上 下
9 / 11

しおりを挟む
やらなければ僕も殺されるのだろう。

僕は受け取った大鉈おおなたを大きく振りかぶった。

狩りを何度も繰り返してきたせいか、目隠しをされて後ろ手に縛られひざまずき、声も無く震えている兵士の姿にも、不思議と何も感じない。

だけど、なんだろう、それとは別の、違和感、矛盾、不快感。

文明に逆らうとか言ってるくせに、こいつらはなんで、気象制御船のおかげでこうてん天をまぬがれているこのわんで、ぬくぬくと平穏へいおん謳歌おうかしてやがんだ?

それにこの状況。

こんなのは、こんなことは……。

僕は大鉈おおなたを足元に投げ捨てて、上級真人シンジンたちの方へと振り返った。

「こんなのは、違います。真人シンジンとも、生きるってこととも違うと思います。これは『狩り』と違って、生きるために殺すんじゃない、殺すために殺すだけです。こんなのは『人間』のやるべきことじゃありません。だから僕にはできません」

これでもう殺されるのだろうけど、僕は最後まで僕という『人間』として生きて死ぬ道を選ぼうと思った。

そんな僕の真っ直ぐな目にいらついた様子の一人が、無言で腰から大鉈おおなたを抜いて構えながら、驚いたような表情を浮かべているコウを押しのけて、僕の前に立った。

「この堕人ダジンが!!」

大鉈おおなたが振り下ろされ、僕は静かに目を閉じた。

が、同時に、突然海が沸騰し始め、盛り上がった海面が激しい津波のように浜辺へと押し寄せて、そいつを含めた上級真人シンジンたちを飲み込み、声を上げる間も無い一瞬で煮殺にころした。

さらにわんは、海底から湧き出すように発生してきた猛烈な嵐により、荒れ狂い始めた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

エロ・ファンタジー

フルーツパフェ
大衆娯楽
 物事は上手くいかない。  それは異世界でも同じこと。  夢と好奇心に溢れる異世界の少女達は、恥辱に塗れた現実を味わうことになる。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

雌犬、女子高生になる

フルーツパフェ
大衆娯楽
最近は犬が人間になるアニメが流行りの様子。 流行に乗って元は犬だった女子高生美少女達の日常を描く

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

処理中です...