2 / 41
皇女シャーロット編
家族
しおりを挟む
3年前。
私が15歳の時の話だ。
私は皇宮の廊下を一人で歩いていた。
すると庭園から笑い声が聞こえた。
声の聞こえてくる方を見てみるとお父様とキャサリンとプリシラが楽しくお茶をしていた。
和気あいあいとしていていかにも「幸せな家族」という雰囲気だった。
お父様はキャサリンとプリシラを優しい瞳で見つめていた。
私やお母様には一度も向けられたことのない瞳。
胸が苦しくなった。
ズキズキと痛む胸を必死で抑え、三人の会話に耳を傾けてみる。
「お父様!新しいドレスが欲しいですわ!」
「あぁ、それなら明日仕立て屋を呼ぼう。いくらでも好きなのを買うといい。」
「やったぁ!お父様大好き~!」
「ウィル、私も欲しいものがあるの。」
「何だ?なんでも言ってみろ。お前たちの願いなら何でも叶えてやる。」
ウィルとはお父様の愛称だ。
お母様は一度も呼ぶことも許されなかった名。
あの礼儀もマナーもなっていない愛妾にはそれを許しているのか。
そんな一家団欒とした三人のもとに近寄ってくる人物がいた。
あれは・・・
「父上、キャサリン様、プリシラ。この度はお茶会に招待してくださってありがとうございます。」
アルフレッドお兄様―
私とプリシラの兄であり皇太子だ。
アルフレッドお兄様は私と同じ母を持つがプリシラを可愛がっている。
「おお、アルフレッド。よく来たな。」
お父様がお兄様を喜々として迎え入れる。
プリシラは席を立ちお兄様に抱き着いた。
「お兄様~!」
「やぁ、プリシラ。」
「お兄様、来てくださったんですね!プリシラ、お兄様に会いたかったです!」
「可愛い妹の誘いを断るわけにはいかないよ。」
お兄様はプリシラに対して優しく微笑んだ。
お父様がお兄様を私のように嫌っていないのはいくつか理由がある。
一つ目は容姿。
私はお母様似だがお兄様は完全にお父様似である。
二つ目は唯一の皇位継承者だからだ。
ライドーン帝国では女よりも家を継ぐことの出来る男が重宝される。
三つ目は・・・
自分の愛するキャサリンとプリシラがお兄様を好意的に見ているから、だろう。
お父様はあの二人がいれば他のことはどうだっていいのね。
もう一度庭園に目を向けるとお兄様も席に座って家族四人、楽し気にお茶をしていた。
私の入る隙なんて無い。
お母様が亡くなった時、泣き続ける私を優しく抱きしめて慰めてくれたお兄様はもういない。
プリシラは愛嬌のある子だ。
万人に好かれるようなその容姿と相まって使用人達からも人気がある。
愛想が無く可愛げがないと言われる私とは真逆だ。
そう自分を嘲笑しながら私は視線を前に戻し、再び廊下を歩いた。
私が15歳の時の話だ。
私は皇宮の廊下を一人で歩いていた。
すると庭園から笑い声が聞こえた。
声の聞こえてくる方を見てみるとお父様とキャサリンとプリシラが楽しくお茶をしていた。
和気あいあいとしていていかにも「幸せな家族」という雰囲気だった。
お父様はキャサリンとプリシラを優しい瞳で見つめていた。
私やお母様には一度も向けられたことのない瞳。
胸が苦しくなった。
ズキズキと痛む胸を必死で抑え、三人の会話に耳を傾けてみる。
「お父様!新しいドレスが欲しいですわ!」
「あぁ、それなら明日仕立て屋を呼ぼう。いくらでも好きなのを買うといい。」
「やったぁ!お父様大好き~!」
「ウィル、私も欲しいものがあるの。」
「何だ?なんでも言ってみろ。お前たちの願いなら何でも叶えてやる。」
ウィルとはお父様の愛称だ。
お母様は一度も呼ぶことも許されなかった名。
あの礼儀もマナーもなっていない愛妾にはそれを許しているのか。
そんな一家団欒とした三人のもとに近寄ってくる人物がいた。
あれは・・・
「父上、キャサリン様、プリシラ。この度はお茶会に招待してくださってありがとうございます。」
アルフレッドお兄様―
私とプリシラの兄であり皇太子だ。
アルフレッドお兄様は私と同じ母を持つがプリシラを可愛がっている。
「おお、アルフレッド。よく来たな。」
お父様がお兄様を喜々として迎え入れる。
プリシラは席を立ちお兄様に抱き着いた。
「お兄様~!」
「やぁ、プリシラ。」
「お兄様、来てくださったんですね!プリシラ、お兄様に会いたかったです!」
「可愛い妹の誘いを断るわけにはいかないよ。」
お兄様はプリシラに対して優しく微笑んだ。
お父様がお兄様を私のように嫌っていないのはいくつか理由がある。
一つ目は容姿。
私はお母様似だがお兄様は完全にお父様似である。
二つ目は唯一の皇位継承者だからだ。
ライドーン帝国では女よりも家を継ぐことの出来る男が重宝される。
三つ目は・・・
自分の愛するキャサリンとプリシラがお兄様を好意的に見ているから、だろう。
お父様はあの二人がいれば他のことはどうだっていいのね。
もう一度庭園に目を向けるとお兄様も席に座って家族四人、楽し気にお茶をしていた。
私の入る隙なんて無い。
お母様が亡くなった時、泣き続ける私を優しく抱きしめて慰めてくれたお兄様はもういない。
プリシラは愛嬌のある子だ。
万人に好かれるようなその容姿と相まって使用人達からも人気がある。
愛想が無く可愛げがないと言われる私とは真逆だ。
そう自分を嘲笑しながら私は視線を前に戻し、再び廊下を歩いた。
82
お気に入りに追加
3,435
あなたにおすすめの小説
初恋が綺麗に終わらない
わらびもち
恋愛
婚約者のエーミールにいつも放置され、蔑ろにされるベロニカ。
そんな彼の態度にウンザリし、婚約を破棄しようと行動をおこす。
今後、一度でもエーミールがベロニカ以外の女を優先することがあれば即座に婚約は破棄。
そういった契約を両家で交わすも、馬鹿なエーミールはよりにもよって夜会でやらかす。
もう呆れるしかないベロニカ。そしてそんな彼女に手を差し伸べた意外な人物。
ベロニカはこの人物に、人生で初の恋に落ちる…………。
別れたいようなので、別れることにします
天宮有
恋愛
伯爵令嬢のアリザは、両親が優秀な魔法使いという理由でルグド王子の婚約者になる。
魔法学園の入学前、ルグド王子は自分より優秀なアリザが嫌で「力を抑えろ」と命令していた。
命令のせいでアリザの成績は悪く、ルグドはクラスメイトに「アリザと別れたい」と何度も話している。
王子が婚約者でも別れてしまった方がいいと、アリザは考えるようになっていた。
婚約破棄の夜の余韻~婚約者を奪った妹の高笑いを聞いて姉は旅に出る~
岡暁舟
恋愛
第一王子アンカロンは婚約者である公爵令嬢アンナの妹アリシアを陰で溺愛していた。そして、そのことに気が付いたアンナは二人の関係を糾弾した。
「ばれてしまっては仕方がないですわね?????」
開き直るアリシアの姿を見て、アンナはこれ以上、自分には何もできないことを悟った。そして……何か目的を見つけたアンナはそのまま旅に出るのだった……。
没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。
亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。
しかし皆は知らないのだ
ティファが、ロードサファルの王女だとは。
そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……
どうして別れるのかと聞かれても。お気の毒な旦那さま、まさかとは思いますが、あなたのようなクズが女性に愛されると信じていらっしゃるのですか?
石河 翠
恋愛
主人公のモニカは、既婚者にばかり声をかけるはしたない女性として有名だ。愛人稼業をしているだとか、天然の毒婦だとか、聞こえてくるのは下品な噂ばかり。社交界での評判も地に落ちている。
ある日モニカは、溺愛のあまり茶会や夜会に妻を一切参加させないことで有名な愛妻家の男性に声をかける。おしどり夫婦の愛の巣に押しかけたモニカは、そこで虐げられている女性を発見する。
彼女が愛妻家として評判の男性の奥方だと気がついたモニカは、彼女を毎日お茶に誘うようになり……。
八方塞がりな状況で抵抗する力を失っていた孤独なヒロインと、彼女に手を差し伸べ広い世界に連れ出したしたたかな年下ヒーローのお話。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID24694748)をお借りしています。
完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。
『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』
『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』
公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。
もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。
屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは……
*表紙絵自作
妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~
岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。
本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。
別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい!
そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。
戦いから帰ってきた騎士なら、愛人を持ってもいいとでも?
新野乃花(大舟)
恋愛
健気に、一途に、戦いに向かった騎士であるトリガーの事を待ち続けていたフローラル。彼女はトリガーの婚約者として、この上ないほどの思いを抱きながらその帰りを願っていた。そしてそんなある日の事、戦いを終えたトリガーはフローラルのもとに帰還する。その時、その隣に親密そうな関係の一人の女性を伴って…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる