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両家の父親には苦労が絶えません

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“フラン家とシュケル家の婚約は解消されるのではないか?”
“最近、フラン家には次々に美青年たちが訪れているらしい。ご令嬢の新たな婚約者候補では?”
“シュケル家の嫡男がご令嬢に暴言を吐いたらしいからな。娘想いのフラン家当主は激怒しているんだろう”

自由登校期間のため普段よりも学校にいる生徒は少ないのだが、そんな中でも噂というのは広がるものだ。クローネとレアルの痴話げんかは、尾ひれをつけまくって噂されていた。

実際、両家の当主たちはまたいつものケンカかと呆れていただけで、婚約を解消させるつもりなどなかった。



*     *     *



「いつもいつも、愚息が大変申し訳ない……」
「いや、クローネもすぐに感情を爆発させるところがあるからな。お互い様だ」

フラン家の応接室で、両家の当主たちが疲れた様子で顔を合わせていた。
クローネとフランがケンカをするたびに謝罪をし合ってきたせいで、二人の父親はすっかり仲良しになっていた。

「年頃のご令嬢にゴリラなどと…。アレの情操教育に失敗したのは私の責任だ……」

レアルの父、テンゲが嘆くとクローネの父であるポンドがゆっくりと首を振った。

「それは違うぞ。最初にクローネをゴリラ並みの腕力と言ったのは我が弟のドラクマだ。ドラクマはともかく、レアルくんは誉め言葉のつもりだったのだろう」
「たとえ褒めたつもりでも、女性に対して失礼極まりない。アレはどうも強い生き物が好きなようだが、可憐なクローネちゃんに対して褒めるポイントが間違っている!」
「そうは言うが、クローネとて婚約した当初は強さを褒められて嬉しそうにしていたぞ? 今回に限っては…まあ、少し言葉のチョイスに失敗したようだが……」
「せめてライオンとか虎とか! 強い生き物はいくらでもいるのに!」

およよと嘆くテンゲに、苦笑するポンド。
仲良し父親コンビは一息つくと、すっかり冷めてしまった紅茶で喉を潤した。

「…ところで不穏な噂を聞いたのだがな。最近、こちらの家に次々と美青年が訪ねているというが…まさか、婚約を解消するつもりではあるまいな……?」
「落ち着けテンゲ。そんな血走った目で見ないでくれ。怖い」
「これが落ち着いていられようか! クローネちゃんに見限られたら、レアルなんて一生独身だ! 土下座でも何でもさせるから、どうか婚約解消だけはやめてくれ! 頼む!!」
「だから落ち着けって。誤解だ。うちに訪ねてくる美青年などいない」
「噂はただのデマなのか?」
「……いや。デマというわけではない」

は~と長い溜息をつくと、ポンドはテンゲに噂の真相を語り始めた。


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