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9 地獄は続く
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あれからというもの、レイラはちょくちょく私に会いに公爵邸を訪れるようになった。
完全にお飾りの妻となってしまっている私を気にかけてくれているのだろう。
一人寂しく邸で過ごしていた私としては本当にありがたい。
レイラと過ごす時間は私にとって掛け替えのないものとなった。
そして依然としてオリバー様との仲を深めようと努力をしてはいるが、これといった成果は得られない。
相変わらず彼は私を嫌っているままだ。
(せめて私を嫌う理由を言ってくれればな……)
それに加えて最近は今まで以上に仕事が忙しいようでまともに彼と話せていない。
もう一週間は公爵邸に帰って来ていないのだ。
それと何故だか分からないが、使用人たちの出入りが激しく慌ただしいような気がする。
久々に邸に帰って来たオリバー様もどこかピリピリしているようだった。
(何だろう……?)
そんな彼らを不思議に思いながらも、あえて追及するようなことはしなかった。
面倒くさい女だと思われるのは嫌だったから。
妻は黙って夫に従っていればいいのだと使用人が前に言っていたし、ここで彼のすることに口出しをするのは正しいことではないだろう。
そう思いながら私は彼の行動をただ黙って見守っていた。
しばらくして、ようやく周囲が落ち着いた。
オリバー様は前よりも帰って来る頻度が減ったが、仕事が立て込んでいるのだと自分に言い聞かせた。
そして、ここで私はある大きな問題に直面することとなる。
その問題というのが、私に子供が出来ないことだった。
貴族の妻の最大の役目は後継者を産むことだ。
私にも正妻としての責任感というものはあった。
それを抜きにしても私は子供が好きだ。
オリバー様によく似た愛らしい子供がいたら良いのになと思う。
何度も医師の問診を受けているが、一向に子を授かる気配はない。
オリバー様と結婚してから既に一年が経っている。
私と同年代の貴族令嬢たちは次々に結婚し、全員が子供を産んでいた。
そんな話を聞いて何度羨ましくなったことか。
「……」
私は自身の平らな腹にそっと手を置いた。
子供でも出来れば私に無関心な彼も変わってくれるだろうかと期待していたが、それは一体いつになることやら。
結婚してすぐの頃は何度か夢を見たものだ。
愛しい人の子供を胸に抱き、幸せに過ごす日々を。
もしかするとそんな日は永遠に来ないのかもしれない、そう思ってしまう自分もいる。
(本当に、どうして私には子供が出来ないんだろう……?)
焦る気持ちも無いことはなかったが、そんなことを考えている時間が無駄だろう。
私はとりあえず気長に待つことにした。
***
オリバー様と結婚してから三年が経った頃、私はついに彼からの追及に遭った。
「何故子供が出来ない?」
「……」
突然執務室に私を呼び出した彼は、三年前とまるで変わらない冷たい眼差しで私を問い質した。
三年を夫婦として過ごしたというのに、私に対して少しも情を抱いていないようだった。
(何故……と言われても……)
――分からない。
何故子供が出来ないのかなんて私にも分からない。
そのため、私は彼からの質問に答えることが出来なかった。
黙り込む私にしびれを切らしたのか、オリバー様は苛々した様子で口を開いた。
「お前に問題があるんじゃないのか?」
「えっ……」
彼のその一言は、私の胸を深く切り裂いた。
(私に……問題が……?)
子供が出来ないのは事実だ。
だからもしかすると、本当に私に問題があるのかもしれない。
しかし、だとしてもそんな言い方は無いのではないか。
子供が出来なくて悩んでいるのは私だって一緒だ。
私は震える唇を無理矢理動かして否定した。
ここで肯定してしまうと、とうとう彼から捨てられてしまうかもしれない。
それが怖かった。
「旦那様……そんなことは……決して……」
「ハァ……もういい、下がれ」
オリバー様はため息をついて私を部屋から追い出した。
そして彼はその日から、私に指一本触れなくなった。
完全にお飾りの妻となってしまっている私を気にかけてくれているのだろう。
一人寂しく邸で過ごしていた私としては本当にありがたい。
レイラと過ごす時間は私にとって掛け替えのないものとなった。
そして依然としてオリバー様との仲を深めようと努力をしてはいるが、これといった成果は得られない。
相変わらず彼は私を嫌っているままだ。
(せめて私を嫌う理由を言ってくれればな……)
それに加えて最近は今まで以上に仕事が忙しいようでまともに彼と話せていない。
もう一週間は公爵邸に帰って来ていないのだ。
それと何故だか分からないが、使用人たちの出入りが激しく慌ただしいような気がする。
久々に邸に帰って来たオリバー様もどこかピリピリしているようだった。
(何だろう……?)
そんな彼らを不思議に思いながらも、あえて追及するようなことはしなかった。
面倒くさい女だと思われるのは嫌だったから。
妻は黙って夫に従っていればいいのだと使用人が前に言っていたし、ここで彼のすることに口出しをするのは正しいことではないだろう。
そう思いながら私は彼の行動をただ黙って見守っていた。
しばらくして、ようやく周囲が落ち着いた。
オリバー様は前よりも帰って来る頻度が減ったが、仕事が立て込んでいるのだと自分に言い聞かせた。
そして、ここで私はある大きな問題に直面することとなる。
その問題というのが、私に子供が出来ないことだった。
貴族の妻の最大の役目は後継者を産むことだ。
私にも正妻としての責任感というものはあった。
それを抜きにしても私は子供が好きだ。
オリバー様によく似た愛らしい子供がいたら良いのになと思う。
何度も医師の問診を受けているが、一向に子を授かる気配はない。
オリバー様と結婚してから既に一年が経っている。
私と同年代の貴族令嬢たちは次々に結婚し、全員が子供を産んでいた。
そんな話を聞いて何度羨ましくなったことか。
「……」
私は自身の平らな腹にそっと手を置いた。
子供でも出来れば私に無関心な彼も変わってくれるだろうかと期待していたが、それは一体いつになることやら。
結婚してすぐの頃は何度か夢を見たものだ。
愛しい人の子供を胸に抱き、幸せに過ごす日々を。
もしかするとそんな日は永遠に来ないのかもしれない、そう思ってしまう自分もいる。
(本当に、どうして私には子供が出来ないんだろう……?)
焦る気持ちも無いことはなかったが、そんなことを考えている時間が無駄だろう。
私はとりあえず気長に待つことにした。
***
オリバー様と結婚してから三年が経った頃、私はついに彼からの追及に遭った。
「何故子供が出来ない?」
「……」
突然執務室に私を呼び出した彼は、三年前とまるで変わらない冷たい眼差しで私を問い質した。
三年を夫婦として過ごしたというのに、私に対して少しも情を抱いていないようだった。
(何故……と言われても……)
――分からない。
何故子供が出来ないのかなんて私にも分からない。
そのため、私は彼からの質問に答えることが出来なかった。
黙り込む私にしびれを切らしたのか、オリバー様は苛々した様子で口を開いた。
「お前に問題があるんじゃないのか?」
「えっ……」
彼のその一言は、私の胸を深く切り裂いた。
(私に……問題が……?)
子供が出来ないのは事実だ。
だからもしかすると、本当に私に問題があるのかもしれない。
しかし、だとしてもそんな言い方は無いのではないか。
子供が出来なくて悩んでいるのは私だって一緒だ。
私は震える唇を無理矢理動かして否定した。
ここで肯定してしまうと、とうとう彼から捨てられてしまうかもしれない。
それが怖かった。
「旦那様……そんなことは……決して……」
「ハァ……もういい、下がれ」
オリバー様はため息をついて私を部屋から追い出した。
そして彼はその日から、私に指一本触れなくなった。
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