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やらなければ僕も殺されるのだろう。
僕は受け取った大鉈を大きく振りかぶった。
狩りを何度も繰り返してきたせいか、目隠しをされて後ろ手に縛られ跪き、声も無く震えている兵士の姿にも、不思議と何も感じない。
だけど、なんだろう、それとは別の、違和感、矛盾、不快感。
文明に逆らうとか言ってるくせに、こいつらはなんで、気象制御船のおかげで荒天を免れているこの湾で、ぬくぬくと平穏を謳歌してやがんだ?
それにこの状況。
こんなのは、こんなことは……。
僕は大鉈を足元に投げ捨てて、上級真人たちの方へと振り返った。
「こんなのは、違います。真人とも、生きるってこととも違うと思います。これは『狩り』と違って、生きるために殺すんじゃない、殺すために殺すだけです。こんなのは『人間』のやるべきことじゃありません。だから僕にはできません」
これでもう殺されるのだろうけど、僕は最後まで僕という『人間』として生きて死ぬ道を選ぼうと思った。
そんな僕の真っ直ぐな目に苛ついた様子の一人が、無言で腰から大鉈を抜いて構えながら、驚いたような表情を浮かべているコウを押しのけて、僕の前に立った。
「この堕人が!!」
大鉈が振り下ろされ、僕は静かに目を閉じた。
が、同時に、突然海が沸騰し始め、盛り上がった海面が激しい津波のように浜辺へと押し寄せて、そいつを含めた上級真人たちを飲み込み、声を上げる間も無い一瞬で煮殺した。
さらに湾は、海底から湧き出すように発生してきた猛烈な嵐により、荒れ狂い始めた。
僕は受け取った大鉈を大きく振りかぶった。
狩りを何度も繰り返してきたせいか、目隠しをされて後ろ手に縛られ跪き、声も無く震えている兵士の姿にも、不思議と何も感じない。
だけど、なんだろう、それとは別の、違和感、矛盾、不快感。
文明に逆らうとか言ってるくせに、こいつらはなんで、気象制御船のおかげで荒天を免れているこの湾で、ぬくぬくと平穏を謳歌してやがんだ?
それにこの状況。
こんなのは、こんなことは……。
僕は大鉈を足元に投げ捨てて、上級真人たちの方へと振り返った。
「こんなのは、違います。真人とも、生きるってこととも違うと思います。これは『狩り』と違って、生きるために殺すんじゃない、殺すために殺すだけです。こんなのは『人間』のやるべきことじゃありません。だから僕にはできません」
これでもう殺されるのだろうけど、僕は最後まで僕という『人間』として生きて死ぬ道を選ぼうと思った。
そんな僕の真っ直ぐな目に苛ついた様子の一人が、無言で腰から大鉈を抜いて構えながら、驚いたような表情を浮かべているコウを押しのけて、僕の前に立った。
「この堕人が!!」
大鉈が振り下ろされ、僕は静かに目を閉じた。
が、同時に、突然海が沸騰し始め、盛り上がった海面が激しい津波のように浜辺へと押し寄せて、そいつを含めた上級真人たちを飲み込み、声を上げる間も無い一瞬で煮殺した。
さらに湾は、海底から湧き出すように発生してきた猛烈な嵐により、荒れ狂い始めた。
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