109 / 193
第四章 タラッサ連合国編
2.思わぬ繋がり
しおりを挟む
改めて小屋の外回りを破壊したお詫びをする為に、揃ってイストアの前に立つ。
「取り敢えず、まずは謝らせてもらう。済まなかった!」
一応皆神妙な顔をして並ぶ。
イストアは此の惨状…と言うか結果と言うものに感嘆の言葉しか示さなかった。
「あんた達、凄いなぁ! 吃驚したよ」
その言葉に再度謝罪を述べ補償についてニュールは切り出す。
「本当にスマン! 修復は何日掛けてもやらせて貰うから勘弁してくれ!」
その言葉を受けて、イストアが有り難い事を言ってくれる。
「あぁ、気にすんな。修復も要らないよ」
「???」
余りにも都合が良すぎるため、疑問を浮かべるニュールに説明してくれる。
「ちょうど此の集落は今日一杯で隣村へ全戸移住予定だったんだ」
「じゃあ、イストアも?」
フレイが気になり速攻質問する。
「うんにゃ、なかなか決心出来なくって…あたしは此処に残るつもりだったんだ…」
引っ越し予定だから直さなくて良い…と言うのかと思いきや残る予定だったと言う。
「じゃあ、直さないと…」
モーイも気になり口を出す。
「いやっ、直さなくて良いから一つ願いを聞いてくれ…」
修繕以外の願いを代償として求めるイストア。
「??」
恐る恐るニュール達はイストアが申し出る内容を聞く。
「あたしを一緒にタラッサまで連れてってくれ…」
「!!!」
「やっと決心したよ!」
決心したイストアが語る。
「あたしが魔石持ちなのは分かっただろ?」
皆頷く。
「だからなんだ…」
そしてイストアは、此の国のしきたりや制度…そして自身の事などを教えてくれた。
此の国では基本魔石持ちになったらヴェステ同様、国に召し抱えられる。
石授けで正式に魔石持ちになった者はその場で、それ以外の雑魚魔石などの内包者となった者は立年の儀までに申し出るようになっていた。
そして内包者は全てプラーデラ王国魔力特化師団へ所属することになる。
だが雑魚魔石持ちは例外があった。村や集落等の小集団にも防衛用魔石使いを1人置いて良いことになっていたので、その任に就くならば入団を免除される。
イストアはこの集落の護衛魔石使いとして集落で雇われていたが歓迎された存在では無かった。
イストアの母は7の年程前に再婚し集落の長の家に入る。
元々集落の役付きの家に生まれ、将来的には長の嫁と決められた者だった。母は村が盗賊に襲われた時に拐われ、助け出した父と縁を繋ぎ結婚することになったのだ。
だが、それさえも集落に入り込むための父の茶番では…と言われていた。
結局イストアが4歳の時、噂で父が街ごと殲滅されたと聞いた。実際に帰って来なくなりの母と共に2人で街外れに住むことになった。
その時点で集落に戻ることも出来たはずだが、何だかんだ母は父を待っていた様だ。
イストアは父と同じ内包者であった。儀式によるものでは無い、雑魚魔石によるものだったので国から直ぐに召集される事は無かった。
選任の儀の後すぐにイストアは集落から問答無用で魔石使いの弟子に出される。
そして、5の年ほど経過し修行から戻ると強制的に防衛壁の護衛魔石使いに任命され…母には2度と会わせてもらえなかった。
今回の集落丸ごとの移動も直前まで聞かされず、暗に残るか出て行くかの2択しか用意されなかったのだ。
残ればいずれ国から召集がかかり自由無き身となる…若しくは父と同じように身を落とし自由を得るか…。
プラーデラ王国は魔力由来資源に乏しい。
魔石も内包者も純粋に国内で生まれたであろうモノは希少だった。
それ故、補うために外国よりそう言ったモノ達が流れてきた。
流れてくるモノは質に問題が有ることが多く、街を荒らし市場を荒らす。
見かねた先代国王が動いた。
国王自身も内包者では無かった。
「魔力は共有されるべき資源。プラーデラ王国内で独占は許さぬ。異議あるものは我の前にて申し立てよ!」
そして魔石使いの一元管理と魔石市場の国営化を図った。
そこから街や村、集落などの大きさによって存在して良い魔石使いの人数を取り決め、街中往来での魔力行使を禁じ、草原での魔力による戦闘などを強く禁じた。
更に現プラーデラ国王シシアトクス・バタル・クラースが先代の意思を継ぎ、国の方向を定める。
この国王は内包者であり黄玉魔石を内包する魔力扱う力強き者であった。
だが魔力の縛りなく暮らせる国を目指す。
「魔力など無くとも成り立つ国を築こうぞ」
そして国をあげて魔力で維持する生活からの脱出を試みる。
古文書的文献を塔であった遺跡状の建物より持ち出し、王宮の奥深くに保存してある。それらを紐解き利用し、魔力なしで動くように様々な物を組み替えてきた。
だが一番重要な水資源の管理…水の組み上げなども魔石に頼っている。
水資源の管理だけは文献を参照し色々研究し試みたが、魔石に完全に頼るより方法が見つから無かった。それでも魔力に頼らなくても成り立とうとするプラーデラ王国が、少しずつ出来上がっていく。
現状どうしても代替の効かない水資源管理用魔石を調達するため、魔石供給源となる砂漠を求め戦う。
それに伴い内包者は見つけられると、プラーデラ王国魔力特化師団へと加えられるようになった。対外的な地位と待遇は保証されるが、戦場を渡り歩かされる過酷な部署が多いと言う。
「あたしはならず者にも軍人にも成りたくない! だから魔石使いの多いタラッサへ行く。そこで本当に遣りたいことを探してみたいんだ」
イストアは希望に満ち溢れた瞳を輝かせ説明した。
ニュールは悩む。
自分達が追われる身であることなど諸々の事情説明がしにくく、同行し却って危険にさらしてしまう可能性がある。
返事が出来ず悩んでいると他から返事が返される。
「いいよ! 人数増えた方が楽しいよね~」
答えを返したのは勿論あまり考えないフレイリアルである。
「おいっ! 簡単に決めて巻き込んだら…」
「だってニュール言ってたよ、何もしなくても物事は進むって…だから一緒に行ってみるのも有りなんじゃないの?」
フレイは何だか違う事を言った時の内容を持ち出した。
「それとはまた別問題…」
モーイがニュールの発言を押し潰す様に言う。
「確かに旅に危険は付き物だからな~」
「何したって、来るときは来るもんな!」
そしてミーティまでも同行に同意する。ニュールは溜息をつきつつ答えた。
「皆の許可が降りたなら反対のしようもない。だが、オレらもチョットした事情でヴェステ軍から追われる身。何が有っても自己責任って事で良いなら、タラッサまで同行することに異議はない。寧ろ、街や国の状況を教えてもらえると有り難い」
こうして一名、旅の友が増えた。
先日のインゼルの白の塔の一件で大量の隠者が消えた。
細かいことを言えば隠者Ⅲ~Ⅸが消え、現地にいた内包者1000名の内400名程が消えた。
隠者に関しては実質半数以上をお人形として確保したそうであり、戦力としての問題は少ないようだ。だが細かい調整が必要な潜入や工作活動は、人数が減った分かなり過密な調整と振り分けになってくる。
「明日からお前、隠者Ⅸな…だからその依頼やれ」
指令を受けるために呼び出され、会いたくもない黒の将軍にまた会ってしまった。
しかも隠者になったばかりなのにⅨの番号を言い渡される。
ちらりと目に映った依頼も、あの会いたくないお嬢さん関連のよう…。
『ボクはボクが関わりたくない奴ばかりに関わることになる』
「あのぉ、ボクはあのお嬢さんに警戒されているんで難しいと思うのですが…」
機先を制し指令を渡される前に申し出るが、あえなく撃沈。
「国王陛下からの勅命。決定事項だな…」
相変わらず黒の将軍からの指令は、「だからどうした!」と叫びたくなる情報量の少なさ。
いきなりの指名による指令。
“エリミア第六王女の略取、又は仲間への紛れ込み、最悪は一時連れ出し…その場合、要事前連絡”
どれもこれもな内容である。標的との相性なんて微塵も考えられてない。
今は守護者である元《三》も居る。
『最後の連れ出し条件の要事前連絡って…機を見て行動するのではなく罠限定かよ』
突っ込みどころだらけの指令だった。
『あのお嬢さんに会ってから僕はついてないと思う…』
隠者Ⅸとなった者はしみじみと思う。
思い当たる不運について述べれば止まらなくなる。
例えば標的の息の根を綺麗に止める所で抵抗されたり、逃げられたり、嫌な任務に赴かされたり…数え上げれば切りがない。
自室に戻った後、溜め息をつきつつも黒の将軍からもらった標的の予想行程表を確認する。
「ヴェステにいる間に何とかしちゃえば面倒が無かったのに…」
ブツブツ文句を呟きつつ目を通す。
「ふーん、陣は使わないんだ…しかも砂漠経由ではなくプラーデラから船ね…」
地図の上、リネアル汽水湖を指差した後隣へ指を移す。
「じゃあ此処で一度ご挨拶しに行こっかなぁ~」
指し示したるは王都ポタミ。
「あぁ~皆にあった時の嫌そうな顔を想像するのも、チョットだけ快感ですね」
口の端を歪め、舌で舐めつつ…愉悦の表情浮かべる隠者Ⅸ。
「どうせなら王宮内にでも押し入ってもらって、お尋ね者にでもなってもらうと彼らの形見が狭くなって楽しいかも知れないかなぁ…誰かに消えてもらうってのも有りだし…何しろ消しそこなってますしねぇ」
楽しい思索のお時間だったのに、ある人物が浮かべるしたり顔が脳裏にチラつく。
「あっ! 何~か嫌だな、あの御方に踊らされている感が半端無いや…マジで理解されちゃってる? 気持ちわるぅ~吃驚だわ!」
隠者Ⅸは追うのも観察するのも大好きだが、追われるのも観察されるのも大嫌いだ。
「まぁ、仕様がないですね…あの御方が僕より上手なのは良く理解しちゃってますから…それぐらいじゃ無いと付いて行く気が起きませんからね」
目を細めにっこりと残忍に笑む。
「期待通り、まずは中に入って踊ってヒッチャカメッチャカになるまで、よぉーくかき混ぜて標的ちゃん達には疲れてもらいましょう」
楽し気に行動を始める隠者Ⅸであった。
「取り敢えず、まずは謝らせてもらう。済まなかった!」
一応皆神妙な顔をして並ぶ。
イストアは此の惨状…と言うか結果と言うものに感嘆の言葉しか示さなかった。
「あんた達、凄いなぁ! 吃驚したよ」
その言葉に再度謝罪を述べ補償についてニュールは切り出す。
「本当にスマン! 修復は何日掛けてもやらせて貰うから勘弁してくれ!」
その言葉を受けて、イストアが有り難い事を言ってくれる。
「あぁ、気にすんな。修復も要らないよ」
「???」
余りにも都合が良すぎるため、疑問を浮かべるニュールに説明してくれる。
「ちょうど此の集落は今日一杯で隣村へ全戸移住予定だったんだ」
「じゃあ、イストアも?」
フレイが気になり速攻質問する。
「うんにゃ、なかなか決心出来なくって…あたしは此処に残るつもりだったんだ…」
引っ越し予定だから直さなくて良い…と言うのかと思いきや残る予定だったと言う。
「じゃあ、直さないと…」
モーイも気になり口を出す。
「いやっ、直さなくて良いから一つ願いを聞いてくれ…」
修繕以外の願いを代償として求めるイストア。
「??」
恐る恐るニュール達はイストアが申し出る内容を聞く。
「あたしを一緒にタラッサまで連れてってくれ…」
「!!!」
「やっと決心したよ!」
決心したイストアが語る。
「あたしが魔石持ちなのは分かっただろ?」
皆頷く。
「だからなんだ…」
そしてイストアは、此の国のしきたりや制度…そして自身の事などを教えてくれた。
此の国では基本魔石持ちになったらヴェステ同様、国に召し抱えられる。
石授けで正式に魔石持ちになった者はその場で、それ以外の雑魚魔石などの内包者となった者は立年の儀までに申し出るようになっていた。
そして内包者は全てプラーデラ王国魔力特化師団へ所属することになる。
だが雑魚魔石持ちは例外があった。村や集落等の小集団にも防衛用魔石使いを1人置いて良いことになっていたので、その任に就くならば入団を免除される。
イストアはこの集落の護衛魔石使いとして集落で雇われていたが歓迎された存在では無かった。
イストアの母は7の年程前に再婚し集落の長の家に入る。
元々集落の役付きの家に生まれ、将来的には長の嫁と決められた者だった。母は村が盗賊に襲われた時に拐われ、助け出した父と縁を繋ぎ結婚することになったのだ。
だが、それさえも集落に入り込むための父の茶番では…と言われていた。
結局イストアが4歳の時、噂で父が街ごと殲滅されたと聞いた。実際に帰って来なくなりの母と共に2人で街外れに住むことになった。
その時点で集落に戻ることも出来たはずだが、何だかんだ母は父を待っていた様だ。
イストアは父と同じ内包者であった。儀式によるものでは無い、雑魚魔石によるものだったので国から直ぐに召集される事は無かった。
選任の儀の後すぐにイストアは集落から問答無用で魔石使いの弟子に出される。
そして、5の年ほど経過し修行から戻ると強制的に防衛壁の護衛魔石使いに任命され…母には2度と会わせてもらえなかった。
今回の集落丸ごとの移動も直前まで聞かされず、暗に残るか出て行くかの2択しか用意されなかったのだ。
残ればいずれ国から召集がかかり自由無き身となる…若しくは父と同じように身を落とし自由を得るか…。
プラーデラ王国は魔力由来資源に乏しい。
魔石も内包者も純粋に国内で生まれたであろうモノは希少だった。
それ故、補うために外国よりそう言ったモノ達が流れてきた。
流れてくるモノは質に問題が有ることが多く、街を荒らし市場を荒らす。
見かねた先代国王が動いた。
国王自身も内包者では無かった。
「魔力は共有されるべき資源。プラーデラ王国内で独占は許さぬ。異議あるものは我の前にて申し立てよ!」
そして魔石使いの一元管理と魔石市場の国営化を図った。
そこから街や村、集落などの大きさによって存在して良い魔石使いの人数を取り決め、街中往来での魔力行使を禁じ、草原での魔力による戦闘などを強く禁じた。
更に現プラーデラ国王シシアトクス・バタル・クラースが先代の意思を継ぎ、国の方向を定める。
この国王は内包者であり黄玉魔石を内包する魔力扱う力強き者であった。
だが魔力の縛りなく暮らせる国を目指す。
「魔力など無くとも成り立つ国を築こうぞ」
そして国をあげて魔力で維持する生活からの脱出を試みる。
古文書的文献を塔であった遺跡状の建物より持ち出し、王宮の奥深くに保存してある。それらを紐解き利用し、魔力なしで動くように様々な物を組み替えてきた。
だが一番重要な水資源の管理…水の組み上げなども魔石に頼っている。
水資源の管理だけは文献を参照し色々研究し試みたが、魔石に完全に頼るより方法が見つから無かった。それでも魔力に頼らなくても成り立とうとするプラーデラ王国が、少しずつ出来上がっていく。
現状どうしても代替の効かない水資源管理用魔石を調達するため、魔石供給源となる砂漠を求め戦う。
それに伴い内包者は見つけられると、プラーデラ王国魔力特化師団へと加えられるようになった。対外的な地位と待遇は保証されるが、戦場を渡り歩かされる過酷な部署が多いと言う。
「あたしはならず者にも軍人にも成りたくない! だから魔石使いの多いタラッサへ行く。そこで本当に遣りたいことを探してみたいんだ」
イストアは希望に満ち溢れた瞳を輝かせ説明した。
ニュールは悩む。
自分達が追われる身であることなど諸々の事情説明がしにくく、同行し却って危険にさらしてしまう可能性がある。
返事が出来ず悩んでいると他から返事が返される。
「いいよ! 人数増えた方が楽しいよね~」
答えを返したのは勿論あまり考えないフレイリアルである。
「おいっ! 簡単に決めて巻き込んだら…」
「だってニュール言ってたよ、何もしなくても物事は進むって…だから一緒に行ってみるのも有りなんじゃないの?」
フレイは何だか違う事を言った時の内容を持ち出した。
「それとはまた別問題…」
モーイがニュールの発言を押し潰す様に言う。
「確かに旅に危険は付き物だからな~」
「何したって、来るときは来るもんな!」
そしてミーティまでも同行に同意する。ニュールは溜息をつきつつ答えた。
「皆の許可が降りたなら反対のしようもない。だが、オレらもチョットした事情でヴェステ軍から追われる身。何が有っても自己責任って事で良いなら、タラッサまで同行することに異議はない。寧ろ、街や国の状況を教えてもらえると有り難い」
こうして一名、旅の友が増えた。
先日のインゼルの白の塔の一件で大量の隠者が消えた。
細かいことを言えば隠者Ⅲ~Ⅸが消え、現地にいた内包者1000名の内400名程が消えた。
隠者に関しては実質半数以上をお人形として確保したそうであり、戦力としての問題は少ないようだ。だが細かい調整が必要な潜入や工作活動は、人数が減った分かなり過密な調整と振り分けになってくる。
「明日からお前、隠者Ⅸな…だからその依頼やれ」
指令を受けるために呼び出され、会いたくもない黒の将軍にまた会ってしまった。
しかも隠者になったばかりなのにⅨの番号を言い渡される。
ちらりと目に映った依頼も、あの会いたくないお嬢さん関連のよう…。
『ボクはボクが関わりたくない奴ばかりに関わることになる』
「あのぉ、ボクはあのお嬢さんに警戒されているんで難しいと思うのですが…」
機先を制し指令を渡される前に申し出るが、あえなく撃沈。
「国王陛下からの勅命。決定事項だな…」
相変わらず黒の将軍からの指令は、「だからどうした!」と叫びたくなる情報量の少なさ。
いきなりの指名による指令。
“エリミア第六王女の略取、又は仲間への紛れ込み、最悪は一時連れ出し…その場合、要事前連絡”
どれもこれもな内容である。標的との相性なんて微塵も考えられてない。
今は守護者である元《三》も居る。
『最後の連れ出し条件の要事前連絡って…機を見て行動するのではなく罠限定かよ』
突っ込みどころだらけの指令だった。
『あのお嬢さんに会ってから僕はついてないと思う…』
隠者Ⅸとなった者はしみじみと思う。
思い当たる不運について述べれば止まらなくなる。
例えば標的の息の根を綺麗に止める所で抵抗されたり、逃げられたり、嫌な任務に赴かされたり…数え上げれば切りがない。
自室に戻った後、溜め息をつきつつも黒の将軍からもらった標的の予想行程表を確認する。
「ヴェステにいる間に何とかしちゃえば面倒が無かったのに…」
ブツブツ文句を呟きつつ目を通す。
「ふーん、陣は使わないんだ…しかも砂漠経由ではなくプラーデラから船ね…」
地図の上、リネアル汽水湖を指差した後隣へ指を移す。
「じゃあ此処で一度ご挨拶しに行こっかなぁ~」
指し示したるは王都ポタミ。
「あぁ~皆にあった時の嫌そうな顔を想像するのも、チョットだけ快感ですね」
口の端を歪め、舌で舐めつつ…愉悦の表情浮かべる隠者Ⅸ。
「どうせなら王宮内にでも押し入ってもらって、お尋ね者にでもなってもらうと彼らの形見が狭くなって楽しいかも知れないかなぁ…誰かに消えてもらうってのも有りだし…何しろ消しそこなってますしねぇ」
楽しい思索のお時間だったのに、ある人物が浮かべるしたり顔が脳裏にチラつく。
「あっ! 何~か嫌だな、あの御方に踊らされている感が半端無いや…マジで理解されちゃってる? 気持ちわるぅ~吃驚だわ!」
隠者Ⅸは追うのも観察するのも大好きだが、追われるのも観察されるのも大嫌いだ。
「まぁ、仕様がないですね…あの御方が僕より上手なのは良く理解しちゃってますから…それぐらいじゃ無いと付いて行く気が起きませんからね」
目を細めにっこりと残忍に笑む。
「期待通り、まずは中に入って踊ってヒッチャカメッチャカになるまで、よぉーくかき混ぜて標的ちゃん達には疲れてもらいましょう」
楽し気に行動を始める隠者Ⅸであった。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-
一星
ファンタジー
至って普通のサラリーマン、松平善は車に跳ねられ死んでしまう。気が付くとそこはダンジョンの中。しかも体は子供になっている!? スキル? ステータス? なんだそれ。ゲームの様な仕組みがある異世界で生き返ったは良いが、こんな状況むごいよ神様。
ダンジョン攻略をしたり、ゴブリンたちを支配したり、戦争に参加したり、鳩を愛でたりする物語です。
基本ゆったり進行で話が進みます。
四章後半ごろから主人公無双が多くなり、その後は人間では最強になります。
【大賢者の相棒?】世界の為に尽くした大賢者は転生したらただの『アイアンソード』で草生えたのでとりあえず没落貴族令嬢を英雄にする事に決めました
夕姫
ファンタジー
【草……なんか神様っていないらしいわよ?】
【ざっくりしたあらすじ】
《草……こんなにも世界のために尽くしたのに!しかも私は大賢者よ?剣なんか使ったことないわよ!せめて世界最強の杖とかに転生させなさいよ。まぁいいわ、私を買ってくれたこの貴族令嬢を世界最強の英雄にしてみせるから!》
【本当のあらすじ】
かつて魔物の恐怖から世界を救った英雄の1人『大賢者』と呼ばれるアイリス=フォン=アスタータは自分の知識や技能を教え、世界のために尽くしついに天寿を全うする。
次に生まれ変わるときは人間ではなく、魔法の探求心から精霊になりたいと願っていた。
そして1000年後。しかし、その願いは叶わず、彼女は生まれ変わることになる、ただの『アイアンソード』として。
そんなある日、魔物の戦乱で没落した貴族令嬢のサーシャ=グレイスに購入してもらうことになる。サーシャは戦闘経験0。魔法も使ったことがない、ただ生き抜くために全財産でアイアンソードを買ったのだった。
そしてアイリスは覚悟を決める。自分が『アイアンソード』に転生した意味があるのならそれを残したい、私がこの子を強くする。いや世界最強にして見せると。
魔法の知識は豊富にあるが剣術の経験0の大賢者(アイアンソード)とそもそもの戦闘経験0の没落貴族令嬢が世界を救い、生き抜くために奮闘する物語。
ソードオブマジック 異世界無双の高校生
@UnderDog
ファンタジー
高校生が始める異世界転生。
人生をつまらなく生きる少年黄金黒(こがねくろ)が異世界へ転生してしまいます。
親友のともはると彼女の雪とともにする異世界生活。
大事な人を守る為に強くなるストーリーです!
是非読んでみてください!
守護者契約~自由な大賢者達
3・T・Orion
ファンタジー
守護者契約の必要性は消えた。
願い叶えるために動き始めた少女が、近くに居たオッサンを巻き込み結んだ守護者契約。
時は流れ…守護していた少女は大賢者となり、オッサンも別の地に新たなる大きな立場を得る。
変化した状況は、少女とオッサンの2人に…全てを見直す決断を促した。
しかも2人の守護者と言う繋がりを利用できると感じた者達が、様々な策謀巡らし始める。
更に…ごく身近で過剰に守護する者が、1つの願うような欲望を抱き始める。
色々な場所で各々の思惑が蠢く。
国王に王女に大賢者、立場を持つことになった力あるオッサンに…力を得た立場ある少女。
国と国…人と人…大賢者と大賢者。
目指す場所へ向け、進んでいく。
※魔輝石探索譚の外伝です。魔心を持つ大賢者の周りの子~から繋がる流れになります。
※小説家になろうさんで魔輝石探索譚のおまけ話として載せてたモノに若干加筆したものです。長めだったので、別話として立ち上げました。
※此のおまけ話は、此処だけのおまけ話です。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
目の前で不細工だと王子に笑われ婚約破棄されました。余りに腹が立ったのでその場で王子を殴ったら、それ以来王子に復縁を迫られて困っています
榊与一
恋愛
ある日侯爵令嬢カルボ・ナーラは、顔も見た事も無い第一王子ペペロン・チーノの婚約者に指名される。所謂政略結婚だ。
そして運命のあの日。
初顔合わせの日に目の前で王子にブス呼ばわりされ、婚約破棄を言い渡された。
余りのショックにパニックになった私は思わず王子の顔面にグーパン。
何故か王子はその一撃にいたく感動し、破棄の事は忘れて私に是非結婚して欲しいと迫って来る様になる。
打ち所が悪くておかしくなったのか?
それとも何かの陰謀?
はたまた天性のドMなのか?
これはグーパンから始まる恋物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる