を丸くしちゃった。
「……牛乳はもっとたくさん! チーズも色んな種類欲しいな!」
「いや、止めないのかよ」
スパルくんがピタッと手を止めた。まじまじと見下されたけど、そんな顔をされる理由がわからない。そもそも、食材をゲットしに来たんだよ? 牛乳とかはいろんな料理に使えるし、一度にたくさん買っておいた方が楽じゃん。
「僕、明日から屋台をするんだ。料理も売ろうかなーって思ってるの」
「そういうことか。それなら、レシピもやろうか? アレンジして、自分なりの料理にするといい」
納得した感じで、スパルくんが本を渡してくる。【乳製品を使ったレシピ本】っていう題名だった。
〈【生産家のレシピ本】を入手しました。【料理レシピ登録】システムが使用可能になります〉
なぁに、それ?
ヘルプを確認。――【料理レシピ登録】は、一度作った料理の手順を登録すると、料理名を唱えただけで自動的に料理を製作できるっていうシステムだった。めっちゃ便利だね!
でも、自分で手順どおりに作るより品質が下がりやすいのがデメリット。
「ありがとー! これで美味しい料理を作って、売ってみるよ!」
商品を作るのには、十分だよね。たくさんの商品を手間ひまかけて作るのって大変だし。
「おう。……あれだ。味見が必要なら、協力してやらんでもないぞ?」
「ん? そうだね。お願いしようかな!」
やっぱりツンデレだー!
目を逸らしてるスパルくんに、ニヤニヤしちゃう。可愛いねー。
「ふふっ、良いお友だちができて良かったわね」
「……うるせ」
「スパルはカミラとは違う意味で友だちができにくかったから、心配だったのよ」
「カミラ?」
聞き覚えのある名前が聞こえて、キャリーさんの顔をじっと見つめる。
カミラって、あのカミラ? 僕のバトルチュートリアルに付き合ってくれて、エリアボス討伐にも協力してくれた冒険者?
「スパルの姉はカミラっていうのよ。あんまり表情を変えなくて、無愛想だから、友だちが少ないのよねぇ」
困ったわぁ、と呟くキャリーさんの言葉から連想されるのは、やっぱりあのカミラだった。無愛想っていうか、言葉と表情の変化が最低限っていうだけだと思うけど。良い人だよ。
「……モモは姉ちゃん知ってんのか?」
「うん。そのカミラが、冒険者をしてるなら。黒髪の美人さん!」
「合ってる。……そっか、知り合いなのか」
スパルくんが頷いてる。意外なところで意外な関係がわかって、僕も驚いちゃったよ。
「まあ! うさちゃんはカミラともお友だちなのね!」
キャリーさんの目がキラキラと輝いているように見えた。そんなに喜ぶくらい、子ども二人の交友関係の狭さに悩んでいたんだろう。
でも、カミラとはフレンド登録できてないんだよなぁ。ここで友だちだって名乗って、後でカミラに嫌がられないかな?
返事を考えてたら、カランと音がして扉が開いた。
新しいお客さんかな?
そんなことを考えながら視線を向けた先にカミラの姿があって、目を丸くしちゃう。
「ただいま……って、モモ?」
「こんにちはー、そしてお久しぶり!」
エリアボス討伐以来だね。全然会わないから、第二の街にいないのかと思ってた。
「久しぶり。……牛乳好き?」
「うん、好きだよ。料理にも使うから、ここに買いに来たんだよー」
「見る目がある」
淡々と話しながら頷くカミラに、思わず笑っちゃう。急に「牛乳好き?」って聞いてくるの、面白いよ。
「やっぱりあのカミラにお友だち……! うさちゃん、ほんとありがとう!」
「いや、その……そんな喜ばれることじゃ……」
「友だち……お母さんが喜ぶなら、それでいい」
カミラの言葉、聞き逃さないぞ!
「僕たち、友だち!」
「……うん」
「フレンドカード!」
両手を伸ばす。カミラに無言で見下された。
「モモまで言葉数が少なくなってる。姉ちゃんが乗り移った……?」
「バカ弟」
「姉ちゃん、罵りまで言葉数が少なくて、幼稚になってるぞ? ――イテッ!?」
カミラが無言でスパルくんを叩いてた。仲の良い姉弟だなー。
「……モモ」
ポイ、とフレンドカードを渡される。そこに書かれてるのは、確かに『カミラ』の文字。
「わーい! やっと友だちになれたー!」
こういう風にフレンド登録をすることになるとは想像してなかったけど、すっごく嬉しいよ!
******
◯NEWシステム
【料理レシピ登録】
一度作った料理の手順を登録すると、料理名を唱えただけで自動的に料理が完成する。自力で手順どおりに作るより品質が下がりやすい。
◯NEWアイテム
【乳製品を使ったレシピ本】レア度☆☆
生産家のレシピ。このレシピに記載されている料理を作ると、品質が向上する。このレシピをアレンジした料理が成功しやすくなる。
******
「ふあ~、ヨーグルト、チーズケーキ、ソフトクリーム……美味しそう!」
「全部うまいに決まってるだろ」
次々に目移りしちゃう僕に、スパルくんが胸を張る。
レジのとこに立ってるおねえさんが、微笑ましげに「あらあら」と声を漏らしてた。青乳牛を「サー」って呼んでる人かな?
「こんにちはー。スパルくんのお姉さんですか?」
「まあ! 嬉しいことを言ってくれるうさちゃんね。でも、私は姉じゃなくて、母親のキャリーよ」
「え!?」
うさちゃん、と呼ばれたことよりも、予想外の親子関係に驚いちゃった。どう考えても、そんな年齢差があるように見えない。
「……ケッ、ただの若作り――」
「ス・パ・ル?」
「なんでもないです」
笑顔の圧力を目の当たりにした。
目を逸らしながら呟くスパルくんの様子を眺めながら、ちょっぴり背筋を正す。キャリーさんに怒られるのは怖いよ。
「うさちゃんはスパルの友だちなのかしら? ソフトクリーム食べる?」
「食べる!」
「友だちじゃない」
「スパルの友だちは可愛いわねぇ」
キャリーさんが微笑みながら、ソフトクリームを作ってくれた。スパルくんの訂正を聞き流してる。
「僕たち、友だちじゃないの?」
うるっ、と目を潤ませながら見上げたら、スパルくんが「うっ……」と呻いて顔を背けた。効果は抜群かな?
「…………あー、あー……まぁ、そんなこともあるかもしれない!」
ピシッとなにかが投げられる。フレンドカードだった。……スパルくんってツンデレ?
増えたフレンド欄を見て、思わずにこにこと笑っちゃう。すぐさま「さっきの嘘泣きか!?」って言われた。
「友だち全否定されるのは悲しいもん」
「……悪かったよ」
嘘泣きと肯定する代わりの言葉に、スパルくんがバツの悪そうな顔で呟く。スパルくん、良い人すぎるー。騙されないように気をつけてね?
「はい、どうぞ。これでスパルを許してあげて」
「友だちになれたから、許すもなにもないよー。でも、ありがたくいただきます!」
キャリーさんからソフトクリームを受け取る。
牧場のソフトクリームって、格別の美味しさだよね。一口舐めた瞬間に、牛乳の甘さとコクを感じて頬が緩んじゃう。
「うまうま……」
「幸せそうに食ってるな」
スパルくんが僕を眺めて微笑んでる。絶対もふもふに弱いタイプだよね。
「スパルは昔からほんとモンスターが好きね。人の友だちも増やしてほしいんだけど」
「ほっとけ」
キャリーさんからプイッと顔を背けたスパルくんが、いくつかの商品を手に取る。
「――モモ、これおすすめ」
牛乳にヨーグルトに、チーズに……どんどんとカゴに放り込まれる商品にちょっぴり目を丸くしちゃった。
「……牛乳はもっとたくさん! チーズも色んな種類欲しいな!」
「いや、止めないのかよ」
スパルくんがピタッと手を止めた。まじまじと見下されたけど、そんな顔をされる理由がわからない。そもそも、食材をゲットしに来たんだよ? 牛乳とかはいろんな料理に使えるし、一度にたくさん買っておいた方が楽じゃん。
「僕、明日から屋台をするんだ。料理も売ろうかなーって思ってるの」
「そういうことか。それなら、レシピもやろうか? アレンジして、自分なりの料理にするといい」
納得した感じで、スパルくんが本を渡してくる。【乳製品を使ったレシピ本】っていう題名だった。
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「……うるせ」
「スパルはカミラとは違う意味で友だちができにくかったから、心配だったのよ」
「カミラ?」
聞き覚えのある名前が聞こえて、キャリーさんの顔をじっと見つめる。
カミラって、あのカミラ? 僕のバトルチュートリアルに付き合ってくれて、エリアボス討伐にも協力してくれた冒険者?
「スパルの姉はカミラっていうのよ。あんまり表情を変えなくて、無愛想だから、友だちが少ないのよねぇ」
困ったわぁ、と呟くキャリーさんの言葉から連想されるのは、やっぱりあのカミラだった。無愛想っていうか、言葉と表情の変化が最低限っていうだけだと思うけど。良い人だよ。
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「見る目がある」
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「やっぱりあのカミラにお友だち……! うさちゃん、ほんとありがとう!」
「いや、その……そんな喜ばれることじゃ……」
「友だち……お母さんが喜ぶなら、それでいい」
カミラの言葉、聞き逃さないぞ!
「僕たち、友だち!」
「……うん」
「フレンドカード!」
両手を伸ばす。カミラに無言で見下された。
「モモまで言葉数が少なくなってる。姉ちゃんが乗り移った……?」
「バカ弟」
「姉ちゃん、罵りまで言葉数が少なくて、幼稚になってるぞ? ――イテッ!?」
カミラが無言でスパルくんを叩いてた。仲の良い姉弟だなー。
「……モモ」
ポイ、とフレンドカードを渡される。そこに書かれてるのは、確かに『カミラ』の文字。
「わーい! やっと友だちになれたー!」
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◯NEWシステム
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一度作った料理の手順を登録すると、料理名を唱えただけで自動的に料理が完成する。自力で手順どおりに作るより品質が下がりやすい。
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【乳製品を使ったレシピ本】レア度☆☆
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