36 / 193
第一章 エリミア辺境王国編
おまけ2 エシェリキアのその後
しおりを挟む
継承権の剥奪とその他の刑が決まるまでの謹慎処分の間、エシェリキアの頭の中ではある考えが堂々巡りをしていた。
『なぜ自分は大それた行いをしてしまったのだろうか…』
大賢者様からの報告にてサランラキブがヴェステの間者であったとの知らせがあり、ギリギリの所で極刑だけは免れることになった様だ。
決まっているのはそれだけだった。
知らずうちに誘導されていた自分の中にある正義が、歪められた物であったこともその後大人から諭される事で理解出来た。
今まで積み上げたつもりであったモノは何一つ積み上げられて無かったことにエシェリキアは愕然とした。
『理解はしても納得はできない…』
そんなエシェリキアにとっての謹慎と言う処分と言う取り敢えずの罰は、半分は現実を受け入れられない自らが望んだ引きこもりの様なものでしかなかった。
もう、あれから2の月が経ち友好使節として赴く予定の者達は各地へ向かったと聞いた。
あのフレイルさえ、自ら道を選びサルトゥスへ向かったと言う。
そもそも、" あのフレイル " と考えてしまうが、彼女が実際に何をしたわけでも無いことは十分理解したつもりだった…だが年月を経た思い込みは正常な理解を歪めてしまい感情がついていかない。
あの異色の色合い持つ者の力が、この国の厄難となる可能性を持っていると判断した。それは純粋にこの国の臣となるべき立場の時の感情であり、今もそれは捨てきれない考えだ。
そんな悶々とした思いから、様々な無駄な考えが繰り返し頭の中を巡る。
今まで散々偉そうに語っていた自分が、何ら生産的活動をしていないのは十分解っていた。
さらに、仲間だった者に取り返しのつかない事態を引き起こしてしまった浅はかな行動と、事件により周囲から見捨てられてしまった現実は受け入れがたい重しとなり背後にのしかかる。
従者一人さえ居ない軟禁生活は、より一層エシェリキアの自虐的気分と暗い考えを増す。
『どの様な状態であっても、私のことを気にする者など皆無であることは事実…』
その時、自室の扉が大きな音と共に開け放たれた。
とうとう処遇が決まり連行されるのかと思った…が、そこにはモモハルムアが選任の儀を終え正式な守護者となったフィーデスと共に立っていた。
選任の儀も後日、改めて無事執り行われたのだ。
今回、自分が参加できなかったのは当たり前の事なのだが、目の当たりにすると情けなさが溢れてくるのを感じる。
「情けないです」
扉から入ってきたモモハルムアがエシェリキアに向き合い吐き捨てるように言った。自分の感じている思いをそのままを言葉にして伝えられ愕然した。
「いい加減に目を覚ましてください」
低く押し殺すような声で言葉を発しながら、守護者見習いと共にツカツカと近づいてきてエシェリキアの横を少し通り過ぎてから止まった。
その瞬間はなにが起こるか全く予想していなかったので呆然としてしまった。
エシェリキアが振り向く前に向き直ったモモハルムアは、全力で腕を振りあげ背後からエシェリキアの背を思いきり叩いた。
確実に赤く…腫れるような威力のヤツだった。
打った手も痛いだろうと思える強さ。
痛みに絶句しながら振り返ると、そこには目に怒りの涙を溜めたモモハルムアが居た。
「こんな時にいじけて後ろばかりを見て、しかも反省もせず引きこもる。色々な事が起こり国が不安定な今、我々が前を向いて立たずしてどうするのです」
モモハルムアの言葉をただ是認するしかなかった。
何も見えて居なかった自分を目の前につきつけられ…共にある世代としての気遣いに、真に深く反省の思いが湧く。
自分は今回の件で継承権が無くなるのは確実…それは当然のことだったのだ。
だけど、こう言う人間と共に並び歩き次代を担えたらそれもありでは…とエシェリキアに甘い考えが浮かんだ。
しかし、すぐ消え去る淡い期待であった。
「私はあの方が帰ってきて私に向き合ってくれるまで、前を向いてこの国を少しでも善き方向に導ける様に努力します。貴方はどうするつもりですか?」
この時エシェリキアは、この激しくも美しい先を見据える目を持つ獰猛な肉食魔獣に踏みつけられている様な気分になった。
『悪くない気分…むしろ…』
背中からゾワゾワと昂るような気持ちが湧く。
『この方の片腕となる道を探るも良いかもしれない。この方が思いを寄せる奴に成り代わる努力をしてみるのも有りか…』
一気に様々な先へ向けた考えが、後ろ向きだったエシェリキアの中から溢れ出る。
見た目に反して待機狩猟型魔物的であるモモハルムアの思いを逸らすのは、一度その獲物を手に入れさせて満足しないと他に興味は移りそうもない…と判断する。
『この方の狩猟に付き合うのも一興か…』
沙汰はまだ下らないが、少しどころか進んでやってみたいことが出来てきた。
この国の偽らぬ現状を把握せねばならない。それは、この先、この方がどの様な立場に立とうとも役に立つだろうとエシェリキアは考える。
久々にサランラキブは前向きな楽しい気持ちになった。
そして考え1つで楽しくなれることを思い出し、とりあえず今の状況を脱出しこの方の配下になる道を探ることに決めたサランラキブであった。
『なぜ自分は大それた行いをしてしまったのだろうか…』
大賢者様からの報告にてサランラキブがヴェステの間者であったとの知らせがあり、ギリギリの所で極刑だけは免れることになった様だ。
決まっているのはそれだけだった。
知らずうちに誘導されていた自分の中にある正義が、歪められた物であったこともその後大人から諭される事で理解出来た。
今まで積み上げたつもりであったモノは何一つ積み上げられて無かったことにエシェリキアは愕然とした。
『理解はしても納得はできない…』
そんなエシェリキアにとっての謹慎と言う処分と言う取り敢えずの罰は、半分は現実を受け入れられない自らが望んだ引きこもりの様なものでしかなかった。
もう、あれから2の月が経ち友好使節として赴く予定の者達は各地へ向かったと聞いた。
あのフレイルさえ、自ら道を選びサルトゥスへ向かったと言う。
そもそも、" あのフレイル " と考えてしまうが、彼女が実際に何をしたわけでも無いことは十分理解したつもりだった…だが年月を経た思い込みは正常な理解を歪めてしまい感情がついていかない。
あの異色の色合い持つ者の力が、この国の厄難となる可能性を持っていると判断した。それは純粋にこの国の臣となるべき立場の時の感情であり、今もそれは捨てきれない考えだ。
そんな悶々とした思いから、様々な無駄な考えが繰り返し頭の中を巡る。
今まで散々偉そうに語っていた自分が、何ら生産的活動をしていないのは十分解っていた。
さらに、仲間だった者に取り返しのつかない事態を引き起こしてしまった浅はかな行動と、事件により周囲から見捨てられてしまった現実は受け入れがたい重しとなり背後にのしかかる。
従者一人さえ居ない軟禁生活は、より一層エシェリキアの自虐的気分と暗い考えを増す。
『どの様な状態であっても、私のことを気にする者など皆無であることは事実…』
その時、自室の扉が大きな音と共に開け放たれた。
とうとう処遇が決まり連行されるのかと思った…が、そこにはモモハルムアが選任の儀を終え正式な守護者となったフィーデスと共に立っていた。
選任の儀も後日、改めて無事執り行われたのだ。
今回、自分が参加できなかったのは当たり前の事なのだが、目の当たりにすると情けなさが溢れてくるのを感じる。
「情けないです」
扉から入ってきたモモハルムアがエシェリキアに向き合い吐き捨てるように言った。自分の感じている思いをそのままを言葉にして伝えられ愕然した。
「いい加減に目を覚ましてください」
低く押し殺すような声で言葉を発しながら、守護者見習いと共にツカツカと近づいてきてエシェリキアの横を少し通り過ぎてから止まった。
その瞬間はなにが起こるか全く予想していなかったので呆然としてしまった。
エシェリキアが振り向く前に向き直ったモモハルムアは、全力で腕を振りあげ背後からエシェリキアの背を思いきり叩いた。
確実に赤く…腫れるような威力のヤツだった。
打った手も痛いだろうと思える強さ。
痛みに絶句しながら振り返ると、そこには目に怒りの涙を溜めたモモハルムアが居た。
「こんな時にいじけて後ろばかりを見て、しかも反省もせず引きこもる。色々な事が起こり国が不安定な今、我々が前を向いて立たずしてどうするのです」
モモハルムアの言葉をただ是認するしかなかった。
何も見えて居なかった自分を目の前につきつけられ…共にある世代としての気遣いに、真に深く反省の思いが湧く。
自分は今回の件で継承権が無くなるのは確実…それは当然のことだったのだ。
だけど、こう言う人間と共に並び歩き次代を担えたらそれもありでは…とエシェリキアに甘い考えが浮かんだ。
しかし、すぐ消え去る淡い期待であった。
「私はあの方が帰ってきて私に向き合ってくれるまで、前を向いてこの国を少しでも善き方向に導ける様に努力します。貴方はどうするつもりですか?」
この時エシェリキアは、この激しくも美しい先を見据える目を持つ獰猛な肉食魔獣に踏みつけられている様な気分になった。
『悪くない気分…むしろ…』
背中からゾワゾワと昂るような気持ちが湧く。
『この方の片腕となる道を探るも良いかもしれない。この方が思いを寄せる奴に成り代わる努力をしてみるのも有りか…』
一気に様々な先へ向けた考えが、後ろ向きだったエシェリキアの中から溢れ出る。
見た目に反して待機狩猟型魔物的であるモモハルムアの思いを逸らすのは、一度その獲物を手に入れさせて満足しないと他に興味は移りそうもない…と判断する。
『この方の狩猟に付き合うのも一興か…』
沙汰はまだ下らないが、少しどころか進んでやってみたいことが出来てきた。
この国の偽らぬ現状を把握せねばならない。それは、この先、この方がどの様な立場に立とうとも役に立つだろうとエシェリキアは考える。
久々にサランラキブは前向きな楽しい気持ちになった。
そして考え1つで楽しくなれることを思い出し、とりあえず今の状況を脱出しこの方の配下になる道を探ることに決めたサランラキブであった。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。
音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。
その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。
16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。
後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
目覚めたら7歳児でしたが、過酷な境遇なので改善したいと思います
瑞多美音
ファンタジー
ふと、目を覚ますと7歳児になっていた。しかも、奴隷に……
どうやら今世のわたしが死にかけたことで前世の記憶がよみがえったようだ……
熱病で生死をさまよい死にかけグループに移動させられたメリッサ。
死にかけグループとは病気や怪我などで役に立たないとされるひとが集められており、部屋は半壊、冷たい床に薄い布団、ご飯は他のグループと比べるとかなり少ないとか。ほかより待遇が悪くなるようだ……
「扱いが他よりちょっとひどいが、部屋でできる仕事がまわってくる。慣れればなんとかなるよ」
と言われたものの、さすが死にかけグループ。訳ありの人ばかり。
神様に見送られたわけでもチートをもらったわけでもない……世知辛い。
ここは自分の頭と行動で自分を助けるしかないな。前世では手助けしてくれた両親も今世は見当たらないのだから……でもなんだか、この部屋は心地よい。前の部屋は自分のことで精一杯という感じだったのにここでは正に一心同体。
みんなには死んでほしくないからすこしでも工夫しないと。
死にかけたことで前世を思い出した主人公が過酷な境遇を改善するため周囲のひとを巻き込みつつ知恵や工夫を凝らしてまずは衣食住の改善を目指し頑張るお話。
※この話には奴隷に関するもの、登場人物に火傷、隻腕、隻眼などが含まれます。あくまでもフィクションですが、苦手なかたや合わないと感じたかたは無理をなさらずそっ閉じでお願いいたします。
※この語は法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる