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夕日が海に沈もうとしている。
アルジェント様が予約してくれていたレストランのテラス席から、美しい景色を眺めた。
シーフードが自慢のレストランらしく、白身魚のソテーも、エビや貝をふんだんに使ったパスタも絶品だった。デザートのクレームブリュレもほっぺたが落ちるほど美味しかったので、今度ランチアを連れてこよう。
・・・と、私はどうにか平静を装っていたのだが、ロマンティックな雰囲気になったらなったで、だんだん落ち着かなくなってきた。
波の音やキャンドルの明かりが、良いムードを演出してくれてるんだけど・・・これから告白することを考えたらドキドキし過ぎて胸が苦しくなってきた。
アルジェント様も妙に口数が少なくなって、珍しく私たちの間に緊張感が走る。
「あ、あの、とっても美味しかったです。連れてきてくれてありがとうございます、アルジェント様」
「い、いや。君に喜んでもらえて良かったよ」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
わあああ!無言の時間が居た堪れない!
アルジェント様もそう思ったのか、急に波打ち際を散歩しないかと誘ってきた。
ちょうどいい。このままここで告白するのは、ちょっと難しいかもと焦っていただけに、アルジェント様の提案はありがたかった。
すっかり日が落ちて、少しずつ星が瞬き始めている。
私とアルジェント様は砂浜をゆっくりと進む。私はアルジェント様から少しだけ距離をとると、こっそり腹式呼吸をして緊張を鎮めようと頑張っていた。さあ、告白、するぞ・・・告白・・・告白・・・!
「・・・リモーネ」
「ひゃいっ!?」
お、思わず声が裏返ってしまった!恥ずかしい・・・!
アルジェント様に目を向けると、彼のアイスブルーの瞳が熱を持っているのが分かった。
視線だけで身を焦がされそうなほど熱く見つめられ、私は立ちすくむ。
「リモーネ・・・!」
切なげに私を呼びながら、目の前まで来たアルジェント様は――
「すまないっ!!」
そう叫んで・・・・・土下座した。
はぁっ!?ちょ・・・どういうこと!?わ、私、これから告白するつもりだったんですけど!何の謝罪なの、これは!?
「リモーネ!!私は、君を愛している!!この世界の誰よりも!!」
「と、とにかく土下座は・・・ん?今何と?」
え、愛してるとか言った?愛・・・愛!?
「わ、私!?・・・私を愛してるんですかぁぁ!?ってゆーか、それでどうして土下座するんですかぁぁ!?」
意味が!意味が分からない!誰か助けて!
土下座で謝罪されながら愛を告げられるって、どういうことなの!?
「私は、君に嘘をついていた・・・!メーラ嬢のことを可憐だと思ったのは本当だが、付き合いたいなどとは思わなかったんだ。私は、自分が心変わりをしてしまったと勘違いして、君に婚約解消を申し込んでしまった・・・・」
アルジェント様の話を聞いて、ようやく私は納得した。私があれだけ頑張ってメーラさんとの仲を取り持とうとしたのにアルジェント様が消極的だったのは・・・彼自身がそんなことを望んでなかったからなんだ。
スコンっと私の胸から重しが抜けた。
「・・・アルジェント様は、メーラさんに恋をしていたわけでは無かったんですね?」
「彼女の笑顔に、一瞬見惚れてしまったんだ・・・。私はそれを恋だと勘違いしてしまったが・・・君にオルカとの交際を報告されて、間違っていたと気付いた。オルカに嫉妬したんだ・・・とても、激しく」
ふ、ふおぉ!そんなこと言われたら、嬉しくなっちゃうじゃないですか!
私はアルジェント様を立ち上がらせるために手を伸ばした。彼は少し躊躇したものの、私の手をとる。私はその手をギュッと強く握った。
「・・・あのね、アルジェント様。実は、私もアルジェント様のこと、愛しているんですよ」
あ。アルジェント様の口がぱかーんと開いた。ちょっと面白い。
「え?リ、リモーネは、いや、うん、オルカとの交際は偽装だって聞いたけどっ、ええっ??」
何だかものすごく混乱させてしまった。というか、オルカとリコルドめ。私に内緒で勝手に偽装をばらしたな。後でお説教しないと。
「この気持ちに気付いたの、アルジェント様に婚約解消されてからなんですよ?・・・こんな鈍感な私ですが、それでもいいですか?」
「私の方が君よりもよっぽど鈍い愚か者だよ。私が望むのは君だけだ。君こそ、こんなに鈍くて女心に疎い、ヘタレな私でいいのかい?」
う~む。相変わらず自己評価の低い王子様だ。・・・だけど。
「私は、ぜーんぶひっくるめて、アルジェント様が大好きですっ!」
思い切ってアルジェント様の胸に飛び込むと、リリリリ、リモーネ!?としばらく慌てふためいていたが、やがてしっかりと抱き締めてくれた。
二人の視線が重なる。
満天の星空の下、私たちは生まれて初めてのキスをした。
アルジェント様が予約してくれていたレストランのテラス席から、美しい景色を眺めた。
シーフードが自慢のレストランらしく、白身魚のソテーも、エビや貝をふんだんに使ったパスタも絶品だった。デザートのクレームブリュレもほっぺたが落ちるほど美味しかったので、今度ランチアを連れてこよう。
・・・と、私はどうにか平静を装っていたのだが、ロマンティックな雰囲気になったらなったで、だんだん落ち着かなくなってきた。
波の音やキャンドルの明かりが、良いムードを演出してくれてるんだけど・・・これから告白することを考えたらドキドキし過ぎて胸が苦しくなってきた。
アルジェント様も妙に口数が少なくなって、珍しく私たちの間に緊張感が走る。
「あ、あの、とっても美味しかったです。連れてきてくれてありがとうございます、アルジェント様」
「い、いや。君に喜んでもらえて良かったよ」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
わあああ!無言の時間が居た堪れない!
アルジェント様もそう思ったのか、急に波打ち際を散歩しないかと誘ってきた。
ちょうどいい。このままここで告白するのは、ちょっと難しいかもと焦っていただけに、アルジェント様の提案はありがたかった。
すっかり日が落ちて、少しずつ星が瞬き始めている。
私とアルジェント様は砂浜をゆっくりと進む。私はアルジェント様から少しだけ距離をとると、こっそり腹式呼吸をして緊張を鎮めようと頑張っていた。さあ、告白、するぞ・・・告白・・・告白・・・!
「・・・リモーネ」
「ひゃいっ!?」
お、思わず声が裏返ってしまった!恥ずかしい・・・!
アルジェント様に目を向けると、彼のアイスブルーの瞳が熱を持っているのが分かった。
視線だけで身を焦がされそうなほど熱く見つめられ、私は立ちすくむ。
「リモーネ・・・!」
切なげに私を呼びながら、目の前まで来たアルジェント様は――
「すまないっ!!」
そう叫んで・・・・・土下座した。
はぁっ!?ちょ・・・どういうこと!?わ、私、これから告白するつもりだったんですけど!何の謝罪なの、これは!?
「リモーネ!!私は、君を愛している!!この世界の誰よりも!!」
「と、とにかく土下座は・・・ん?今何と?」
え、愛してるとか言った?愛・・・愛!?
「わ、私!?・・・私を愛してるんですかぁぁ!?ってゆーか、それでどうして土下座するんですかぁぁ!?」
意味が!意味が分からない!誰か助けて!
土下座で謝罪されながら愛を告げられるって、どういうことなの!?
「私は、君に嘘をついていた・・・!メーラ嬢のことを可憐だと思ったのは本当だが、付き合いたいなどとは思わなかったんだ。私は、自分が心変わりをしてしまったと勘違いして、君に婚約解消を申し込んでしまった・・・・」
アルジェント様の話を聞いて、ようやく私は納得した。私があれだけ頑張ってメーラさんとの仲を取り持とうとしたのにアルジェント様が消極的だったのは・・・彼自身がそんなことを望んでなかったからなんだ。
スコンっと私の胸から重しが抜けた。
「・・・アルジェント様は、メーラさんに恋をしていたわけでは無かったんですね?」
「彼女の笑顔に、一瞬見惚れてしまったんだ・・・。私はそれを恋だと勘違いしてしまったが・・・君にオルカとの交際を報告されて、間違っていたと気付いた。オルカに嫉妬したんだ・・・とても、激しく」
ふ、ふおぉ!そんなこと言われたら、嬉しくなっちゃうじゃないですか!
私はアルジェント様を立ち上がらせるために手を伸ばした。彼は少し躊躇したものの、私の手をとる。私はその手をギュッと強く握った。
「・・・あのね、アルジェント様。実は、私もアルジェント様のこと、愛しているんですよ」
あ。アルジェント様の口がぱかーんと開いた。ちょっと面白い。
「え?リ、リモーネは、いや、うん、オルカとの交際は偽装だって聞いたけどっ、ええっ??」
何だかものすごく混乱させてしまった。というか、オルカとリコルドめ。私に内緒で勝手に偽装をばらしたな。後でお説教しないと。
「この気持ちに気付いたの、アルジェント様に婚約解消されてからなんですよ?・・・こんな鈍感な私ですが、それでもいいですか?」
「私の方が君よりもよっぽど鈍い愚か者だよ。私が望むのは君だけだ。君こそ、こんなに鈍くて女心に疎い、ヘタレな私でいいのかい?」
う~む。相変わらず自己評価の低い王子様だ。・・・だけど。
「私は、ぜーんぶひっくるめて、アルジェント様が大好きですっ!」
思い切ってアルジェント様の胸に飛び込むと、リリリリ、リモーネ!?としばらく慌てふためいていたが、やがてしっかりと抱き締めてくれた。
二人の視線が重なる。
満天の星空の下、私たちは生まれて初めてのキスをした。
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