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皇太子アルフレッド編
復讐
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(・・・シャーロット、本当に立派になったな)
舞踏会で母のドレスを着たシャーロットを見て、私は思わず涙が出そうになった。母にそっくりなシャーロット。そんなシャーロットを見ていると、幼い頃に母と過ごした大切な思い出が頭の中に流れてきた。
私は溢れそうになる涙を堪えるのに必死だった。
そして、彼女は華麗にプリシラとキャサリンを断罪してみせた。
それにより、プリシラとキャサリンの名誉は地に落ちた。あの二人を崇拝していた皇宮の使用人たちの顔を見るのが楽しみだ。私はもちろんプリシラとキャサリンだけではなくアイツらにも罰を与えるつもりだった。
本当は今すぐにでもシャーロットを抱き締めて「お疲れ様」と言ってあげたいところだが、今はそんなことをしている場合ではなかった。
私は舞踏会が終わってすぐ地下牢に閉じ込められているプリシラとキャサリンの元へと向かった。
二人は地下牢へ訪れた私を見るなり、何を勘違いしたのか目をキラキラと輝かせた。
「お兄様!助けに来てくださったんですね!やっぱり舞踏会で見せたあれはシャーロットを欺くための演技だったんだわ!」
「早くここから出してちょうだい!私は無実よ!」
一体どこからその自信が来るのか。我先にと助けを乞う姿が醜くて反吐が出そうだ。
私はプリシラとキャサリンをそんな夢から目覚めさせるために口を開いた。
「――私はお前たちを助けに来たわけではない」
「・・・・へ?」
「え、何?」
初めて見せる私の冷たい態度に驚いたのか、二人は間抜けな声を出した。
「もう一度だけ言うからよく聞け。私はお前たちを助けにここへ来たわけではない」
「「・・・」」
それでもまだ信じられないのか、二人は驚いたような顔で私を見つめている。
「お・・・お兄様・・・お前たちって・・・」
「な、何を言っているのよ、アル・・・」
いつもと違う私の様子に、二人は完全に狼狽えている。その姿を見た私はニヤリと口の端を上げた。
(・・・やっとだ、やっと本性を出せる)
プリシラとキャサリンがこのような反応になるのも無理はないだろう。私はずっと二人を騙すために自分を偽り続けてきたのだから。だが、それももう終わるのだと思うと何かから解き放たれたような気分になった。
「わ、私たちを助けに来てくれたんじゃないの・・・?」
「ねえ、ちょっと。何とか言いなさいよ・・・!」
縋りつくように私を見つめる二人に、私は絶対零度の視線を向けた。
「――本当に愚かだな」
「・・・ッ!?」
「・・・ウソ」
自分が置かれている状況が未だに理解出来ていない愚かな二人に、現実というものを突き付けてやろう。
「私がここに来たのは、お前たち二人に言いたいことがあったからだ」
「い、言いたいこと・・・?」
「な、何を言うつもりなのよ・・・」
私はそこで二人が入れられている牢屋に近付いて、そっと顔を寄せた。
「――皇帝に毒を盛って殺したのは私だ」
「「・・・・・・・・・・・え?」」
そして、見張りの兵士に聞き取れないほどの小さな声でそう言った。
「じょ、冗談言わないでよ!お兄様はお父様のことを尊敬していて・・・」
「尊敬?誰がするか」
「ウ、ウソ・・・そんな・・・」
プリシラが私を怯えたような顔で見つめた。優しかった兄の裏の顔を知って愕然としているのだろう。
そこでキャサリンが私を非難するかのような目で見た。まさかこの女にそのような目で見られるとは、不愉快極まりない。
「ど、どうしてなのよ・・・どうしてそんなことを・・・」
「何故って?」
「どうして・・・実の父親を・・・」
「ああ、それはだな・・・」
私は先ほどからずっと牢屋の中でビクビクしているキャサリンにグッと顔を近付けた。
「――母の復讐だ。こう言えば分かるか?」
「・・・!」
その言葉に、キャサリンの肩がビクリとなった。
「じゃ、じゃあもしかして・・・私たちは・・・」
「ああ、簡単に殺しはしない」
「そ、そんな・・・!」
青褪めるキャサリンと、言葉を失うプリシラ。
私が望んでいた通りの結末だ。
舞踏会で母のドレスを着たシャーロットを見て、私は思わず涙が出そうになった。母にそっくりなシャーロット。そんなシャーロットを見ていると、幼い頃に母と過ごした大切な思い出が頭の中に流れてきた。
私は溢れそうになる涙を堪えるのに必死だった。
そして、彼女は華麗にプリシラとキャサリンを断罪してみせた。
それにより、プリシラとキャサリンの名誉は地に落ちた。あの二人を崇拝していた皇宮の使用人たちの顔を見るのが楽しみだ。私はもちろんプリシラとキャサリンだけではなくアイツらにも罰を与えるつもりだった。
本当は今すぐにでもシャーロットを抱き締めて「お疲れ様」と言ってあげたいところだが、今はそんなことをしている場合ではなかった。
私は舞踏会が終わってすぐ地下牢に閉じ込められているプリシラとキャサリンの元へと向かった。
二人は地下牢へ訪れた私を見るなり、何を勘違いしたのか目をキラキラと輝かせた。
「お兄様!助けに来てくださったんですね!やっぱり舞踏会で見せたあれはシャーロットを欺くための演技だったんだわ!」
「早くここから出してちょうだい!私は無実よ!」
一体どこからその自信が来るのか。我先にと助けを乞う姿が醜くて反吐が出そうだ。
私はプリシラとキャサリンをそんな夢から目覚めさせるために口を開いた。
「――私はお前たちを助けに来たわけではない」
「・・・・へ?」
「え、何?」
初めて見せる私の冷たい態度に驚いたのか、二人は間抜けな声を出した。
「もう一度だけ言うからよく聞け。私はお前たちを助けにここへ来たわけではない」
「「・・・」」
それでもまだ信じられないのか、二人は驚いたような顔で私を見つめている。
「お・・・お兄様・・・お前たちって・・・」
「な、何を言っているのよ、アル・・・」
いつもと違う私の様子に、二人は完全に狼狽えている。その姿を見た私はニヤリと口の端を上げた。
(・・・やっとだ、やっと本性を出せる)
プリシラとキャサリンがこのような反応になるのも無理はないだろう。私はずっと二人を騙すために自分を偽り続けてきたのだから。だが、それももう終わるのだと思うと何かから解き放たれたような気分になった。
「わ、私たちを助けに来てくれたんじゃないの・・・?」
「ねえ、ちょっと。何とか言いなさいよ・・・!」
縋りつくように私を見つめる二人に、私は絶対零度の視線を向けた。
「――本当に愚かだな」
「・・・ッ!?」
「・・・ウソ」
自分が置かれている状況が未だに理解出来ていない愚かな二人に、現実というものを突き付けてやろう。
「私がここに来たのは、お前たち二人に言いたいことがあったからだ」
「い、言いたいこと・・・?」
「な、何を言うつもりなのよ・・・」
私はそこで二人が入れられている牢屋に近付いて、そっと顔を寄せた。
「――皇帝に毒を盛って殺したのは私だ」
「「・・・・・・・・・・・え?」」
そして、見張りの兵士に聞き取れないほどの小さな声でそう言った。
「じょ、冗談言わないでよ!お兄様はお父様のことを尊敬していて・・・」
「尊敬?誰がするか」
「ウ、ウソ・・・そんな・・・」
プリシラが私を怯えたような顔で見つめた。優しかった兄の裏の顔を知って愕然としているのだろう。
そこでキャサリンが私を非難するかのような目で見た。まさかこの女にそのような目で見られるとは、不愉快極まりない。
「ど、どうしてなのよ・・・どうしてそんなことを・・・」
「何故って?」
「どうして・・・実の父親を・・・」
「ああ、それはだな・・・」
私は先ほどからずっと牢屋の中でビクビクしているキャサリンにグッと顔を近付けた。
「――母の復讐だ。こう言えば分かるか?」
「・・・!」
その言葉に、キャサリンの肩がビクリとなった。
「じゃ、じゃあもしかして・・・私たちは・・・」
「ああ、簡単に殺しはしない」
「そ、そんな・・・!」
青褪めるキャサリンと、言葉を失うプリシラ。
私が望んでいた通りの結末だ。
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