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番外編
フォリア・エヴィル(本編24~27話)6
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女神は、宣言通り深夜に動いた。フォリアはお留守番である。と、いうのも、女神が連れて行けない、と言ったからだ。ついていく気満々だったフォリアは、雷が落ちたような衝撃を受け、しばらく固まってしまった。詳しく聞けば、フォリアがついていくなら女神がフォリアを担がなければいけないような、そんな特殊な移動手段で。
(水を蹴って空中を駆けるなんて、そんな手段をとるとは思わないだろう……っ。残念だ、ひっじょーに残念だ……。四六時中一緒にいたいが、こればかりはな)
フォリアもそれは駄目だと理解し、泣く泣く諦める。せめて見送りだけでも、とお願いすれば、それはいいよと言ってくれたので、見送りはしっかりしようと心に決めた。
「行くのですね」
「つれてかないからね」
「うぐ……はい」
(くっ、念を押されてしまった。……まあ、こっそりついて行く手段もないのだが)
しゅん、としたフォリアだが、ここで時間をとるわけにはいかないと、頭を切り替える。
「ミズキ様、行ってらっしゃいませ。お気をつけて」
「うん、行ってきます、フォリア」
女神の部屋にあるテラスから空へと躍り出ると、すぐさま暗闇に消えていった。主のいなくなった部屋にいるのもなんなので、自室に移動する。
(ミズキ様と魔力が繋がっていて、本当によかった。側にはいないが、どこにいるかわかるのはいいな)
ベッドに腰掛け、魔力の繋がっている先を追った。もはやストーカー。
フォリアは、女神が直ぐ帰ってくるだろうと思っていた。それなのに、全く帰ってこない。
(な、なぜですか、ミズキ様……!直ぐ帰ってくると思ったのにっ。いやまて、直ぐ帰ってくるとは仰らなかったな……。くっ、ミズキ様の考えが、俺にはまだわからない……)
それどころか、この王宮からも遠ざかっている気配がする。いや、確実に遠ざかっていた。
(王妃様のおられる場所までならよかったが……。遠ざかっていく感覚が、こうも耐えがたいとは……。どの方角かはわかるが、どこにいるかわからない。……早くお戻りいただけないだろうか……)
でないと、追いかけていきそうだった。主君が側にないと、こうも落ち着かなくなるなんて思いもしなかった。フォリアは、窓とベッドを行ったり来たりと、本当に落ち着きがなく。その様子を上で見ていた影は、飼い主の帰りが遅いのをうろうろして待つペットのようだった、と語る。
結局、女神が帰ってきたのは夜明け前。いらない人を抱えて、埃まみれで帰ってきた。聞けば、呪い返しした先を追っていたらしく、捕まえてきたのは、王妃に呪いをかけていた呪術師本人で。証拠も持ち帰ってきたらしい。影が女神の命を受けて、人を牢屋に連れて行く。女神は風呂場で埃を落としてきた後、てっきり寝るかと思えば、朝まで起きていると言った。フォリアも一徹ぐらいは慣れているので付き合うことに。
(確か……王妃様がお倒れになられたのは半年前あたりだったから……。今まで手がかりすらつかめなかったものだろうに、ミズキ様にかかると一瞬だ。……いや、恐らく呪いだったから、わかったことだろうな。はあ、さすがミズキ様だが、次からは絶対に連れて行ってもらわねば)
置いて行かれるのは、切なく、寂しい。待っている間の時間が、長いこと長いこと。待つというのがこんなに苦痛なのだと、フォリアはこの時初めて知った。
書類を整理していたら、出るわ出るわ、過去に呪いを依頼した貴族たちの証拠が。中には未解決なままだった事件の書類もある。これは一気に捜査が進むだろうな、一段と忙しくなるだろうな、とすこし騎士団に同情したフォリアだった。侍女が起こしに来る時間が近くなったので、一旦フォリアは自室に戻る。朝食をとった後、また女神の元に戻った。
影から王妃が復活したこと、まだ極秘で犯人が捕まるまでは臥していることにする、という情報がもたらされた。
ここから、女神はまた忙しくなる。まず、シリウスに会いに行き、証拠となる書類を全て置いてきた。そこから、第三騎士団に向かい、更に、呪術師がいたという場所まで案内することになった。そこでも色々あったが、思ったことは二つ。
(男の出る幕がなさ過ぎでは?あと、ミズキ様の神々しさよ)
前半は、女神の身長よりも高く、横幅も倍以上ある棚(空っぽ)を一人で動かしたこと。これは水の異能を使っているので納得はできるが、男としては頼って欲しいとも思う。
後半は、女神が宝石に優しく触れたときに、ふわりと宝石が光ったこと。少し薄暗い地下だったため余計だが、宝石の光に反射して女神の瞳も少し煌めいたように思えた。瞬きの合間に、それは収まってしまったが。
(ミズキ様以上に、これほどまで宝石に詳しい方はいるのだろうか。恐らく、その辺の宝石商人でさえ、ミズキ様の知識には敵わないのでは、と思わされる。それに、宝石から想いを読み取るなど、ミズキ様以外には無理だろう。鑑定でもさすがにそこまで万能ではない)
女神の口から、流れ出るように宝石のことが語られる。宝石の種類、パワーストーンとしての役割、この宝石がもたらしていた効果。だからこそ王妃は半年間も身体が保っていた、と締めくくられ、思わず拍手しそうになったのは内緒だ。更に、宝石が天然石であれば、自由に加工出来ると言う。さすが女神様、と言うほかなかった。
そして、また第三騎士団にとんぼ返りすれば、シリウスより“帰還されしだいお休みいただくように”との伝言が。当然だな、と思ったフォリアであった。
(水を蹴って空中を駆けるなんて、そんな手段をとるとは思わないだろう……っ。残念だ、ひっじょーに残念だ……。四六時中一緒にいたいが、こればかりはな)
フォリアもそれは駄目だと理解し、泣く泣く諦める。せめて見送りだけでも、とお願いすれば、それはいいよと言ってくれたので、見送りはしっかりしようと心に決めた。
「行くのですね」
「つれてかないからね」
「うぐ……はい」
(くっ、念を押されてしまった。……まあ、こっそりついて行く手段もないのだが)
しゅん、としたフォリアだが、ここで時間をとるわけにはいかないと、頭を切り替える。
「ミズキ様、行ってらっしゃいませ。お気をつけて」
「うん、行ってきます、フォリア」
女神の部屋にあるテラスから空へと躍り出ると、すぐさま暗闇に消えていった。主のいなくなった部屋にいるのもなんなので、自室に移動する。
(ミズキ様と魔力が繋がっていて、本当によかった。側にはいないが、どこにいるかわかるのはいいな)
ベッドに腰掛け、魔力の繋がっている先を追った。もはやストーカー。
フォリアは、女神が直ぐ帰ってくるだろうと思っていた。それなのに、全く帰ってこない。
(な、なぜですか、ミズキ様……!直ぐ帰ってくると思ったのにっ。いやまて、直ぐ帰ってくるとは仰らなかったな……。くっ、ミズキ様の考えが、俺にはまだわからない……)
それどころか、この王宮からも遠ざかっている気配がする。いや、確実に遠ざかっていた。
(王妃様のおられる場所までならよかったが……。遠ざかっていく感覚が、こうも耐えがたいとは……。どの方角かはわかるが、どこにいるかわからない。……早くお戻りいただけないだろうか……)
でないと、追いかけていきそうだった。主君が側にないと、こうも落ち着かなくなるなんて思いもしなかった。フォリアは、窓とベッドを行ったり来たりと、本当に落ち着きがなく。その様子を上で見ていた影は、飼い主の帰りが遅いのをうろうろして待つペットのようだった、と語る。
結局、女神が帰ってきたのは夜明け前。いらない人を抱えて、埃まみれで帰ってきた。聞けば、呪い返しした先を追っていたらしく、捕まえてきたのは、王妃に呪いをかけていた呪術師本人で。証拠も持ち帰ってきたらしい。影が女神の命を受けて、人を牢屋に連れて行く。女神は風呂場で埃を落としてきた後、てっきり寝るかと思えば、朝まで起きていると言った。フォリアも一徹ぐらいは慣れているので付き合うことに。
(確か……王妃様がお倒れになられたのは半年前あたりだったから……。今まで手がかりすらつかめなかったものだろうに、ミズキ様にかかると一瞬だ。……いや、恐らく呪いだったから、わかったことだろうな。はあ、さすがミズキ様だが、次からは絶対に連れて行ってもらわねば)
置いて行かれるのは、切なく、寂しい。待っている間の時間が、長いこと長いこと。待つというのがこんなに苦痛なのだと、フォリアはこの時初めて知った。
書類を整理していたら、出るわ出るわ、過去に呪いを依頼した貴族たちの証拠が。中には未解決なままだった事件の書類もある。これは一気に捜査が進むだろうな、一段と忙しくなるだろうな、とすこし騎士団に同情したフォリアだった。侍女が起こしに来る時間が近くなったので、一旦フォリアは自室に戻る。朝食をとった後、また女神の元に戻った。
影から王妃が復活したこと、まだ極秘で犯人が捕まるまでは臥していることにする、という情報がもたらされた。
ここから、女神はまた忙しくなる。まず、シリウスに会いに行き、証拠となる書類を全て置いてきた。そこから、第三騎士団に向かい、更に、呪術師がいたという場所まで案内することになった。そこでも色々あったが、思ったことは二つ。
(男の出る幕がなさ過ぎでは?あと、ミズキ様の神々しさよ)
前半は、女神の身長よりも高く、横幅も倍以上ある棚(空っぽ)を一人で動かしたこと。これは水の異能を使っているので納得はできるが、男としては頼って欲しいとも思う。
後半は、女神が宝石に優しく触れたときに、ふわりと宝石が光ったこと。少し薄暗い地下だったため余計だが、宝石の光に反射して女神の瞳も少し煌めいたように思えた。瞬きの合間に、それは収まってしまったが。
(ミズキ様以上に、これほどまで宝石に詳しい方はいるのだろうか。恐らく、その辺の宝石商人でさえ、ミズキ様の知識には敵わないのでは、と思わされる。それに、宝石から想いを読み取るなど、ミズキ様以外には無理だろう。鑑定でもさすがにそこまで万能ではない)
女神の口から、流れ出るように宝石のことが語られる。宝石の種類、パワーストーンとしての役割、この宝石がもたらしていた効果。だからこそ王妃は半年間も身体が保っていた、と締めくくられ、思わず拍手しそうになったのは内緒だ。更に、宝石が天然石であれば、自由に加工出来ると言う。さすが女神様、と言うほかなかった。
そして、また第三騎士団にとんぼ返りすれば、シリウスより“帰還されしだいお休みいただくように”との伝言が。当然だな、と思ったフォリアであった。
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