上 下
10 / 282
はじまりの街

10.やらねばならない時がある

しおりを挟む
 魔術をいろいろ試してみたよ。
 風魔術レベル1は風の玉ウィンドボールで、魔術は全部レベル1がボール系みたい。

 跳兎ジャンプラビに対しての攻撃力は全部同じくらいだった。でも、木魔術の木の玉ウッドボールの次に火の玉ファイアーボールを使ったら、ダメージが上がった気がする。

 たぶん木→火、火→風、風→土、土→水、水→木で使うと、属性的にいいんだね。五属性を連続して使うなら、木→火→風→土→水→木ってこと。始点はどこでもいいけど。

 ただ、モンスターによっては属性にも得意・不得意があるらしいから、単純にこうすれば大丈夫ってわけでもなさそう。工夫しがいがあっておもしろい。

「種族レベルが5になったよー。魔術士レベルも3! 大成長だね」
「あれだけ跳兎ジャンプラビを倒せばそうなる」

 なぜだかカミラが呆れてる気がする。僕は真面目に戦闘訓練してただけだよ? すごい数のもも肉と皮が集まってる事実からはちょっと目を逸らす。乱獲じゃないよー。

 スライムたちが次々に跳兎ジャンプラビを連れてきてくれるから、やめ時がなくなっちゃったんだよね。
 そろそろ次の魔術使えるようになるんじゃないかなーって期待してるんだけど。

「SPの割り振りは?」
「ステータスポイント……忘れてた!」

 そういえば、種族レベルが上がる度に、なんかアナウンスされてた。
 ステータスを確認してみたら、SP8って表示されてる。これを好きなステータスに割り振れるんだって。

 今の僕のステータスはこれ。

——————
体力:27
魔力:47
物理攻撃力:10
魔力攻撃力:14
防御力:30
器用さ:10
精神力:14
素早さ:10
幸運値:17

SP:8
——————

 体力と魔力は、種族レベルが上がる度に、自動的にSPが割り振られてるっぽい。
 もらったSPはどこに使おうかなー。

「回避を鍛えるなら素早さが重要。攻撃の精度を上げるなら器用さ。単純なダメージ力を上げるなら魔力攻撃力に割り振るのがおすすめ」
「攻撃の精度?」

 なぁに、それ。首を傾げたら、カミラがきょとんと瞬きをした。

「……説明してなかった。攻撃すると時々クリティカルが発生する。これはモンスターの弱点を突いた時に出やすい。ダメージ力が二倍以上になる」
「え、すご!」
「モモはこれまで一度も出してない。たぶん器用さが足りない」

 そういうところに器用さって影響するんだ。生産だけに関係してるんだと思ってた。

「そっかー。クリティカルは惹かれるけど、そのために全振りするほどじゃないな。結局運も関わってくるんだもんね?」
「幸運値が影響しているという噂がある。それを上げるのもひとつのやり方」

 うわー、さらに候補が増えちゃった。
 ……うーん。今のところ、攻撃力は足りてるんだよね。敵が弱いからかもしれないけど、魔術二発で倒せるし。

 となると、今鍛えたいのは素早さかな。回避とかのスキルを覚えたい! 生産活動のために器用さも上げとこう。攻撃の精度も上がって一石二鳥。

「——よし、こうだ!」

——————
体力:27
魔力:47
物理攻撃力:10
魔力攻撃力:14
防御力:30
器用さ:13(3up)
精神力:14
素早さ:15(5up)
幸運値:17
——————


 カミラが頷く。

「いいと思う。弱点補強」
「だよねー。物理攻撃力弱いから、キックとか覚えてもダメージ低いけど。それは、必要になったら考える!」

 胸を張る。これが今の僕の最良です。

「SPの割り振りまで終わったから、戦闘指南は終了。質問があったら後から聞いてもいい」
「えっ、もう付き合ってくれないの……?」

 衝撃。
 カミラがいてくれるから、安心してバトルできたのに。

「本当は一回ダメージを受けたところを私がサポートするという指南もあった。でも、モモは攻撃受けてない」

 じとっとした眼差しで言われた。なんだか恨めしそうだけど、僕は進んでダメージ受けたくないよ?

 ……周りのスライムたちが時々力を貸してくれてありがたかった。跳兎ジャンプラビに不意打ちで攻撃されることなく、たまに突進を逸らしてくれてたんだよね。

 僕、もしかしてスライムに育てられたって言ってもいいのでは? ただし過保護すぎて、必要な経験も積めなかった疑惑がある。

「あははー……それはサポートお願いしたかったなー」
「はぁ。パーティー組んだら自然とできるようになるはず。後は攻撃を受けることを恐れないこと。誰かに守られてばかりでは成長しない」

 心にグサッときました。
 僕の恐怖心を正確に読み取られてる。攻撃受けるの、想像ができないんだよね。現実みたいに血は出ないけど、やっぱ衝撃はあるんでしょ?

「……最後に一回、バトルに付き合ってくれない?」

 覚悟を決めました。僕、ガッツリ戦ってみる。
 ゲームの中じゃ、バトルは避けて通れないんだし、ここで恐怖心に踏ん切りをつけておきたいな。

「攻撃される体験をする? でも、跳兎ジャンプラビじゃもう役不足」
「無抵抗で攻撃されるのは、なんか違うよなー」

 カミラと顔を見合わせる。
 僕のお願いを聞き入れてくれるみたいだけど、今からだと条件が難しいよね。でも、この【東の草原】で今の僕が本気で戦える相手と言ったら、一つしかなくない?

草原狼プレアリーウルフ、行く?」
「……行こう」

 たぶん、きっと、間違いなく、一人で行くより気が楽なはず!
 自分にそう言い聞かせて、草原の奥へと進んでいくことにした。木が生えてるエリアが草原狼プレアリーウルフのテリトリーだって言われてたからね。

「ちなみに、初心者の冒険者は草原狼プレアリーウルフと戦うなら、フルパーティー推奨」
「それ、六人がかりで戦えってことじゃん! 急に強すぎでは!?」

 思わず叫んじゃった。
 パーティーは最大六人まで組める。人数が増えるほど、当然戦力は増す。フルパーティー推奨っていうのは、それだけ敵が強いという証だ。

 まさか、草原狼プレアリーウルフが最初のフルパーティー推奨の敵とは……。北と南の門から出た先の敵はもっと強いのかな?

「初心者はレベル5までのこと。もうすぐ6になるモモならいける」
「判定ガバガバかよっ! 現時点でレベル5なんだから、僕はまだ初心者だよ。なんならチュートリアルも終わってない、ピヨピヨの雛だよ!」
「? モモはうさぎ」
「そういう意味じゃなーいっ!」

 急に天然ボケかましてくるじゃん。カミラおもしろいかよ。

 ちょっとやけっぱちになってきた気がする。通り道で遭遇する跳兎ジャンプラビに魔術をぶつけて不満発散! 今のところ、魔力はすぐに回復してるから、これくらいは目的外に使ってもいいでしょ。経験値入るし。

「私がサポートする。大丈夫」

 頭をポンって撫でられる。
 ……そんな優しくできるなら、最初からそうしてよ、もう。

「頼りにしてる……」

 むぅ、と頬を膨らませながら言う。カミラが口元にかすかな笑みを浮かべた。笑った顔可愛いね。怒れなくなっちゃうじゃん。


 もうすぐ草原狼プレアリーウルフのテリトリーに入ろうという頃合いに、一体のスライムが近づいてきた。

「どうしたんだ?」

 スライムがぷるぷると体を震わせながら『わたしたち、ここまでね。こわいから』と伝えてくる。
 さすがにスライムに草原狼プレアリーウルフの相手は荷が重いみたい。だよね。むしろこれまでよく付き合ってくれたよ。フレンドでもないのに。

「そっか。これまでありがとう。助かったよ」

 手をふりふり。スライムも体の一部を伸ばして振り返してくれた。暫しのお別れじゃ、達者でな!

「律儀……」
「確かに、モンスターって頭いいんだね」

 そのわりに、跳兎ジャンプラビは無鉄砲に戦いに来ていたような? スライムだけが特別なのかな。

 カミラの様子だと、スライムの態度も奇妙みたいだけど。普通は否応なしに襲ってくるんだって。僕に対してのこれは、きっとスライムと仲が良いからこその成果だね。

  それにしても、スライム防御壁さえ失われて草原狼プレアリーウルフに挑むとか、負け確では? ほんと、カミラ頼りにしてるぞぉ!


******

モモ
種族:天兎アンジュラパ(5)
職業:魔術師(3)、錬金術士(1)

【ステータス】
体力:27
魔力:47
物理攻撃力:10
魔力攻撃力:14
防御力:30
器用さ:13(3up)
精神力:14
素早さ:15(5up)
幸運値:17

******
しおりを挟む
感想 1,121

あなたにおすすめの小説

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

何度も死に戻りで助けてあげたのに、全く気付かない姉にパーティーを追い出された 〜いろいろ勘違いしていますけど、後悔した時にはもう手遅れです〜

超高校級の小説家
ファンタジー
武門で名を馳せるシリウス男爵家の四女クロエ・シリウスは妾腹の子としてプロキオン公国で生まれました。 クロエが生まれた時にクロエの母はシリウス男爵家を追い出され、シリウス男爵のわずかな支援と母の稼ぎを頼りに母子二人で静かに暮らしていました。 しかし、クロエが12歳の時に母が亡くなり、生前の母の頼みでクロエはシリウス男爵家に引き取られることになりました。 クロエは正妻と三人の姉から酷い嫌がらせを受けますが、行き場のないクロエは使用人同然の生活を受け入れます。 クロエが15歳になった時、転機が訪れます。 プロキオン大公国で最近見つかった地下迷宮から降りかかった呪いで、公子が深い眠りに落ちて目覚めなくなってしまいました。 焦ったプロキオン大公は領地の貴族にお触れを出したのです。 『迷宮の謎を解き明かし公子を救った者には、莫大な謝礼と令嬢に公子との婚約を約束する』 そこそこの戦闘の素質があるクロエの三人の姉もクロエを巻き込んで手探りで迷宮の探索を始めました。 最初はなかなか上手くいきませんでしたが、根気よく探索を続けるうちにクロエ達は次第に頭角を現し始め、迷宮の到達階層1位のパーティーにまで上り詰めました。 しかし、三人の姉はその日のうちにクロエをパーティーから追い出したのです。 自分達の成功が、クロエに発現したとんでもないユニークスキルのおかげだとは知りもせずに。

思わず呆れる婚約破棄

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある国のとある夜会、その場にて、その国の王子が婚約破棄を言い渡した。 だがしかし、その内容がずさんというか、あまりにもひどいというか……呆れるしかない。 余りにもひどい内容に、思わず誰もが呆れてしまうのであった。 ……ネタバレのような気がする。しかし、良い紹介分が思いつかなかった。 よくあるざまぁ系婚約破棄物ですが、第3者視点よりお送りいたします。

【完結】聖女ディアの処刑

大盛★無料
ファンタジー
平民のディアは、聖女の力を持っていた。 枯れた草木を蘇らせ、結界を張って魔獣を防ぎ、人々の病や傷を癒し、教会で朝から晩まで働いていた。 「怪我をしても、鍛錬しなくても、きちんと作物を育てなくても大丈夫。あの平民の聖女がなんとかしてくれる」 聖女に助けてもらうのが当たり前になり、みんな感謝を忘れていく。「ありがとう」の一言さえもらえないのに、無垢で心優しいディアは奇跡を起こし続ける。 そんななか、イルミテラという公爵令嬢に、聖女の印が現れた。 ディアは偽物と糾弾され、国民の前で処刑されることになるのだが―― ※ざまあちょっぴり!←ちょっぴりじゃなくなってきました(;´・ω・) ※サクッとかる~くお楽しみくださいませ!(*´ω`*)←ちょっと重くなってきました(;´・ω・) ★追記 ※残酷なシーンがちょっぴりありますが、週刊少年ジャンプレベルなので特に年齢制限は設けておりません。 ※乳児が地面に落っこちる、運河の氾濫など災害の描写が数行あります。ご留意くださいませ。 ※ちょこちょこ書き直しています。セリフをカッコ良くしたり、状況を補足したりする程度なので、本筋には大きく影響なくお楽しみ頂けると思います。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

どうぞ「ざまぁ」を続けてくださいな

こうやさい
ファンタジー
 わたくしは婚約者や義妹に断罪され、学園から追放を命じられました。  これが「ざまぁ」されるというものなんですのね。  義妹に冤罪着せられて殿下に皆の前で婚約破棄のうえ学園からの追放される令嬢とかいったら頑張ってる感じなんだけどなぁ。  とりあえずお兄さま頑張れ。  PCがエラーがどうこうほざいているので消えたら察してください、どのみち不定期だけど。  やっぱスマホでも更新できるようにしとかないとなぁ、と毎度の事を思うだけ思う。  ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!

よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

処理中です...