18 / 193
第一章 エリミア辺境王国編
18.巻き込まれた原因
しおりを挟む
「今日の僕とフレイの秘密だね」
小首を傾げ宵闇色に光指す瞳を優しく細めながら、顔にかかった銀の長い髪をするりと延びた白い指で除けて耳に掛けそのままナイショの仕草で口の前に持ってくる。
そんな麗しい仕草で締められた今日の内緒話の内容。
《大賢者が塔を離れる事で起こる惨事》
酷く不穏な題材だった。
フレイが青の間に出入りするようになってから1年と5の月ほど過ぎた頃だった。
それまでの間、フレイは自分の部屋にこもってたら出来ないような事、教えてもらえないような事を此処で数え切れないぐらいリーシェとやってみた。
リーシェがしてくれる昔の話や、昔々の話、昔々のそのまた昔の話、魔石の話に魔物の話、次から次へと湧き出る数々の話に興味は尽きない。リーシェは疑問も寂しさも全てを埋めてくれた。
質問した内容に答えてくれるリーシェは、答えを教えてくれているのに時折り奇妙な事を言った。
「へぇー、僕も聞かれるまで知らなかったな」
「えっ? だってリーシェが答えたじゃない!」
「僕の中にあることを僕が全部知ってるわけないじゃないか!!」
子供の様にむくれながらリーシェは答える。
7歳ぐらいの子に対等に突っ掛かる姿は子供ながらに「しょうがないな…」と思ってしまったが、フレイリアルはリーシェライルの事が誰よりも何よりも大好きだった。
此処に来てリーシェと一緒にいると、自分の部屋周りで聞く嫌な話を全て忘れられた。
選任の儀前の予備学習として賢者の塔にある学舎に入ることが決まったときも、リーシェの近くに行きやすくなると思い嬉しかったぐらいだ。
『それなのに何でこんな…』
そう思いながら、起きた事態に義憤抱えフレイリアルはその場から全力で走り去った。
フレイリアルは近づいてくる同年代の子供が大嫌いだった。大体がからかうために近づき、見た目が違うだけで悪く言う。
根拠の薄い根拠で縛ろうとする浅はかな考えが許せなかった。
『大人も同じ…』
結局フレイリアルの鮮やかで綺麗な青葉の瞳や豊かな大地の色した髪は、均一な色を持つここの人達にとって "異質な色持つ奇異な者" としか認識してもらえなかった。それなのに学舎で集まる事で一層の違いを印象付けられ、フレイリアルは弾き出される。
攻撃用の水の魔力をぶつけられたが、フレイ自身の持つ特性で難は逃れた。
だが、その力は攻撃してきた子供達を昏倒させることになったのだ…。
学舎のある賢者の東塔から中央塔まで、フレイは走り続けた。
そして、今では儀式や謁見でもない限り、問い質される事も無く通れるようになっていた中央塔入り口を息を切らしながら走り抜ける。転移の間まで行きつくと、呼び止められる隙を与えず陣に魔力を込め転移した。
転移陣を起動し18層に移動する一瞬の間、ここに来たばかりの頃の事が思い浮かんだ。
「フレイは体の中に魔石は持ってないけど力は引き出せるはずだよ」
何度かリーシェに転移陣を使って蒼の間まで連れて来てもらい、自分でも転移出来たらなぁと思っていたときに言われた。
「えっっ?」
「だって回路が見えるよ」
「???」
リーシェは事も無げに言った。
「だって、石樹の儀の時、石を取り込めたでしょ?」
「…うん…」
「王城の結界とか通るの、すごく嫌な感じするでしょ?」
「うん」
「それは回路がしっかりフレイの中に出来上がってるからだよ。王城壁に埋められている魔石と魔石で作られる結界が回路と干渉して、通り過ぎるとき嫌な感じが出るんだ。回路がしっかりしてる者ほど、あそこはあまり通りたくないと思うとはずだよ」
相変わらず訳がわからないと言った顔をしているとリーシェは優しくフレイの頭に手を置き、柔らかな髪を愛しそうに微笑みながら撫でてくれた。
「取り込んだ魔力がそこにあるのは当たり前の事だよ? どれぐらいの強さの魔力を扱えるかはまだ判らないから、少しずつ僕と訓練していこうね…それと、これは皆には内緒にしておいた方が良いから二人の秘密だよ」
笑顔でふざけながら楽しそうに、ひ・み・つ、と指を左右に動かすリーシェの笑みは相変わらず花が咲くように美しかった。
そんなことを思い出す間に18層に着いた。
其処からも、ひたすら走り最上階を目指す。
階段を一歩ずつ駆け抜けていくと周りの魔石の鋭くも清々しい力が降り注ぎ、毎回の事だが身体の中に溜まった澱が全てが洗い流されて行く。最上階にたどり着く頃に怒りは落ちつき、その分じんわりと悲しみがやって来た。
青の間の扉を開けるとリーシェはいつもの様にゆったりとした動きでこちらを振り返り、優雅に微笑みフレイを迎えてくれた。
「いらっしゃいフレイ。学舎での勉強は終わったの?」
包み込むように微笑んでくれるリーシェに辿り着き、フレイは今まで我慢していたもの全てが溢れてくるような気持ちになった。
ぽろぽろと瞳からこぼれ落ちる涙は止めどなく流れていった。
立ち尽くしたまま無言で涙を溢すフレイに近づき、リーシェは何も言わずに抱き締めてくれていた。
暫しの時間が流れた後、フレイがまだ涙を流したまま呟く。
「リーシェ、一緒にここから出ていこうよ」
「ねぇ、一緒に行こう!」
少しずつ大きくなる声で何度も繰り返し訴え、最後は泣き叫びながら言う。
「お願い、リーシェ。一緒にこの国から出ていこう!!!」
リーシェはその言葉にゆっくりと静かに答えた。
「僕はこの塔から離れたら生きて行けないんだ…」
フレイはその返事を聞いて固まり、涙でぐちゃぐちゃの目に疑問を浮かべながらリーシェライルを見つめた。
「ここから離れたら生命を維持出来ないんだよ」
もう一度はっきりした言葉でリーシェは答えたのだった。
《大賢者》
先代大賢者より体内魔石を継承し、その魔石と回路を繋ぐことであらゆる魔石から最大限の力を引き出すことができるようになる。その力は賢者の塔を制御する力として利用され、過去の大賢者が蓄えた知識を共有することもできるようになる。
その他解明されてない力もあると推測される。
ヴェステ王立魔石研究所
リーシェは泣いていたフレイが泣きやむのを確認してから、手元にあったヴェステの研究所が発行した研究論文が載った厚い本をパタリと開き見せてくれた。
「大賢者って公式にはこんな感じの事しか知られていないけど、出来る事以外にも出来ないことが存在するんだ…」
困ったような悲しそうな顔でリーシェは、リーシェの中で解っていることを教えてくれた。
リーシェは賢者の塔の魔力が此の国の隅々まで広がっていること、そして繋がっていることを教えてくれた。
「この国は乾いているけどお水には困らないでしょ? それは、この地面の下の奥深くに水の通る道が出来ていて、塔の魔力で循環…ぐるぐる回してるんだ」
フレイは初めて聞く自分の住む場所の不思議が解き明かされていくことに、胸の高鳴りを覚えた。
「この国の街中は砂漠よりは涼しくて、樹海よりは乾いてる、そして山々より温かい。何も調整しないこの国の状態は、荒れ地を十倍荒れ地にしたような環境のはずなんだ…本来、人が住めないような…」
今まで聞いたことも見たこともない内容にフレイリアルは言葉一つも出なかった。
「この国の環境が人に優しいのは、全て塔が大気や水を制御しているからなんだよ」
フレイはリーシェの話を聞いて、この国にはリーシェが必要だけどリーシェにはこの国は必要じゃないと思った。
「でもリーシェに国は必要じゃない気がする!」
思ったままを伝えた。
「うん。僕には必要ない…だけど僕の身体には必要なんだ…」
「??」
「僕も僕にとって、この国が大切であると思えてない…フレイと一緒だよ。でも、僕の身体は塔の機構に組み込まれてしまってるんだ」
リーシェは更に説明してくれた。
大賢者は、塔とも回路を開き、魔力制御弁として組み込まれていると言うことを…。
リーシェの身体を維持するためには大量の魔力を循環させておく必要があり、リーシェにとっても塔が無いと生命を維持できないと言うことだった。
塔も大賢者が居ないと機能不全を起こし、全ての機能が破壊されてしまうという一蓮托生の関係であると言うことを話してくれた。
「だから大賢者である僕が居ないと、人間が住めないような国になってしまうんだ。境界壁や王城壁の管理も大賢者と賢者の塔でやってるから、この機構が崩れたら魔物が四方から侵入し放題になっちゃうしね…」
笑い顔でおどけて見せるが、逃げ場の無い現実に縛られている状況。渦の中に術なく飲まれていき、笑うより他無いような状況…と言った感じだった。
「抜け出す方法は無いの?」
フレイはリーシェがそんな状況であることが許せなかった。
「基本的には無いのかも…でも大賢者の蓄積された情報の中に《天空の天輝石》と言うのがある。凄い魔力を含み、それぐらいの大魔力を含む魔石なら機構に組み込まれてしまってる賢者の石と入れ替える事が出来る…と言う情報も有るんだ」
リーシェは寂しそうな顔で話し、悲しそうな顔で付け足した。
「でも僕はここから動くことは出来ないから、僕の使命が終わる日までここに居るしか無いのだけどね…」
そう言いながら、その美しい顔は実際に行くことの出来ない遠い荒れ地や首都の街並みを賢者の塔の窓より、羨望を含む瞳で写していた。
「リーシェが探せないなら私が探してくる。この国に無いならどの国に行ってでも、私の一生を賭けてでもリーシェを自由にしてあげる!」
その時初めて《天空の天輝石》を追い求める決意をした。
"今日のリーシェライルとフレイリアルの秘密" が、そうして其処に大きく出来上がったのだった。
小首を傾げ宵闇色に光指す瞳を優しく細めながら、顔にかかった銀の長い髪をするりと延びた白い指で除けて耳に掛けそのままナイショの仕草で口の前に持ってくる。
そんな麗しい仕草で締められた今日の内緒話の内容。
《大賢者が塔を離れる事で起こる惨事》
酷く不穏な題材だった。
フレイが青の間に出入りするようになってから1年と5の月ほど過ぎた頃だった。
それまでの間、フレイは自分の部屋にこもってたら出来ないような事、教えてもらえないような事を此処で数え切れないぐらいリーシェとやってみた。
リーシェがしてくれる昔の話や、昔々の話、昔々のそのまた昔の話、魔石の話に魔物の話、次から次へと湧き出る数々の話に興味は尽きない。リーシェは疑問も寂しさも全てを埋めてくれた。
質問した内容に答えてくれるリーシェは、答えを教えてくれているのに時折り奇妙な事を言った。
「へぇー、僕も聞かれるまで知らなかったな」
「えっ? だってリーシェが答えたじゃない!」
「僕の中にあることを僕が全部知ってるわけないじゃないか!!」
子供の様にむくれながらリーシェは答える。
7歳ぐらいの子に対等に突っ掛かる姿は子供ながらに「しょうがないな…」と思ってしまったが、フレイリアルはリーシェライルの事が誰よりも何よりも大好きだった。
此処に来てリーシェと一緒にいると、自分の部屋周りで聞く嫌な話を全て忘れられた。
選任の儀前の予備学習として賢者の塔にある学舎に入ることが決まったときも、リーシェの近くに行きやすくなると思い嬉しかったぐらいだ。
『それなのに何でこんな…』
そう思いながら、起きた事態に義憤抱えフレイリアルはその場から全力で走り去った。
フレイリアルは近づいてくる同年代の子供が大嫌いだった。大体がからかうために近づき、見た目が違うだけで悪く言う。
根拠の薄い根拠で縛ろうとする浅はかな考えが許せなかった。
『大人も同じ…』
結局フレイリアルの鮮やかで綺麗な青葉の瞳や豊かな大地の色した髪は、均一な色を持つここの人達にとって "異質な色持つ奇異な者" としか認識してもらえなかった。それなのに学舎で集まる事で一層の違いを印象付けられ、フレイリアルは弾き出される。
攻撃用の水の魔力をぶつけられたが、フレイ自身の持つ特性で難は逃れた。
だが、その力は攻撃してきた子供達を昏倒させることになったのだ…。
学舎のある賢者の東塔から中央塔まで、フレイは走り続けた。
そして、今では儀式や謁見でもない限り、問い質される事も無く通れるようになっていた中央塔入り口を息を切らしながら走り抜ける。転移の間まで行きつくと、呼び止められる隙を与えず陣に魔力を込め転移した。
転移陣を起動し18層に移動する一瞬の間、ここに来たばかりの頃の事が思い浮かんだ。
「フレイは体の中に魔石は持ってないけど力は引き出せるはずだよ」
何度かリーシェに転移陣を使って蒼の間まで連れて来てもらい、自分でも転移出来たらなぁと思っていたときに言われた。
「えっっ?」
「だって回路が見えるよ」
「???」
リーシェは事も無げに言った。
「だって、石樹の儀の時、石を取り込めたでしょ?」
「…うん…」
「王城の結界とか通るの、すごく嫌な感じするでしょ?」
「うん」
「それは回路がしっかりフレイの中に出来上がってるからだよ。王城壁に埋められている魔石と魔石で作られる結界が回路と干渉して、通り過ぎるとき嫌な感じが出るんだ。回路がしっかりしてる者ほど、あそこはあまり通りたくないと思うとはずだよ」
相変わらず訳がわからないと言った顔をしているとリーシェは優しくフレイの頭に手を置き、柔らかな髪を愛しそうに微笑みながら撫でてくれた。
「取り込んだ魔力がそこにあるのは当たり前の事だよ? どれぐらいの強さの魔力を扱えるかはまだ判らないから、少しずつ僕と訓練していこうね…それと、これは皆には内緒にしておいた方が良いから二人の秘密だよ」
笑顔でふざけながら楽しそうに、ひ・み・つ、と指を左右に動かすリーシェの笑みは相変わらず花が咲くように美しかった。
そんなことを思い出す間に18層に着いた。
其処からも、ひたすら走り最上階を目指す。
階段を一歩ずつ駆け抜けていくと周りの魔石の鋭くも清々しい力が降り注ぎ、毎回の事だが身体の中に溜まった澱が全てが洗い流されて行く。最上階にたどり着く頃に怒りは落ちつき、その分じんわりと悲しみがやって来た。
青の間の扉を開けるとリーシェはいつもの様にゆったりとした動きでこちらを振り返り、優雅に微笑みフレイを迎えてくれた。
「いらっしゃいフレイ。学舎での勉強は終わったの?」
包み込むように微笑んでくれるリーシェに辿り着き、フレイは今まで我慢していたもの全てが溢れてくるような気持ちになった。
ぽろぽろと瞳からこぼれ落ちる涙は止めどなく流れていった。
立ち尽くしたまま無言で涙を溢すフレイに近づき、リーシェは何も言わずに抱き締めてくれていた。
暫しの時間が流れた後、フレイがまだ涙を流したまま呟く。
「リーシェ、一緒にここから出ていこうよ」
「ねぇ、一緒に行こう!」
少しずつ大きくなる声で何度も繰り返し訴え、最後は泣き叫びながら言う。
「お願い、リーシェ。一緒にこの国から出ていこう!!!」
リーシェはその言葉にゆっくりと静かに答えた。
「僕はこの塔から離れたら生きて行けないんだ…」
フレイはその返事を聞いて固まり、涙でぐちゃぐちゃの目に疑問を浮かべながらリーシェライルを見つめた。
「ここから離れたら生命を維持出来ないんだよ」
もう一度はっきりした言葉でリーシェは答えたのだった。
《大賢者》
先代大賢者より体内魔石を継承し、その魔石と回路を繋ぐことであらゆる魔石から最大限の力を引き出すことができるようになる。その力は賢者の塔を制御する力として利用され、過去の大賢者が蓄えた知識を共有することもできるようになる。
その他解明されてない力もあると推測される。
ヴェステ王立魔石研究所
リーシェは泣いていたフレイが泣きやむのを確認してから、手元にあったヴェステの研究所が発行した研究論文が載った厚い本をパタリと開き見せてくれた。
「大賢者って公式にはこんな感じの事しか知られていないけど、出来る事以外にも出来ないことが存在するんだ…」
困ったような悲しそうな顔でリーシェは、リーシェの中で解っていることを教えてくれた。
リーシェは賢者の塔の魔力が此の国の隅々まで広がっていること、そして繋がっていることを教えてくれた。
「この国は乾いているけどお水には困らないでしょ? それは、この地面の下の奥深くに水の通る道が出来ていて、塔の魔力で循環…ぐるぐる回してるんだ」
フレイは初めて聞く自分の住む場所の不思議が解き明かされていくことに、胸の高鳴りを覚えた。
「この国の街中は砂漠よりは涼しくて、樹海よりは乾いてる、そして山々より温かい。何も調整しないこの国の状態は、荒れ地を十倍荒れ地にしたような環境のはずなんだ…本来、人が住めないような…」
今まで聞いたことも見たこともない内容にフレイリアルは言葉一つも出なかった。
「この国の環境が人に優しいのは、全て塔が大気や水を制御しているからなんだよ」
フレイはリーシェの話を聞いて、この国にはリーシェが必要だけどリーシェにはこの国は必要じゃないと思った。
「でもリーシェに国は必要じゃない気がする!」
思ったままを伝えた。
「うん。僕には必要ない…だけど僕の身体には必要なんだ…」
「??」
「僕も僕にとって、この国が大切であると思えてない…フレイと一緒だよ。でも、僕の身体は塔の機構に組み込まれてしまってるんだ」
リーシェは更に説明してくれた。
大賢者は、塔とも回路を開き、魔力制御弁として組み込まれていると言うことを…。
リーシェの身体を維持するためには大量の魔力を循環させておく必要があり、リーシェにとっても塔が無いと生命を維持できないと言うことだった。
塔も大賢者が居ないと機能不全を起こし、全ての機能が破壊されてしまうという一蓮托生の関係であると言うことを話してくれた。
「だから大賢者である僕が居ないと、人間が住めないような国になってしまうんだ。境界壁や王城壁の管理も大賢者と賢者の塔でやってるから、この機構が崩れたら魔物が四方から侵入し放題になっちゃうしね…」
笑い顔でおどけて見せるが、逃げ場の無い現実に縛られている状況。渦の中に術なく飲まれていき、笑うより他無いような状況…と言った感じだった。
「抜け出す方法は無いの?」
フレイはリーシェがそんな状況であることが許せなかった。
「基本的には無いのかも…でも大賢者の蓄積された情報の中に《天空の天輝石》と言うのがある。凄い魔力を含み、それぐらいの大魔力を含む魔石なら機構に組み込まれてしまってる賢者の石と入れ替える事が出来る…と言う情報も有るんだ」
リーシェは寂しそうな顔で話し、悲しそうな顔で付け足した。
「でも僕はここから動くことは出来ないから、僕の使命が終わる日までここに居るしか無いのだけどね…」
そう言いながら、その美しい顔は実際に行くことの出来ない遠い荒れ地や首都の街並みを賢者の塔の窓より、羨望を含む瞳で写していた。
「リーシェが探せないなら私が探してくる。この国に無いならどの国に行ってでも、私の一生を賭けてでもリーシェを自由にしてあげる!」
その時初めて《天空の天輝石》を追い求める決意をした。
"今日のリーシェライルとフレイリアルの秘密" が、そうして其処に大きく出来上がったのだった。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
これ以上なにもするな!~ポンコツ魔女な婚約者のせいで酷い目に遭う男の話~
ROSE
ファンタジー
頼むからこれ以上なにもしないでくれ……。
僕には不相応な程、見目麗しい婚約者がいる。家柄だって釣り合わない。けれども彼女は過剰なくらい僕を愛してくれていて、押し切られる形で婚約してしまった。
が、彼女は魔女だった。魔法の腕は悪くないはずなのに、抜けてるなんてもんじゃない。
今日も彼女は無自覚に魔法を失敗していくのだ。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-
一星
ファンタジー
至って普通のサラリーマン、松平善は車に跳ねられ死んでしまう。気が付くとそこはダンジョンの中。しかも体は子供になっている!? スキル? ステータス? なんだそれ。ゲームの様な仕組みがある異世界で生き返ったは良いが、こんな状況むごいよ神様。
ダンジョン攻略をしたり、ゴブリンたちを支配したり、戦争に参加したり、鳩を愛でたりする物語です。
基本ゆったり進行で話が進みます。
四章後半ごろから主人公無双が多くなり、その後は人間では最強になります。
【大賢者の相棒?】世界の為に尽くした大賢者は転生したらただの『アイアンソード』で草生えたのでとりあえず没落貴族令嬢を英雄にする事に決めました
夕姫
ファンタジー
【草……なんか神様っていないらしいわよ?】
【ざっくりしたあらすじ】
《草……こんなにも世界のために尽くしたのに!しかも私は大賢者よ?剣なんか使ったことないわよ!せめて世界最強の杖とかに転生させなさいよ。まぁいいわ、私を買ってくれたこの貴族令嬢を世界最強の英雄にしてみせるから!》
【本当のあらすじ】
かつて魔物の恐怖から世界を救った英雄の1人『大賢者』と呼ばれるアイリス=フォン=アスタータは自分の知識や技能を教え、世界のために尽くしついに天寿を全うする。
次に生まれ変わるときは人間ではなく、魔法の探求心から精霊になりたいと願っていた。
そして1000年後。しかし、その願いは叶わず、彼女は生まれ変わることになる、ただの『アイアンソード』として。
そんなある日、魔物の戦乱で没落した貴族令嬢のサーシャ=グレイスに購入してもらうことになる。サーシャは戦闘経験0。魔法も使ったことがない、ただ生き抜くために全財産でアイアンソードを買ったのだった。
そしてアイリスは覚悟を決める。自分が『アイアンソード』に転生した意味があるのならそれを残したい、私がこの子を強くする。いや世界最強にして見せると。
魔法の知識は豊富にあるが剣術の経験0の大賢者(アイアンソード)とそもそもの戦闘経験0の没落貴族令嬢が世界を救い、生き抜くために奮闘する物語。
守護者契約~自由な大賢者達
3・T・Orion
ファンタジー
守護者契約の必要性は消えた。
願い叶えるために動き始めた少女が、近くに居たオッサンを巻き込み結んだ守護者契約。
時は流れ…守護していた少女は大賢者となり、オッサンも別の地に新たなる大きな立場を得る。
変化した状況は、少女とオッサンの2人に…全てを見直す決断を促した。
しかも2人の守護者と言う繋がりを利用できると感じた者達が、様々な策謀巡らし始める。
更に…ごく身近で過剰に守護する者が、1つの願うような欲望を抱き始める。
色々な場所で各々の思惑が蠢く。
国王に王女に大賢者、立場を持つことになった力あるオッサンに…力を得た立場ある少女。
国と国…人と人…大賢者と大賢者。
目指す場所へ向け、進んでいく。
※魔輝石探索譚の外伝です。魔心を持つ大賢者の周りの子~から繋がる流れになります。
※小説家になろうさんで魔輝石探索譚のおまけ話として載せてたモノに若干加筆したものです。長めだったので、別話として立ち上げました。
※此のおまけ話は、此処だけのおまけ話です。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
目の前で不細工だと王子に笑われ婚約破棄されました。余りに腹が立ったのでその場で王子を殴ったら、それ以来王子に復縁を迫られて困っています
榊与一
恋愛
ある日侯爵令嬢カルボ・ナーラは、顔も見た事も無い第一王子ペペロン・チーノの婚約者に指名される。所謂政略結婚だ。
そして運命のあの日。
初顔合わせの日に目の前で王子にブス呼ばわりされ、婚約破棄を言い渡された。
余りのショックにパニックになった私は思わず王子の顔面にグーパン。
何故か王子はその一撃にいたく感動し、破棄の事は忘れて私に是非結婚して欲しいと迫って来る様になる。
打ち所が悪くておかしくなったのか?
それとも何かの陰謀?
はたまた天性のドMなのか?
これはグーパンから始まる恋物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる