異世界英雄バトルナイト

後島大宗

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第1部:赤と黒の騎士

12.Act03:迂闊-正体バレは二度起きる-③

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 朝の営業を終えた後、ティアラはアルフとロンドに誘われて
冒険者組合に来ていた。
二人曰く、毎日行っている日課の一つだという。
組合に着いて直ぐ、二人は討伐関係を扱う依頼掲示板へと向かった。
そして掲示板の前で何やら話をしながら、それぞれの依頼内容を
確認し、アルフが「これにするか」と一枚の依頼書を剥がし取った。
そのまま依頼受領の手続きへ向かうが、途中で採取関係の
掲示板にも寄り、そこからも依頼書を一枚取る。

 受付で受領手続きをしながら職員と世間話をしている彼を
眺めていると、一緒に待っていたロンドが話し掛けてきた。

「どうしたんだい?お店を出てからずっと浮かない顔をしているけど」

「えっ・・・何で分かるんですか?」

杖を小脇に挟みつつ、両手を顔に当てる仕草をするティアラを見て
ロンドは思わず苦笑いをしてしまう。

「なんとなくだけどね。
 それになんだか放っておけなくてさ」

そう言い終えるとロンドは、後輩が今の心境をうち明けるのを待った。
ティアラも一呼吸ついてから今抱えている思いを紡いでいく。

「私、アルフさんのことをずっと不思議に思うんです。
 どうして自分のやってきた事を目の前で否定されても
 ああいう風に平気でいられるんだろうって・・・」

ガルシアの主張を思い返しながら少女は語る。
今でもあの場面を振り返るごとに、あの時生じた
複雑な感情が蘇ってくる。
ティアラの疑問に答えるため、少し言葉を選んでから
ロンドが口を開く。

「そうだなぁー・・・ひょっとしたらあいつは
 かもしれないな」

「割り切る・・・?」

ティアラからの視線を受けながらロンドは話を続ける。

「僕とつるむ前から、あいつはたった一人で
 英雄として活動していたんだ。
 あの頃から既に何処か達観していた様に見えてね。多分、
 その時から肯定・否定の声を散々耳にしてきたんじゃないかな」

「そんな・・・」

「これはあくまで僕の憶測だよ?
 今でこそ補助役を請け負っているけど、流石に
 あいつの心理状態までは把握出来るワケじゃあないからね」

ロンドは不安そうな表情になるティアラの方を向き、苦笑いを
浮かべながら一旦話を区切った。

「確かに、我らがバトルナイトを疎ましく思う奴は
 少なからず居るのが事実だ。
 ---けれども、今のあいつは
 君も何か思うことがあるから、今ここにいるんじゃないかい?」

 そう言われ、ティアラは昨日の事を思い出す。
別れ際に哀愁漂った雰囲気を彼の背中から感じられたあの時、
彼女は何とも言い表せない気持ちに突き動かされた。
そして気付けば閉館間際の冒険者組合へ駆け込み、
雷鳥の欠伸亭の求人に申し込んだ。
衝動に駆られた末の行動だったが、彼女の中に後悔はなかった。

「------はい!」

ロンドの問いかけに対し、少し間を開けてから
ティアラは力強く返事をした。
迷いを感じさせない、その晴れやかな笑顔を見たロンドは
「そうか!」と返して嬉しさを滲ませのだった。


「おーい、手続き終わったぞ。
 ・・・って二人ともどうしたんだ?」

 受領印が押された依頼書二枚を持ってアルフが戻ってきた。
少し離れている間に打ち解けた雰囲気になった二人を見て、
アルフは疑問を投げかける。

「はっはっは、何でもないさ。ねー?」

「ねー♪」

顔を見合わせてやり取りする二人に戸惑うアルフ。
仲が良いのは悪くないが、何だか置いてけぼりになった気分だ。

「それより途中でもう一枚、依頼書を取ったよな?
 ちょっと見せてもらえるかい?」

「おう、今日やる依頼のついでに丁度良いかと思ってな・・・」

ロンドはどれどれとメガネをかけ直し、もう一枚の
依頼内容を確認して納得した表情をする。
そしてニヤリと笑ってから可愛い後輩の方を向いてきた。

「喜べティアラちゃん!
 今日は特別に僕達先輩が勉強を教えてあげよう!」

「・・・・・・はい?」

突然の勉強会開催に、ティアラは困惑気味に返事をしながら
首を傾げた。




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