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第五章 ヴェステ王国編
31.動き動かす
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天空で太陽の如き輝き放つ光が各地の首都上空で輝きを増した。
その刹那、光の柱が作り上げられる降りていく。
各国の王都や首都にある王城や主要建物に降り注ぐ魔力攻撃。
光の柱が消えた瞬間…爆散した。
建物は粉々に砕け散り、通りは瓦礫でふさがれる。
美しい街並みが一気に廃墟となる。
幸いなのは其処に人の気配が全く無いこと。
ヴェステ王宮の上空にも光の球は輝いていた。そして最初の一撃が天空より放たれた。
その力は容赦なく全ての存在を押さえつける圧倒的な力だった。
だが其所には此の世界で最強に硬い魔石から作り出される鉄壁の守る力持つ、金剛魔石による結界が展開されていた。
王宮砦にも復活した赤き賢者の塔より魔力導き入れ、連動させ凌ぐ。
「間に合ったか…」
ヴェステ国王シュトラ・バタル・ドンジェが金剛魔石による結界を展開し、王都を守り抜く。
想定外の未知なる強力な攻撃を受けているが、体内魔石を自由に扱う力得ることにより強力な守護する力を得て遣り過ごす。
「あと2回もつ?」
「ギリギリな…って???!」
いきなり真横で話し掛ける気配に驚き確認するが、人は存在しなかった。
「それじゃ宜しくね!」
その言葉残し、別の場所から語りかけるかの様な音声はスルリと消えた。
「あの姫か…新しい形の転移は此のような形でも使えるのか…興味深い」
人影なく声だけで問いかけて来たのはフレイリアルであった。
ヴェステ国王が察した様に新しい転移…転位を使った語りかけ。語り掛けたい者の周囲の空間入れ換える事で音を届け聞き取っていた。
フレイリアルは大賢者の守りの無い都市なので少々心配していた。
だが大口叩く王だけあって、しっかり守りきる覚悟はあったようだ。
「言った通り実行できるって凄いな…」
小さな感嘆含む言葉を呟き残し、フレイリアルは完全に移動する。
そして各所を手早く確認した。
プラーデラでは王城より緊急の連絡が各所へ回されていた。
"命惜しくば王都の者は速やかに皆王城へ赴け、王都外の者は中心地からなるべく郊外へ出て行け"
ニュールからの指示は正しく命令となり城下へ伝わった。
短期間の内に、新しい王が容赦のない魔物の様な人であり、且つ神の如き力持つ…と王都で知らない者は居ないぐらい噂が広まっていた。
「新し国王様からの御布令を見たか?」
「国王様は何をするつもりなんだ?」
皆、御布令を見て恐怖しか抱かなかった。
「何にしても行かないとヤバそうだよね…逆らうと血の海に沈むって」
ある意味正しく、情報も早い。
「でも、行ってもヤバそうだからな…食われたりしないよな」
「あぁ、別の意味でなら男女見境い無く食ってるって話は聞いたぜ!」
何だか酷い噂ばかりのようでもあった。
「何処までも魔力で追跡して追いかけてくるらしいぜ」
「取り敢えず行くしかないのかな」
「恐ろしい…」
半強制的な御布令だが、恐怖から従うモノが多っかったのは幸いだった。
王都の上空に光が浮かんだ後、恐怖から逃げ出そうとした者も出た。だが既に勝手に手中に収まってくれた城の者達は、民を逃がさなかった…民の為に。
その数秒後、王城を貫くように光の柱が魔力攻撃となって撃ち込まれ突き刺さる。降り来る輝きが、容赦無く全てを滅する光であるのは説明せずとも全ての人が感じ取った。
その冷たい温かみのない白い光を弾き守ったのは、王城を包み込み広がる黄緑色の光と更にその周囲を取り囲むように包む淡い黄色の輝き…それが二重になって守っていた。
人々は未知の者からの攻撃より守ってもらったことと、誰が守ってくれたのかと言うことをやっと理解した。
だが上空の光球は容赦なく輝きを増し次への力を溜め込んで次の光の柱を作り出そうとしている。
『面白い…』
ニュールは血沸き肉躍るような歓喜する思いが心に溢れ出している事に驚嘆する。
自分の中に存在する、力制御することなく難しい状況に対峙し限界に挑む強い衝動に驚く。
『これは魔物の本能なのかもしれない…』
自分の中にある気持ちに思い巡らせた後、この攻撃について考察する。
『攻撃がどれだけ続くのか分からないが、大本を何とかすべきとは思うが…』
諸事こなしつつ考えるうちに、2撃目が上空より撃ち込まれた。
自身の魔物魔石から導き出した黄緑に輝く魔力と、淡黄の間から導き出した輝く淡い黄色の魔力を編み上げるように連携し構造重ね、強化しつつ王城に防御結界を再度張り巡らし、攻撃魔力に抗う。
その時、聞き覚えのある声が降り注ぐ
「ニュール! どっかに居る??」
中央の広間から大音量でフレイリアルの叫ぶ声がする。
声のする至近まで赴き、姿なき声に返事をする。
「…お前、騒がしいぞ!!」
思わず久しぶりなのに頭を抱えたくなるような予想外な行動。その上に騒がしい…いつも通り過ぎる。
「まぁ、1の月も経ってないのだから変わる分けは無いな…」
「ニュールは何か変わったよね…でも何処が変わったんだろ…」
ニュールは魔物な自我との融合が人から見た時どれ程の変化をもたらしたのか…と思い感慨に浸っていると、フレイが悩んだ挙句言う。
「あっ、何か偉そうな感じになった!」
思わず頭を小突きたい気分になった。
この未知の魔力と思われる声の伝達にも説明を求めたい所だが、取り合えず声だけ…と言う状態であっても接触してきた目的を問うニュール。
「この緊張感漂う訳のわからん攻撃を受けてる真っ只中に何の用だ…」
「ごめん! この攻撃魔力はリーシェが起動した、往古の機構によるものなんだって。周囲から魔力集める陣を動かし魔輝にして、それを攻撃魔力にしてるみたいだよ」
「!!!」
遥か昔の技術の名残である…という所と、大賢者様が遂にヤラカシた…と言う所にかなり納得した。
方向性は違うが、ぶっ飛んでる所はそっくりな師弟に魔物なニュールでさえ苦笑する。
「止められないのか?」
「それは無理みたい…だから、私が他へ送るよ」
フレイリアルが驚くような事を言う。
「お前いつの間にかそんなこと…」
「サルトゥスへ行った時に、時の巫女に言われたんだ…私は空間を操れる空の巫女なんだって」
「あんなの動かす魔力集めるのは…まさか彼方の…」
タラッサへ向かう船の中で受けた巫女の特性。ディリチェルの内側が消滅した原因となる力…ニュールは苦虫を噛み潰したような表情になる。
「だって此の大変なの何とかしないと皆終わっちゃうよ」
声だけの遣り取りであったが、フレイリアルは淡く笑みを浮かべていた。
「だからと言って!」
「ニュールだってモーイやミーティの為に、内なる魔物を受け入れたんでしょ…リーシェに聞いたよ」
「……」
何も言えなかった。
「それにニュール達に、まだ少し耐えて貰わないと無理そうだから聞きに来た」
「あぁ、此のぐらいの対応は楽しみ…ってぐらいの範疇だ」
「じゃあ、王都のは宜しくね!」
そして消えていく気配中に混ざる声。
「ありがとう…」
その礼の言葉は少し心にざわつき残すような言葉だった。
「全く…突っ走る奴は手に負えない…」
自分自身を反省しつつ呟くのだった。
フレイリアルはリーシェライルとの遣り取りの中、自分の力を使って何が出来るかを悟った。
『私はリーシェの遣った事を…其処へ至ってしまった時間を取り戻す為に止める』
「リーシェ! 今度こそ本当に待っていて。そして私の遣ることを見守っていて!」
決意を秘めた目で宣言する。
「アルバシェルさん! クリール! お願いがあるの…王都の砦門の外までは移動するから其処から少し私に時間を下さい」
「私は君が望むなら、いつでも共に行くよ」
「キュイー」
確認を取ると、フレイリアルが指定した空間まるごと乾いた荒れ地へ入れ替わり飛び出す。
「なるべく王都から離れたいの…人の少ない方向へ。私は此れから何ヵ所か確認しに行くから…意識を保ったままは難しそうだから身体を運んで欲しいの…お願い!」
「分かった」
答えた瞬間フレイリアルの足下が崩れる。
抱き止め抱き締め願いを実行するためクリールに乗り進む。
「なかなか道化の様な存在だと思うのだが、それでも願い叶えるために動ける嬉しさは巫女の繋がりによるモノなのかな…」
アルバシェルはフレイリアルを抱き締め運びつつ、クリールに語り掛けるように…独り言ちる。
「…!! 、もしかしなくても此が片思いと言うモノか!」
はたっと気付く。
今まで全く不自由なく希望するがままに手に入れようと思えば手に入る存在しか周りに居なかったので気付かなかったのだ。
上から手を伸ばし手に入れるのではなく、下から手を伸ばし懇願する立場。
だが腕の中にあるフレイリアルを見て思う。
『手に入る入らないじゃなくて、其所に居るだけで幸せな気分になれる存在…』
そんな事を考えながら、フレイリアルが希望した方向へクリールと共に走っているとフレイリアルが意識を戻す。
「ありがとう、アルバシェルさん!」
決意した表情で述べ、その場に留まる。
「此処で良いよ」
そして荒れ地に降り立ち笑顔を向ける。
だが手を貸し抱き下ろした時、体から震えが伝わってきていた。
「ここで皆で終わってしまっても誰もフレイを咎めないぞ…」
決意は変わらないのだろうと思いつつアルバシェルは伝えてみた。
「私が私を許せないから、遣ってみたいの」
明るく清々しく微笑む。
思わず抱き締め優しく唇を重ねる。
親愛の情と…秘めた思い籠る口付け。
包み込むような柔らかい魔力と思いが環を描き巡る。
「私はアルバシェルさんが居るこの世界も救いたいよ…」
そう言って一瞬で離れたその瞬間、クリールとアルバシェルの周囲の空間が隔たれたのが分かった。
「フレイ?!」
「一応、異質だと思うから念のためね!」
そして動き出す。
「解放・接続・外流」
切っ掛けとなる言葉を呟き、彼方の魔力を導き入れる。
この言葉も奥底に居る何者かに教えられた言葉。
エリミア上空にあった、何日も掛けられ世界から集められ集約された魔力が一瞬で覆われていく。
白く輝く冷たい光球が放つ輝きごと囲い、絡め取り、飲み込む。
フレイリアルが築いた結界の様な空間の仕切りの外が、恐ろしい量の魔力溢れ渦巻いているのが分かった。
普通の人間なら即死となるであろう過剰な負荷のかかる空間に、見ているアルバシェルやクリールに不安抱かせないよう笑顔浮かべ留まる。
そしてその攻撃魔力を包み込んだ後、最後の言葉で閉める。
「無界」
一瞬で消えた。
あっけにとられていると、膝をつくフレイリアルがアルバシェルの目に入った。
目が虚ろであり、更に彼方との繋がりがあまりにも強く内なる存在が希薄になっていた。
駆け寄り助け起こす。
「姉上に止められていた巫女の禁止事項を破ったのだな!」
声を掛けるが、目を開けているのに反応が薄い。
アルバシェルは、時の巫女から先見による注意を受けていた。
「フレイリアルの行動を止めてはダメ」
何かを行うのは分かっていた。
「大丈夫だから…止めると余計な負荷がかかる。苦しくても、手伝い見守り寄り添いなさい」
指示に従い、予想出来た行動を止めなかった事をアルバシェルは後悔していた。
だが、まずはフレイリアルが十分に休めそうな王宮へ連れ帰る事を考え宣言する。
「役に立たない後悔より行動だ」
その刹那、光の柱が作り上げられる降りていく。
各国の王都や首都にある王城や主要建物に降り注ぐ魔力攻撃。
光の柱が消えた瞬間…爆散した。
建物は粉々に砕け散り、通りは瓦礫でふさがれる。
美しい街並みが一気に廃墟となる。
幸いなのは其処に人の気配が全く無いこと。
ヴェステ王宮の上空にも光の球は輝いていた。そして最初の一撃が天空より放たれた。
その力は容赦なく全ての存在を押さえつける圧倒的な力だった。
だが其所には此の世界で最強に硬い魔石から作り出される鉄壁の守る力持つ、金剛魔石による結界が展開されていた。
王宮砦にも復活した赤き賢者の塔より魔力導き入れ、連動させ凌ぐ。
「間に合ったか…」
ヴェステ国王シュトラ・バタル・ドンジェが金剛魔石による結界を展開し、王都を守り抜く。
想定外の未知なる強力な攻撃を受けているが、体内魔石を自由に扱う力得ることにより強力な守護する力を得て遣り過ごす。
「あと2回もつ?」
「ギリギリな…って???!」
いきなり真横で話し掛ける気配に驚き確認するが、人は存在しなかった。
「それじゃ宜しくね!」
その言葉残し、別の場所から語りかけるかの様な音声はスルリと消えた。
「あの姫か…新しい形の転移は此のような形でも使えるのか…興味深い」
人影なく声だけで問いかけて来たのはフレイリアルであった。
ヴェステ国王が察した様に新しい転移…転位を使った語りかけ。語り掛けたい者の周囲の空間入れ換える事で音を届け聞き取っていた。
フレイリアルは大賢者の守りの無い都市なので少々心配していた。
だが大口叩く王だけあって、しっかり守りきる覚悟はあったようだ。
「言った通り実行できるって凄いな…」
小さな感嘆含む言葉を呟き残し、フレイリアルは完全に移動する。
そして各所を手早く確認した。
プラーデラでは王城より緊急の連絡が各所へ回されていた。
"命惜しくば王都の者は速やかに皆王城へ赴け、王都外の者は中心地からなるべく郊外へ出て行け"
ニュールからの指示は正しく命令となり城下へ伝わった。
短期間の内に、新しい王が容赦のない魔物の様な人であり、且つ神の如き力持つ…と王都で知らない者は居ないぐらい噂が広まっていた。
「新し国王様からの御布令を見たか?」
「国王様は何をするつもりなんだ?」
皆、御布令を見て恐怖しか抱かなかった。
「何にしても行かないとヤバそうだよね…逆らうと血の海に沈むって」
ある意味正しく、情報も早い。
「でも、行ってもヤバそうだからな…食われたりしないよな」
「あぁ、別の意味でなら男女見境い無く食ってるって話は聞いたぜ!」
何だか酷い噂ばかりのようでもあった。
「何処までも魔力で追跡して追いかけてくるらしいぜ」
「取り敢えず行くしかないのかな」
「恐ろしい…」
半強制的な御布令だが、恐怖から従うモノが多っかったのは幸いだった。
王都の上空に光が浮かんだ後、恐怖から逃げ出そうとした者も出た。だが既に勝手に手中に収まってくれた城の者達は、民を逃がさなかった…民の為に。
その数秒後、王城を貫くように光の柱が魔力攻撃となって撃ち込まれ突き刺さる。降り来る輝きが、容赦無く全てを滅する光であるのは説明せずとも全ての人が感じ取った。
その冷たい温かみのない白い光を弾き守ったのは、王城を包み込み広がる黄緑色の光と更にその周囲を取り囲むように包む淡い黄色の輝き…それが二重になって守っていた。
人々は未知の者からの攻撃より守ってもらったことと、誰が守ってくれたのかと言うことをやっと理解した。
だが上空の光球は容赦なく輝きを増し次への力を溜め込んで次の光の柱を作り出そうとしている。
『面白い…』
ニュールは血沸き肉躍るような歓喜する思いが心に溢れ出している事に驚嘆する。
自分の中に存在する、力制御することなく難しい状況に対峙し限界に挑む強い衝動に驚く。
『これは魔物の本能なのかもしれない…』
自分の中にある気持ちに思い巡らせた後、この攻撃について考察する。
『攻撃がどれだけ続くのか分からないが、大本を何とかすべきとは思うが…』
諸事こなしつつ考えるうちに、2撃目が上空より撃ち込まれた。
自身の魔物魔石から導き出した黄緑に輝く魔力と、淡黄の間から導き出した輝く淡い黄色の魔力を編み上げるように連携し構造重ね、強化しつつ王城に防御結界を再度張り巡らし、攻撃魔力に抗う。
その時、聞き覚えのある声が降り注ぐ
「ニュール! どっかに居る??」
中央の広間から大音量でフレイリアルの叫ぶ声がする。
声のする至近まで赴き、姿なき声に返事をする。
「…お前、騒がしいぞ!!」
思わず久しぶりなのに頭を抱えたくなるような予想外な行動。その上に騒がしい…いつも通り過ぎる。
「まぁ、1の月も経ってないのだから変わる分けは無いな…」
「ニュールは何か変わったよね…でも何処が変わったんだろ…」
ニュールは魔物な自我との融合が人から見た時どれ程の変化をもたらしたのか…と思い感慨に浸っていると、フレイが悩んだ挙句言う。
「あっ、何か偉そうな感じになった!」
思わず頭を小突きたい気分になった。
この未知の魔力と思われる声の伝達にも説明を求めたい所だが、取り合えず声だけ…と言う状態であっても接触してきた目的を問うニュール。
「この緊張感漂う訳のわからん攻撃を受けてる真っ只中に何の用だ…」
「ごめん! この攻撃魔力はリーシェが起動した、往古の機構によるものなんだって。周囲から魔力集める陣を動かし魔輝にして、それを攻撃魔力にしてるみたいだよ」
「!!!」
遥か昔の技術の名残である…という所と、大賢者様が遂にヤラカシた…と言う所にかなり納得した。
方向性は違うが、ぶっ飛んでる所はそっくりな師弟に魔物なニュールでさえ苦笑する。
「止められないのか?」
「それは無理みたい…だから、私が他へ送るよ」
フレイリアルが驚くような事を言う。
「お前いつの間にかそんなこと…」
「サルトゥスへ行った時に、時の巫女に言われたんだ…私は空間を操れる空の巫女なんだって」
「あんなの動かす魔力集めるのは…まさか彼方の…」
タラッサへ向かう船の中で受けた巫女の特性。ディリチェルの内側が消滅した原因となる力…ニュールは苦虫を噛み潰したような表情になる。
「だって此の大変なの何とかしないと皆終わっちゃうよ」
声だけの遣り取りであったが、フレイリアルは淡く笑みを浮かべていた。
「だからと言って!」
「ニュールだってモーイやミーティの為に、内なる魔物を受け入れたんでしょ…リーシェに聞いたよ」
「……」
何も言えなかった。
「それにニュール達に、まだ少し耐えて貰わないと無理そうだから聞きに来た」
「あぁ、此のぐらいの対応は楽しみ…ってぐらいの範疇だ」
「じゃあ、王都のは宜しくね!」
そして消えていく気配中に混ざる声。
「ありがとう…」
その礼の言葉は少し心にざわつき残すような言葉だった。
「全く…突っ走る奴は手に負えない…」
自分自身を反省しつつ呟くのだった。
フレイリアルはリーシェライルとの遣り取りの中、自分の力を使って何が出来るかを悟った。
『私はリーシェの遣った事を…其処へ至ってしまった時間を取り戻す為に止める』
「リーシェ! 今度こそ本当に待っていて。そして私の遣ることを見守っていて!」
決意を秘めた目で宣言する。
「アルバシェルさん! クリール! お願いがあるの…王都の砦門の外までは移動するから其処から少し私に時間を下さい」
「私は君が望むなら、いつでも共に行くよ」
「キュイー」
確認を取ると、フレイリアルが指定した空間まるごと乾いた荒れ地へ入れ替わり飛び出す。
「なるべく王都から離れたいの…人の少ない方向へ。私は此れから何ヵ所か確認しに行くから…意識を保ったままは難しそうだから身体を運んで欲しいの…お願い!」
「分かった」
答えた瞬間フレイリアルの足下が崩れる。
抱き止め抱き締め願いを実行するためクリールに乗り進む。
「なかなか道化の様な存在だと思うのだが、それでも願い叶えるために動ける嬉しさは巫女の繋がりによるモノなのかな…」
アルバシェルはフレイリアルを抱き締め運びつつ、クリールに語り掛けるように…独り言ちる。
「…!! 、もしかしなくても此が片思いと言うモノか!」
はたっと気付く。
今まで全く不自由なく希望するがままに手に入れようと思えば手に入る存在しか周りに居なかったので気付かなかったのだ。
上から手を伸ばし手に入れるのではなく、下から手を伸ばし懇願する立場。
だが腕の中にあるフレイリアルを見て思う。
『手に入る入らないじゃなくて、其所に居るだけで幸せな気分になれる存在…』
そんな事を考えながら、フレイリアルが希望した方向へクリールと共に走っているとフレイリアルが意識を戻す。
「ありがとう、アルバシェルさん!」
決意した表情で述べ、その場に留まる。
「此処で良いよ」
そして荒れ地に降り立ち笑顔を向ける。
だが手を貸し抱き下ろした時、体から震えが伝わってきていた。
「ここで皆で終わってしまっても誰もフレイを咎めないぞ…」
決意は変わらないのだろうと思いつつアルバシェルは伝えてみた。
「私が私を許せないから、遣ってみたいの」
明るく清々しく微笑む。
思わず抱き締め優しく唇を重ねる。
親愛の情と…秘めた思い籠る口付け。
包み込むような柔らかい魔力と思いが環を描き巡る。
「私はアルバシェルさんが居るこの世界も救いたいよ…」
そう言って一瞬で離れたその瞬間、クリールとアルバシェルの周囲の空間が隔たれたのが分かった。
「フレイ?!」
「一応、異質だと思うから念のためね!」
そして動き出す。
「解放・接続・外流」
切っ掛けとなる言葉を呟き、彼方の魔力を導き入れる。
この言葉も奥底に居る何者かに教えられた言葉。
エリミア上空にあった、何日も掛けられ世界から集められ集約された魔力が一瞬で覆われていく。
白く輝く冷たい光球が放つ輝きごと囲い、絡め取り、飲み込む。
フレイリアルが築いた結界の様な空間の仕切りの外が、恐ろしい量の魔力溢れ渦巻いているのが分かった。
普通の人間なら即死となるであろう過剰な負荷のかかる空間に、見ているアルバシェルやクリールに不安抱かせないよう笑顔浮かべ留まる。
そしてその攻撃魔力を包み込んだ後、最後の言葉で閉める。
「無界」
一瞬で消えた。
あっけにとられていると、膝をつくフレイリアルがアルバシェルの目に入った。
目が虚ろであり、更に彼方との繋がりがあまりにも強く内なる存在が希薄になっていた。
駆け寄り助け起こす。
「姉上に止められていた巫女の禁止事項を破ったのだな!」
声を掛けるが、目を開けているのに反応が薄い。
アルバシェルは、時の巫女から先見による注意を受けていた。
「フレイリアルの行動を止めてはダメ」
何かを行うのは分かっていた。
「大丈夫だから…止めると余計な負荷がかかる。苦しくても、手伝い見守り寄り添いなさい」
指示に従い、予想出来た行動を止めなかった事をアルバシェルは後悔していた。
だが、まずはフレイリアルが十分に休めそうな王宮へ連れ帰る事を考え宣言する。
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