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第1章 死神への道
15話-ドタバタ
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「誰の許可でここにきたんだい?僕、気になるなー」
フードを深く被った者が蔦風を押し倒す。首もとに短刀を押し当てながら子どものように問いかけてくる。
「わっ!おじさん」
とっさにおじさんの方に目を向けると、向こうは向こうでお取り込み中のようだ。
おじさんの背後をとり、同じように首もとに短刀・・・・・・ではなく、長い爪を押し当てている。
「天使の刺客か?大歓迎だぜ。何者だ。答えろ」
「・・・・・・はぁ。元気そうだなあ!エイク!」
おじさんは蔦風に刃を向けている者に向かって叫ぶ。
「え?その声・・・・・・師匠?」
短刀を首もとから離し、フードを取りながらおじさんの方に目を向ける。
左に流れる前髪と腰まであろう長い髪。瞳は黒く、少年のような顔立ちだ。
「わあ!師匠だ!師匠!元気にしてた?久しぶりだ!師匠!」
蔦風の腹の上に座ったままテンションが上がり、ぴょんぴょん跳ねる。そのたびにグフッと言う蔦風。
「アァ?んだよ、てめえコイツしってんのかよ」
爪を押し当てていた者も得物を下ろす。すると、
「もーコラーッ!勝手に飛び出すんじゃないよ!」
路地裏の隙間から走って出てきたのは、頬に黒い五本の痣をもつ男。その肩には先程の式神の鳥がとまっている。
「式神が来たことも確認せずに飛んでっちゃうんだもん、いい加減にしてよね?この式神はウチの姉さんの!少しは周りを見なさい!」
「ごめんごめん紬、今度は気を付けるさ!」
「ケッ!その『姉さん』の式神がノロマなんだよ」
「反省しなさい」
「るせーなぁ」
「あ、コラ、待ちなさい」
爪の少年はそそくさと路地裏に消えていった。長髪の少年は相も変わらず蔦風の腹の上。痣の青年は爪の少年の後を追って路地裏に入った。
「おい、エイク、どいてやれ」
おじさんが言ってようやく、そうだった!と言いながら立ち上がった。
「師匠!師匠!どうしてここに来たの?なんかあった?」
目をキラキラさせながらおじさんに話しかける。
「あー、今日はコイツを紹介しに来たんだ」
親指を蔦風の方へ向ける。まだようやく起き上がったばかりで、イテテと後頭部をさすっている。
「あっはじめまして、蔦風と言います。おじさんの元で死神になるために訓練している元人間です」
カンペでも見たようにすらすら挨拶をする。
「元人間・・・・・・ああ!新人って君のことなんだ!楽しみだったのさ!よろしくだよ!僕はエイク。君と同じように師匠の元で死神に育てあげられた元人間さ!」
ここに来て、蔦風と同じ境遇の者が見つかった。
「元人間・・・・・・じゃあエイクも『夢喰いの獏』にやられたの?」
「ん?まー細かいことは後で!路地裏に行こう!みんな待ってるよ?さ!師匠も」
アゴに人差し指を当てて一瞬考えたようだが、すぐに話を切り替えた。みんな、とは。
「いや、俺はここで待つ。蔦風だけ連れていってくれ」
「ふーん。わかった!行こう蔦風!案内するよ!」
グイグイ蔦風の腕を引っ張り、路地裏の奥へ進む。
「えっちょっと、おじさん・・・・・・」
「達者でなー」
棒読みじゃん。
少し歩くと行き止まりになった。エイクが親指と人差し指で輪を作り、シャボン玉を吹くように壁に向かってフッと吹いた。一瞬壁が波打ち、エイクが右手を押し当てる。すると、右手が壁に飲み込まれた。
「さ、行くよ蔦風!臣の元へ・・・・・・!」
不適な笑みを浮かべ、蔦風の方を見る。
「臣・・・・・」
この壁の向こうに、臣がいるのか。
二人は壁に飲み込まれた。
フードを深く被った者が蔦風を押し倒す。首もとに短刀を押し当てながら子どものように問いかけてくる。
「わっ!おじさん」
とっさにおじさんの方に目を向けると、向こうは向こうでお取り込み中のようだ。
おじさんの背後をとり、同じように首もとに短刀・・・・・・ではなく、長い爪を押し当てている。
「天使の刺客か?大歓迎だぜ。何者だ。答えろ」
「・・・・・・はぁ。元気そうだなあ!エイク!」
おじさんは蔦風に刃を向けている者に向かって叫ぶ。
「え?その声・・・・・・師匠?」
短刀を首もとから離し、フードを取りながらおじさんの方に目を向ける。
左に流れる前髪と腰まであろう長い髪。瞳は黒く、少年のような顔立ちだ。
「わあ!師匠だ!師匠!元気にしてた?久しぶりだ!師匠!」
蔦風の腹の上に座ったままテンションが上がり、ぴょんぴょん跳ねる。そのたびにグフッと言う蔦風。
「アァ?んだよ、てめえコイツしってんのかよ」
爪を押し当てていた者も得物を下ろす。すると、
「もーコラーッ!勝手に飛び出すんじゃないよ!」
路地裏の隙間から走って出てきたのは、頬に黒い五本の痣をもつ男。その肩には先程の式神の鳥がとまっている。
「式神が来たことも確認せずに飛んでっちゃうんだもん、いい加減にしてよね?この式神はウチの姉さんの!少しは周りを見なさい!」
「ごめんごめん紬、今度は気を付けるさ!」
「ケッ!その『姉さん』の式神がノロマなんだよ」
「反省しなさい」
「るせーなぁ」
「あ、コラ、待ちなさい」
爪の少年はそそくさと路地裏に消えていった。長髪の少年は相も変わらず蔦風の腹の上。痣の青年は爪の少年の後を追って路地裏に入った。
「おい、エイク、どいてやれ」
おじさんが言ってようやく、そうだった!と言いながら立ち上がった。
「師匠!師匠!どうしてここに来たの?なんかあった?」
目をキラキラさせながらおじさんに話しかける。
「あー、今日はコイツを紹介しに来たんだ」
親指を蔦風の方へ向ける。まだようやく起き上がったばかりで、イテテと後頭部をさすっている。
「あっはじめまして、蔦風と言います。おじさんの元で死神になるために訓練している元人間です」
カンペでも見たようにすらすら挨拶をする。
「元人間・・・・・・ああ!新人って君のことなんだ!楽しみだったのさ!よろしくだよ!僕はエイク。君と同じように師匠の元で死神に育てあげられた元人間さ!」
ここに来て、蔦風と同じ境遇の者が見つかった。
「元人間・・・・・・じゃあエイクも『夢喰いの獏』にやられたの?」
「ん?まー細かいことは後で!路地裏に行こう!みんな待ってるよ?さ!師匠も」
アゴに人差し指を当てて一瞬考えたようだが、すぐに話を切り替えた。みんな、とは。
「いや、俺はここで待つ。蔦風だけ連れていってくれ」
「ふーん。わかった!行こう蔦風!案内するよ!」
グイグイ蔦風の腕を引っ張り、路地裏の奥へ進む。
「えっちょっと、おじさん・・・・・・」
「達者でなー」
棒読みじゃん。
少し歩くと行き止まりになった。エイクが親指と人差し指で輪を作り、シャボン玉を吹くように壁に向かってフッと吹いた。一瞬壁が波打ち、エイクが右手を押し当てる。すると、右手が壁に飲み込まれた。
「さ、行くよ蔦風!臣の元へ・・・・・・!」
不適な笑みを浮かべ、蔦風の方を見る。
「臣・・・・・」
この壁の向こうに、臣がいるのか。
二人は壁に飲み込まれた。
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