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101 嘆願

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地下監獄を出た後、私はルークが眠る部屋へと向かった。


「ルーク……」
「……」


呼びかけても返事はない。
ベッドに横たわる彼は今にも消えてしまいそうなほど弱く見えた。


(前みたいに笑ってよ……私はあなたがいないと……)


平然を装ってはいるものの、ルークが血を吐いて倒れる姿を見たあのときから本当は不安で仕方が無かった。
血だまりの中で倒れるルークの姿が未だにフラッシュバックする。
彼が本当に亡くなったら私はどうなってしまうのか、想像もつかない。
いや、想像もしたくなかった。


(ああ……神よ……お願いします……どうかルークをお助けください……)


私はベッドで眠るルークの手を握って必死でそう祈った。





***



「陛下、どうかお願いします。リオ君の命だけは助けてください」
「……」


ルークの見舞いを済ませた後、私は国王陛下に謁見をしていた。
用件はもちろんオリバー様の子供であるリオ君についてだ。
オリバー様が処刑され、おそらくレビンストン公爵家も取り潰しになるだろう。
私を虐げていた公爵家の使用人たちはどうなろうと別にかまわなかったが、まだ幼いあの子のことは気になった。


今回のことは何の罪も無い、十歳の子供に背負わせるには重すぎた。


「……ログワーツ嬢、顔を上げてくれ」
「陛下……」


その声でそっと陛下の方を見ると、彼はクスリと微笑んでいた。


「当然だ、元よりあの子の存在は王国民や貴族たちには明らかになっていないんだ。子供一人くらい守ってみせるさ」
「陛下……!」


私が嘆願せずとも、陛下はリオ君を助けてくれるつもりだったようだ。


(やっぱりルークの実のお兄さんだけあってとっても優しいのね……)


今まで陛下を誤解していた自分が情けない。


「ありがとうございます、陛下!」
「ああ」


これでひとまずリオ君の命に関しては大丈夫だ。
後は、あの二人がオリバー様無しでも豊かに暮らせるように……


「陛下、リオ君の母親であるローザ様に手切れ金を持たせてもよろしいでしょうか?私のお金から出すのでどうか……」
「ああ、ログワーツ嬢。そのことなんだが……君に伝えなければならないことがある」
「……伝えなければならないこと、ですか?」


陛下から聞いた話は衝撃的なものだった。


「え……ローザ様が行方不明ですか……!?」
「ああ、使用人たちの話によると公爵と息子を置いて男と駆け落ちしたらしい。何とも身勝手な女だな」
「……」


(だからオリバー様は私を手に入れようとしたのかしら……)


ローザ様が逃げてしまったため、私をリオ君の母親代わりにしたかったのだろう。
当然、そんな風に利用されるつもりは無い。


「では……どうなさるおつもりですか?」
「あの逃げた母親には疎遠になった弟がいてね……一連の出来事を伝えたところ、責任持って面倒を見てくれるそうだ。周囲からの評判も良いし、人望も厚い。彼になら十分任せられるだろう」
「……!それなら安心ですね。良かったです」
「ああ、これからあの子はレビンストン公爵家とは完全に縁を切ったことになる」


突然両親を失って全く別の場所で暮らすことになり困惑するだろうが、どうか強く生きてほしい。


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