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皇太子アルフレッド編

実行

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(・・・毒を盛るならやはり晩餐の時しかない。)


私は皇帝を毒殺する計画を着々と進めていた。


皇帝は愚かだ。


キャサリンを信用しきっていて、食事の時は毒味すらさせていないのだ。


本人曰く「キャサリンが選んだ者たちが私に毒を盛るわけがない」らしい。


馬鹿なのか。


(・・・まぁ、好都合か。)


皇帝が馬鹿なおかげで簡単に殺せそうだ。


しかし私はあいつを楽に死なせるつもりなど無かった。


じっくりと苦しませてから殺してやろう、そう考えていたのだ。


母上は皇帝に冷遇され、最後は毒殺されたんだ。


それくらいは当然だ。


(そのためには・・・)


私は信用出来る部下を一人皇宮の厨房に送り込んだ。


「いいか、皇帝の食事に毎日毒を少量ずつ盛れ。」


「はい、分かりました、殿下。」




◇◆◇◆◇◆



それから皇帝はよく体調を崩すようになった。


毒が効いているのだろう。


まだ若々しかった見た目も少しずつ変化していった。


皇帝は無能なくせにプライドが高い。


何度も医者に診せることを拒否した。


愛するキャサリンとプリシラに無様な姿を晒したくなかったのだろう。


どこまでも馬鹿な男だ。


自分が毒を盛られているとは思ってもいないのだろう。


こんなのがこの国のトップなのか。


やはりこの男は皇帝の器ではない。


私は目の前で呑気に食事をしている皇帝を見てそう思った。








それから数年が経った。


皇帝の身体はもうボロボロだ。


このまま放っておいてももうすぐ死にそうだ。


わざわざ自分が手を下すまでも無い。


そう思っていた。


しかし―


「なんだと?」


私はフランクから聞いた話に眉をひそめた。


「皇帝陛下がシャーロット皇女殿下に暴力を振るったそうです。」


それを聞いた途端激しい怒りを覚えた。


皇帝はシャーロットにグラスを投げつけたらしい。


後に知ったことだが、シャーロットはどうやら皇帝だけではなく使用人達からも暴力を振られていたそうだ。


(あいつら・・・!)


私はその時激しく後悔した。


あの時皇帝をすぐに殺しておくべきだったと。


(ああ・・・すまない!シャーロット!そしてあのゴミは今すぐ殺す!)


私はすぐに部下に命じた。


「皇帝の今日の食事に今残っている毒を全て盛れ。」


それを聞いた部下は驚愕した。


「えっ!?そんなことしたら死んじゃいますよ!?」


「それでいいんだ。」


「・・・分かりました、殿下。」


部下は驚きながらも結局は私の命令に従った。




そしてついに・・・



「ぐああああああっ!!!」


皇帝は叫び声を上げて苦しみ始める。


「ウィル!?」


「お父様!?どうしたんですか!?」


キャサリンとプリシラは驚きながら皇帝に駆け寄った。


騎士たちが部屋に入ってくる。


「陛下!大丈夫ですか!?」


「大変だ!」


「緊急事態だ!」







「皇帝陛下が何者かによって毒を盛られた!!!」


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