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第1部:赤と黒の騎士
09.Act02.5:幕間その01-とある騎士団長の現場視察-
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現場に何とも言えない空気が流れる。
そんな空気の中、騎士団員の一人が挙手をしながら声を上げた。
「あの、この現場で保護された少女って子・・・まだ詰め所に
いるんですよね?」
「うん?あぁ、相当疲弊してそうだったから
落ち着くまで休ませてはいるんだが・・・」
「でしたらその子からもっと詳しく事情を聞き出せませんか?
絶対我々が知り得たい情報をいくつも持っていますよ」
「えぇ?いや、そうしたいのは山々ですがねぇ・・・」
騎士団員からの提案に対し、班長は難色を示す。
当事者の一人である件の少女に休息を促したのは
他でもない班長本人なのである。
自分で休むよう言った手前、無理を言って込み入った話を
引き出すことに乗り気ではないのだ。
「よさないか。聞くところによるとその子はまだ
成人前だそうじゃないか」
二人のやりとりに騎士団長が割って入り、団員をたしなめる。
「し、しかし騎士団長殿」
「我々の役目は国と人々を守ること。
騒動に巻き込まれて心に傷を負った少女に無理強いをするのは
我らトラトス騎士団の理念に反する」
「・・・申し訳ありません、軽率でした」
「気にするな、その逸る気持ちは私にも分かる」
落ち込む団員に慰めの言葉を掛け、騎士団長は
班長の方へ向き直った。
「すまないが班長、その剣はそちらの方で保管しておいてくれ」
「この件はもうよろしいのですか?」
「ああ、件の少女への聴取はまたの機会へ回しておこう。
その方がこちらも話を持ち掛けやすい」
そう言って騎士団長は現場捜査の切り上げを指示し、撤収作業が
始まる中で更に班長と話を進めていく。
「では班長、こちらも周囲で聞き込みをしてから城へ戻る。
情報がまとまり次第、そちらへ出向いて情報交換と
今後の対策を話し合っていこう」
「分かりました。ではそのように・・・・・・。
・・・ボルトホイル騎士団長殿」
「うん?」
「貴方からして、赤と黒の騎士はどう見ますか?」
真剣な眼差しで、班長がトラトス騎士団団長ボルトホイルに問いかける。
「私から見た赤と黒の騎士、か。
正直に言うと未だ相見えたことがないから何とも言えん。
ただ・・・」
「ただ?」
「彼はきっと、きっと私が思い描いたような人柄だと思っている」
いつの間にか日も傾き、太陽がゆっくり西へと沈んでいく。
そんな沈みゆく太陽を眺めながら、ボルトホイルはそう力強く答えた。
彼の瞳から溢れんばかりの希望を感じ取られたと、後に班長は語る。
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