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はじまりの街
25.お魚天国万歳
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西の港は一応バトルフィールドなので、テイマーじゃない僕でも召喚できるのだ。スキルがあるから、フレンド欄からじゃなくても呼べる。
「【召喚】スラリン!」
緑の光の後に、スラリンが現れる。一瞬『ここどこ?』って感じになったの、おもしろい。
「初召喚してみましたー。釣りしてる間の暇の相手をして」
スラリンが『りょ!』という感じで体を揺らす。なんか見てて癒やされるね。五分しか呼べないのが残念。再召喚に一時間かかるのもなぁ。
「なんじゃ、お前さん、モンスターの使役ができるのか。旅人にしては珍しいのぉ。だが、モンスターがモンスターを使役……?」
そこは突っ込まないお約束です。
というか、このおじいさん、テイマーの存在を知ってたっぽい。この世界だと一般的な職業なのかな? その割には、街で見かけたことないけど。
「テイマーの知り合いがいるの?」
「わしの息子がそうじゃ」
なんと。まさかこんな近場に関係者がいるとは。
おじいさん曰く、テイマーはこの世界でも珍しいらしい。それでも、息子さん——モンハさんという人は、モンスターと仲良くなりたいと言って家を飛び出して修行に明け暮れ、長いときをかけて国一番のテイマーになったそう。
「……国一番ってすごくない!?」
「すごいじゃろ。執念じゃ。あの子は本当にモンスターが好きだったからの」
「ちなみになんのモンスターが一番好きだったの?」
「王鮪じゃ」
軽く聞いてみたら、思いがけない返事があった。そういえば、魚もモンスターでしたね?
「……それ、食べないの?」
「わしは釣ってたし食ってたな。あの子は食わんかったし、それで大喧嘩して家を出ていってしもうた……」
おじいさんに哀愁が漂ってる。モンハさん、家出したのか。その気持ちはわからないでもない。
だって、僕もスライムキングやスラリンと仲良くなってから、スライムと戦う気はなくなっちゃったもん。愛着湧くよね。
スラリンと見つめ合う。『僕のこと食べるの?』って感じに聞かれたから「食べないよー」と答える。そもそもスライムは食べられません。
「釣ったら即食料アイテムになるんだよね? 釣った時点で、モンハさん的にはアウトだった?」
「そうなんだろうなぁ。他のモンスターならあの子自身も食ってたが、王鮪は駄目だったんじゃろ……」
悲しみは深そう。国一番のテイマーになった息子さんは誇りだけど、だからこそ仲良くなれる道がみつけられないんだね。
そこまで考えてふと気づく。
おじいさんは腕の良い釣り人っぽいのに、一日中海を眺めるだけで釣りをしてないのって、それが理由では? 体力の問題じゃなくて、息子さんと仲違いの原因になった釣りができなくなったんじゃないかな。
握ってる釣り竿を見る。
釣りをするのって楽しい。おじいさんもきっとずっとそう思ってたはず。……それなのに、楽しめなくなっちゃうなんて、可哀想だなぁ。
「……モンハさんはどこに住んでるの?」
「第三の街【キーリ】じゃ。そこで、テイマーの指導をしとる」
「そうなんだ。じゃあ、僕、いつか会ったら、おじいさんが会いたがってたよって教えるね」
おじいさんは目を大きく見開いた。その目に滲む感情は複雑で読み取れない。
「……ありがとう。息子は気にしないと思うがな」
「そうかなぁ? 案外、モンハさんも気にしてるかもよ」
親と仲違いしたままなんて、すっきりしないんじゃないかな。
「そうだろうか……。それより、お前さんも、テイマーになれる素質があるんなら、息子に教えてもらうといい。わしが紹介しても意味がないじゃろうが、一応、住んでいるところは教えてやろう。わしの妻と息子は、死に別れるまで連絡をとっていたようで、住所を知ってるんだ」
奥さんが亡くなってることまで知っちゃった。ますます、一日中海を眺めてる状態に納得しちゃったよ。
複雑な気分で、おじいさんからメモを受け取る。
〈【テイマー・モンハ】の住所を入手しました。ミッション『テイマーへの道』が開始します〉
まさかの転職を勧められる……? いや、転職するかどうかは自由なんだろうけど。
マップ上で未知の空白状態になっているところに、赤い点がついてる。そこがモンハさんの家があるところらしい。第三の街はまだ遠いなぁ。
いろいろと確認してたら、軽い衝撃が襲ってきた。
「うわっ、スラリン、なに!?」
飛びついてきたスラリンが、必死に海の方を指してる。次の瞬間、勢いよく釣り糸が引かれた。
「——ふあっ、さっきより重いー!」
砂浜に線を残して引きずられる。飛翔を使わなくては……!
「きゅぴっ」
「へっ、スラリンも一緒に引いてくれるの?」
飛ぼうとしたところでスラリンに掴まれる。そして、海とは反対の方に引っ張ってもらった。力持ち!
「こりゃ、すごい引きだなぁ。次はなにが釣れるか……」
のんびりとした口調でワクワク待ってるおじいさんも、手伝ってくれていいんだよ?
ちょっぴり不満に思いながらも、スラリンと協力して引く。絶対釣り上げてみせるんだ!
一進一退がしばらく続いた。これはスラリンの召喚時間が限界になる方が先か……?
そう考えていたところで、スラリンが動いた。
僕の傍を離れたと思ったら海に近づいてる。
飛翔を使って飛んで釣り竿を引っ張りながら、その様子を観察。なにをするつもりかな?
「うおっ!?」
スラリンが海に触れた瞬間に、勢いよくその体が膨れ上がっていった。海水を吸い込んでるんだ。スライムってこんなこともできるんだね。
ところで……モンスターも吸い込んでない?
なんとなく、スラリンの透明感のある体の中を泳いでるものがいるような。
ちょっとずつ釣り竿が軽くなっていく。
スラリンが海水を吸い込む勢いで、海に陸地側への流れができてるんだ。たぶん針に掛かってるモンスターも、流れに巻き込まれてるんじゃないかな。
スラリンがここまでがんばってるんだから、僕も気合い入れなきゃね!
地面を蹴って、再び飛翔を発動。引くぞー!
「とりゃあ!」
しばらく引いてたら、唐突に抵抗がなくなった。……僕たちの勝利?
振り返ると、銀色の魚系モンスターがキラリと光を反射しながら青い空を飛んでるのが見えた。かなり大きい。僕より大きいかも……。
ドシン、と衝撃を伴って砂浜に落ちたあとも、モンスターは海に帰ろうとするように暴れてる。これ、近づいたらダメージをくらいそう。
——————
【暴鱸】
海で釣れるモンスター。体力があり、海の中で暴れ回る。噛みつき攻撃で小さなモンスターは一撃必殺できる。得意属性【火】苦手属性【風】
——————
スズキ、通称シーバスかー。大きいのも当然だよね。食べごたえあって美味しそう。
「きゅぴ……」
「スラリン、お疲れさま~。助かったよ、ありがとう」
膨れ上がったスラリンが、噴水のように海水を吐き出した。おお、虹ができてる!
……その虹を背景に、時々海藻やモンスターが飛び出てくるのが、なんとも言えずシュール。
砂浜にはたくさんの海藻やモンスターが落ちてきた。さすがに、スラリンが吸い込めたモンスターは、比較的小さいのだけみたいだ。
愛鱚っていうのと、大沙魚っていうのは美味しそう。
ようやく海水をすべて排出し終えて、最初通りの大きさに戻ったスラリンが近づいてくる。
「きゅぴ」
いつの間にか鳴くようになってるな。どこから声が出てるのかな?
スラリンはじぃっと暴鱸を見てる。きっと食べたいんだろう。
バトルフィールドでこれを食べるときは、スラリンを召喚しよう。一緒に頑張って釣ったんだし。
美味しいものは仲間と分け合ったらさらに美味しくなるはず!
「——あ」
召喚の限界時間が来たのか、スラリンが緑色の光を放って消えていった。うう、寂しいよー。また、再召喚可能になったら呼ぶからね。
「ほれ、傷む前に収納せい」
「感傷的になる暇もない……」
おじいさんに促されて、バケツに暴鱸を放り込んでからアイテムボックスにしまう。さすがに砂浜だと長生きできないのか、暴れ方が弱くなってて良かった。
それにしても、この巨大なものがあっさりとバケツに収まる光景は不思議な感じがする。
愛鱚と大沙魚は数が多いから直接アイテムボックスに収納だ。
……それぞれ三十匹超えてるんだけど? 一匹ずつ釣るのがちょっと馬鹿らしくなるくらい大量!
愛鱚はそのまんまキスっぽい感じらしい。大沙魚もちょっと大きめなハゼそのもの。
天ぷらにしたら美味しそうだなー!
「まだ餌はあるようじゃな」
「うん。もっと釣るよー」
「あっちの方に投げてみるといいぞ」
これまでより左手側の方を指し示された。なるほど、最良の釣りポイントって、少しずつ移動してるんですね? おじいさんに釣りを教えてもらえてラッキーだったな。
早速投げてしばらく待つ。次は何が釣れるかな。
◇
結局、今日ログインできる時間いっぱい釣りを楽しんじゃいました。だって、リリとルトがログインしてこないんだもん。釣り楽しいし。
一時間経って、再召喚したスラリンにも手伝ってもらったよ! スラリンのはもはや、地引き網漁みたいな感覚がある。
そして、本日の成果はこちら!
【金鰺】×2、【真鰺】×13、【暴鱸】×3、【愛鱚】×87、【昆布鯖】×14、【大沙魚】×76、【痺海月】×99、【粘海藻】×99
ふはは、大漁だ!
昆布鯖は……昆布締めされた感じの味がするって鑑定結果だった。すごく生態が気になる。生きた状態で昆布風味に味付けされてるとか不思議じゃない?
そして、痺海月と粘海藻が大量です。スラリンがたくさん吸い上げてたからね。
痺海月が落ちてる砂浜は危険地帯でした……。
落ちてるものを収納しようと歩いた瞬間に触っちゃってたみたいで、ビリッときて、すぐに麻痺状態。持続時間は短かったけど。
何度も触っちゃってたら、いつの間にか麻痺耐性をゲットしてたよ。ラッキー……?
「糸が切れちゃったなー」
「次釣るときは自分で買ってくるんだぞ。もう釣りポイントもわかるようになったじゃろ? お前さんはもう、釣り人初級者じゃ!」
釣り糸はなくしちゃったけど、釣り人ランクが上がったのです。あと、釣りスキルもレベル3になって、もう独り立ちできるみたい。
モンスターが釣れるまでの待ち時間をおじいさんと話して過ごすの楽しかったんだけどなぁ。
「うん、おじいさんが教えてくれたおかげだよ。ありがとう。また一緒に釣りしようね!」
システム的に無理なのかもしれないけど、誘うのは自由だよね。
さて、今日はいっぱい釣りを楽しんだので、次のログインではお料理してみようかな。
******
◯継続中ミッション
『テイマーへの道』
第三の街にいる国一番のテイマー・モンハの住所録を手に入れると開始する。テイマーになると完遂。
◯NEWモンスター
【暴鱸】
海で釣れるモンスター。体力があり、海の中で暴れ回る。噛みつき攻撃で小さなモンスターは一撃必殺できる。得意属性【火】苦手属性【風】
【愛鱚】
海で釣れるモンスター。攻撃力は低いが、素早い動きで逃げ回る。得意属性【火】苦手属性【風】
【昆布鯖】
海で釣れるモンスター。餌に食いつく速度が早い。海の中では海藻を操って絞め技を繰り出してくる。得意属性【火】苦手属性【風】
【大沙魚】
海で釣れるモンスター。小さく弱い。釣り初心者でも楽に釣れる。海の中では隠れているので、見つけるのは困難。得意属性【火】苦手属性【風】
【痺海月】
砂浜近くでよく釣れるモンスター。触ると麻痺(小)攻撃を受ける。得意属性【火】苦手属性【風】
◯NEWアイテム
【粘海藻】レア度☆
海で採れる。ネバネバした海藻。料理や錬金術の素材になる。
******
「【召喚】スラリン!」
緑の光の後に、スラリンが現れる。一瞬『ここどこ?』って感じになったの、おもしろい。
「初召喚してみましたー。釣りしてる間の暇の相手をして」
スラリンが『りょ!』という感じで体を揺らす。なんか見てて癒やされるね。五分しか呼べないのが残念。再召喚に一時間かかるのもなぁ。
「なんじゃ、お前さん、モンスターの使役ができるのか。旅人にしては珍しいのぉ。だが、モンスターがモンスターを使役……?」
そこは突っ込まないお約束です。
というか、このおじいさん、テイマーの存在を知ってたっぽい。この世界だと一般的な職業なのかな? その割には、街で見かけたことないけど。
「テイマーの知り合いがいるの?」
「わしの息子がそうじゃ」
なんと。まさかこんな近場に関係者がいるとは。
おじいさん曰く、テイマーはこの世界でも珍しいらしい。それでも、息子さん——モンハさんという人は、モンスターと仲良くなりたいと言って家を飛び出して修行に明け暮れ、長いときをかけて国一番のテイマーになったそう。
「……国一番ってすごくない!?」
「すごいじゃろ。執念じゃ。あの子は本当にモンスターが好きだったからの」
「ちなみになんのモンスターが一番好きだったの?」
「王鮪じゃ」
軽く聞いてみたら、思いがけない返事があった。そういえば、魚もモンスターでしたね?
「……それ、食べないの?」
「わしは釣ってたし食ってたな。あの子は食わんかったし、それで大喧嘩して家を出ていってしもうた……」
おじいさんに哀愁が漂ってる。モンハさん、家出したのか。その気持ちはわからないでもない。
だって、僕もスライムキングやスラリンと仲良くなってから、スライムと戦う気はなくなっちゃったもん。愛着湧くよね。
スラリンと見つめ合う。『僕のこと食べるの?』って感じに聞かれたから「食べないよー」と答える。そもそもスライムは食べられません。
「釣ったら即食料アイテムになるんだよね? 釣った時点で、モンハさん的にはアウトだった?」
「そうなんだろうなぁ。他のモンスターならあの子自身も食ってたが、王鮪は駄目だったんじゃろ……」
悲しみは深そう。国一番のテイマーになった息子さんは誇りだけど、だからこそ仲良くなれる道がみつけられないんだね。
そこまで考えてふと気づく。
おじいさんは腕の良い釣り人っぽいのに、一日中海を眺めるだけで釣りをしてないのって、それが理由では? 体力の問題じゃなくて、息子さんと仲違いの原因になった釣りができなくなったんじゃないかな。
握ってる釣り竿を見る。
釣りをするのって楽しい。おじいさんもきっとずっとそう思ってたはず。……それなのに、楽しめなくなっちゃうなんて、可哀想だなぁ。
「……モンハさんはどこに住んでるの?」
「第三の街【キーリ】じゃ。そこで、テイマーの指導をしとる」
「そうなんだ。じゃあ、僕、いつか会ったら、おじいさんが会いたがってたよって教えるね」
おじいさんは目を大きく見開いた。その目に滲む感情は複雑で読み取れない。
「……ありがとう。息子は気にしないと思うがな」
「そうかなぁ? 案外、モンハさんも気にしてるかもよ」
親と仲違いしたままなんて、すっきりしないんじゃないかな。
「そうだろうか……。それより、お前さんも、テイマーになれる素質があるんなら、息子に教えてもらうといい。わしが紹介しても意味がないじゃろうが、一応、住んでいるところは教えてやろう。わしの妻と息子は、死に別れるまで連絡をとっていたようで、住所を知ってるんだ」
奥さんが亡くなってることまで知っちゃった。ますます、一日中海を眺めてる状態に納得しちゃったよ。
複雑な気分で、おじいさんからメモを受け取る。
〈【テイマー・モンハ】の住所を入手しました。ミッション『テイマーへの道』が開始します〉
まさかの転職を勧められる……? いや、転職するかどうかは自由なんだろうけど。
マップ上で未知の空白状態になっているところに、赤い点がついてる。そこがモンハさんの家があるところらしい。第三の街はまだ遠いなぁ。
いろいろと確認してたら、軽い衝撃が襲ってきた。
「うわっ、スラリン、なに!?」
飛びついてきたスラリンが、必死に海の方を指してる。次の瞬間、勢いよく釣り糸が引かれた。
「——ふあっ、さっきより重いー!」
砂浜に線を残して引きずられる。飛翔を使わなくては……!
「きゅぴっ」
「へっ、スラリンも一緒に引いてくれるの?」
飛ぼうとしたところでスラリンに掴まれる。そして、海とは反対の方に引っ張ってもらった。力持ち!
「こりゃ、すごい引きだなぁ。次はなにが釣れるか……」
のんびりとした口調でワクワク待ってるおじいさんも、手伝ってくれていいんだよ?
ちょっぴり不満に思いながらも、スラリンと協力して引く。絶対釣り上げてみせるんだ!
一進一退がしばらく続いた。これはスラリンの召喚時間が限界になる方が先か……?
そう考えていたところで、スラリンが動いた。
僕の傍を離れたと思ったら海に近づいてる。
飛翔を使って飛んで釣り竿を引っ張りながら、その様子を観察。なにをするつもりかな?
「うおっ!?」
スラリンが海に触れた瞬間に、勢いよくその体が膨れ上がっていった。海水を吸い込んでるんだ。スライムってこんなこともできるんだね。
ところで……モンスターも吸い込んでない?
なんとなく、スラリンの透明感のある体の中を泳いでるものがいるような。
ちょっとずつ釣り竿が軽くなっていく。
スラリンが海水を吸い込む勢いで、海に陸地側への流れができてるんだ。たぶん針に掛かってるモンスターも、流れに巻き込まれてるんじゃないかな。
スラリンがここまでがんばってるんだから、僕も気合い入れなきゃね!
地面を蹴って、再び飛翔を発動。引くぞー!
「とりゃあ!」
しばらく引いてたら、唐突に抵抗がなくなった。……僕たちの勝利?
振り返ると、銀色の魚系モンスターがキラリと光を反射しながら青い空を飛んでるのが見えた。かなり大きい。僕より大きいかも……。
ドシン、と衝撃を伴って砂浜に落ちたあとも、モンスターは海に帰ろうとするように暴れてる。これ、近づいたらダメージをくらいそう。
——————
【暴鱸】
海で釣れるモンスター。体力があり、海の中で暴れ回る。噛みつき攻撃で小さなモンスターは一撃必殺できる。得意属性【火】苦手属性【風】
——————
スズキ、通称シーバスかー。大きいのも当然だよね。食べごたえあって美味しそう。
「きゅぴ……」
「スラリン、お疲れさま~。助かったよ、ありがとう」
膨れ上がったスラリンが、噴水のように海水を吐き出した。おお、虹ができてる!
……その虹を背景に、時々海藻やモンスターが飛び出てくるのが、なんとも言えずシュール。
砂浜にはたくさんの海藻やモンスターが落ちてきた。さすがに、スラリンが吸い込めたモンスターは、比較的小さいのだけみたいだ。
愛鱚っていうのと、大沙魚っていうのは美味しそう。
ようやく海水をすべて排出し終えて、最初通りの大きさに戻ったスラリンが近づいてくる。
「きゅぴ」
いつの間にか鳴くようになってるな。どこから声が出てるのかな?
スラリンはじぃっと暴鱸を見てる。きっと食べたいんだろう。
バトルフィールドでこれを食べるときは、スラリンを召喚しよう。一緒に頑張って釣ったんだし。
美味しいものは仲間と分け合ったらさらに美味しくなるはず!
「——あ」
召喚の限界時間が来たのか、スラリンが緑色の光を放って消えていった。うう、寂しいよー。また、再召喚可能になったら呼ぶからね。
「ほれ、傷む前に収納せい」
「感傷的になる暇もない……」
おじいさんに促されて、バケツに暴鱸を放り込んでからアイテムボックスにしまう。さすがに砂浜だと長生きできないのか、暴れ方が弱くなってて良かった。
それにしても、この巨大なものがあっさりとバケツに収まる光景は不思議な感じがする。
愛鱚と大沙魚は数が多いから直接アイテムボックスに収納だ。
……それぞれ三十匹超えてるんだけど? 一匹ずつ釣るのがちょっと馬鹿らしくなるくらい大量!
愛鱚はそのまんまキスっぽい感じらしい。大沙魚もちょっと大きめなハゼそのもの。
天ぷらにしたら美味しそうだなー!
「まだ餌はあるようじゃな」
「うん。もっと釣るよー」
「あっちの方に投げてみるといいぞ」
これまでより左手側の方を指し示された。なるほど、最良の釣りポイントって、少しずつ移動してるんですね? おじいさんに釣りを教えてもらえてラッキーだったな。
早速投げてしばらく待つ。次は何が釣れるかな。
◇
結局、今日ログインできる時間いっぱい釣りを楽しんじゃいました。だって、リリとルトがログインしてこないんだもん。釣り楽しいし。
一時間経って、再召喚したスラリンにも手伝ってもらったよ! スラリンのはもはや、地引き網漁みたいな感覚がある。
そして、本日の成果はこちら!
【金鰺】×2、【真鰺】×13、【暴鱸】×3、【愛鱚】×87、【昆布鯖】×14、【大沙魚】×76、【痺海月】×99、【粘海藻】×99
ふはは、大漁だ!
昆布鯖は……昆布締めされた感じの味がするって鑑定結果だった。すごく生態が気になる。生きた状態で昆布風味に味付けされてるとか不思議じゃない?
そして、痺海月と粘海藻が大量です。スラリンがたくさん吸い上げてたからね。
痺海月が落ちてる砂浜は危険地帯でした……。
落ちてるものを収納しようと歩いた瞬間に触っちゃってたみたいで、ビリッときて、すぐに麻痺状態。持続時間は短かったけど。
何度も触っちゃってたら、いつの間にか麻痺耐性をゲットしてたよ。ラッキー……?
「糸が切れちゃったなー」
「次釣るときは自分で買ってくるんだぞ。もう釣りポイントもわかるようになったじゃろ? お前さんはもう、釣り人初級者じゃ!」
釣り糸はなくしちゃったけど、釣り人ランクが上がったのです。あと、釣りスキルもレベル3になって、もう独り立ちできるみたい。
モンスターが釣れるまでの待ち時間をおじいさんと話して過ごすの楽しかったんだけどなぁ。
「うん、おじいさんが教えてくれたおかげだよ。ありがとう。また一緒に釣りしようね!」
システム的に無理なのかもしれないけど、誘うのは自由だよね。
さて、今日はいっぱい釣りを楽しんだので、次のログインではお料理してみようかな。
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◯継続中ミッション
『テイマーへの道』
第三の街にいる国一番のテイマー・モンハの住所録を手に入れると開始する。テイマーになると完遂。
◯NEWモンスター
【暴鱸】
海で釣れるモンスター。体力があり、海の中で暴れ回る。噛みつき攻撃で小さなモンスターは一撃必殺できる。得意属性【火】苦手属性【風】
【愛鱚】
海で釣れるモンスター。攻撃力は低いが、素早い動きで逃げ回る。得意属性【火】苦手属性【風】
【昆布鯖】
海で釣れるモンスター。餌に食いつく速度が早い。海の中では海藻を操って絞め技を繰り出してくる。得意属性【火】苦手属性【風】
【大沙魚】
海で釣れるモンスター。小さく弱い。釣り初心者でも楽に釣れる。海の中では隠れているので、見つけるのは困難。得意属性【火】苦手属性【風】
【痺海月】
砂浜近くでよく釣れるモンスター。触ると麻痺(小)攻撃を受ける。得意属性【火】苦手属性【風】
◯NEWアイテム
【粘海藻】レア度☆
海で採れる。ネバネバした海藻。料理や錬金術の素材になる。
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