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狂気 ララside
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「嫌よッ!!!助けてレナルド!!!レナルド!!!」
あの後私は会場から連れ出され、地下牢へ入れられていた。
フレッドも共に連れ出されたが、あの男は腐っても王族なので自室に軟禁という形を取られているらしい。
(ああムカつく!!!何でアイツだけ優遇されてんのよ!!!)
「嫌ッ!汚いわ!」
地下牢の中は悪臭が漂っていて、いたるところに血が付いている。喉の奥から吐き気がこみ上げてくる。こんな屈辱は初めてだ。私はヒロインなのに何故こんな扱いを受けなければいけないのだろうか。
「ねえお願い!ここから出して!」
私は一刻も早くこんな場所から出るために見張りをしていた兵士たちに懇願した。王子たちを落としたときと同じように両手を握って上目遣いで。
(ふふふ・・・これをして落ちない男はこの世にいないのよ。だって私は世界で一番可愛いヒロインなんだもの!)
しかし、そんな私の”お願い”は一蹴されてしまった。
「それは無理だなぁ・・・」
「どうしてよ!?」
それを聞いた兵士は面白そうに私を見下ろした。口元にはニヤニヤした笑みを浮かべていて気持ちが悪い。
(平民のくせに私をそんな目で見ていいと思ってるの!?)
もし私がレナルドの妻になったらこの無礼な男を処刑してやろう。そう心に誓った。
「アンタ、今までその美貌で色んな男を手玉に取ってきたんだろ?」
「ええそうよ!それの何が悪いの!?私は自分の持ってるものを上手に使っただけよ!」
私のその言葉に兵士は声を上げて笑い始めた。
「ハハハ、だけどな。ハッキリ言って今のアンタすっごい醜いぜ?」
「え・・・醜いですって・・・?」
聞き間違えたのかと思った。この私が醜いだなんて。可愛いと言われたことはあるものの、そんなことを言われたことは初めてだった。
(嘘よ・・・そんなはずはない・・・私は世界で一番可愛いのよ・・・)
もう一人の兵士がそれに同調したように言った。
「ああ、俺もそう思う。いくら顔が良くても舞踏会であんな姿を見せられた後じゃなぁ・・・」
「!!!」
そこで私はハッとなった。
(そうだ・・・私たしか舞踏会でリリーシャに罵詈雑言を浴びせて・・・)
あのときはレナルドの隣にいるリリーシャに嫉妬して”可愛いヒロイン”を演じるのをつい忘れてしまったのだ。
「美人でも性根が醜い女は嫌だな」
「!」
兵士たち二人は私をゴミを見るような目で見下ろした。
「レナルドに!レナルドに伝えてよ!私が地下牢に閉じ込められて困ってるって!」
「おいおい、隣国の王子様を呼び捨てにするだなんて・・・」
「やめとけ、もう何を言っても無駄だ」
一人の兵士が呆れたような顔でそう言ったが、今の私にはそんなこと気にならなかった。
「レナルドに会いたいわ!私はレナルドを愛しているの!」
「アンタがレナルド殿下を愛しているから、殿下がここまで迎えに来てくれるとでも思っているのか?」
「言ってることが滅茶苦茶だな・・・」
そのとき、片方の兵士がニヤリと口の端を上げた。
「まあいい、良いことを教えてやろう」
「良いこと・・・?」
(あ!もしかして、レナルドが私をここから出せ!って王様に訴えてくれているのかしら?)
やっぱりレナルドも私のことが好きなんだ。冤罪で地下牢に閉じ込められたヒロインの窮地に颯爽と現れるヒーロー。うんうん、悪くないわ。
このときの私は一人で妄想を巡らせ、有頂天になっていた。
しかし、私はこの後すぐに絶望のどん底に叩き落とされることとなる。
「―オブライト公爵令嬢が会場でレナルド殿下にプロポーズされたそうだ」
「え・・・?」
(レナルドがリリーシャにプロポーズした・・・?)
―嘘だ、そんなのは嘘だ。
途端に息が苦しくなる。胸がギュウッと締め付けられるような・・・
「そんな、そんなことあるはずがないわッ!」
「すぐに正式に婚約を結ぶそうだ」
動揺する私に追い討ちをかけるかのように兵士はそう言った。
レナルドとリリーシャが婚約すると聞いて私はもう正気ではいられなかった。
「うそようそようそようそよ」
「おい、お前何言って・・・」
「イヤーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「ウウッ!」
耳をつんざくような私の声に兵士たちが苦悶の声を上げる。
―レナルドが、私のレナルドが、リリーシャと婚約する。
そんなの認めない。あの女がレナルドと結ばれるだなんて、絶対に認めないんだから!!!
あの後私は会場から連れ出され、地下牢へ入れられていた。
フレッドも共に連れ出されたが、あの男は腐っても王族なので自室に軟禁という形を取られているらしい。
(ああムカつく!!!何でアイツだけ優遇されてんのよ!!!)
「嫌ッ!汚いわ!」
地下牢の中は悪臭が漂っていて、いたるところに血が付いている。喉の奥から吐き気がこみ上げてくる。こんな屈辱は初めてだ。私はヒロインなのに何故こんな扱いを受けなければいけないのだろうか。
「ねえお願い!ここから出して!」
私は一刻も早くこんな場所から出るために見張りをしていた兵士たちに懇願した。王子たちを落としたときと同じように両手を握って上目遣いで。
(ふふふ・・・これをして落ちない男はこの世にいないのよ。だって私は世界で一番可愛いヒロインなんだもの!)
しかし、そんな私の”お願い”は一蹴されてしまった。
「それは無理だなぁ・・・」
「どうしてよ!?」
それを聞いた兵士は面白そうに私を見下ろした。口元にはニヤニヤした笑みを浮かべていて気持ちが悪い。
(平民のくせに私をそんな目で見ていいと思ってるの!?)
もし私がレナルドの妻になったらこの無礼な男を処刑してやろう。そう心に誓った。
「アンタ、今までその美貌で色んな男を手玉に取ってきたんだろ?」
「ええそうよ!それの何が悪いの!?私は自分の持ってるものを上手に使っただけよ!」
私のその言葉に兵士は声を上げて笑い始めた。
「ハハハ、だけどな。ハッキリ言って今のアンタすっごい醜いぜ?」
「え・・・醜いですって・・・?」
聞き間違えたのかと思った。この私が醜いだなんて。可愛いと言われたことはあるものの、そんなことを言われたことは初めてだった。
(嘘よ・・・そんなはずはない・・・私は世界で一番可愛いのよ・・・)
もう一人の兵士がそれに同調したように言った。
「ああ、俺もそう思う。いくら顔が良くても舞踏会であんな姿を見せられた後じゃなぁ・・・」
「!!!」
そこで私はハッとなった。
(そうだ・・・私たしか舞踏会でリリーシャに罵詈雑言を浴びせて・・・)
あのときはレナルドの隣にいるリリーシャに嫉妬して”可愛いヒロイン”を演じるのをつい忘れてしまったのだ。
「美人でも性根が醜い女は嫌だな」
「!」
兵士たち二人は私をゴミを見るような目で見下ろした。
「レナルドに!レナルドに伝えてよ!私が地下牢に閉じ込められて困ってるって!」
「おいおい、隣国の王子様を呼び捨てにするだなんて・・・」
「やめとけ、もう何を言っても無駄だ」
一人の兵士が呆れたような顔でそう言ったが、今の私にはそんなこと気にならなかった。
「レナルドに会いたいわ!私はレナルドを愛しているの!」
「アンタがレナルド殿下を愛しているから、殿下がここまで迎えに来てくれるとでも思っているのか?」
「言ってることが滅茶苦茶だな・・・」
そのとき、片方の兵士がニヤリと口の端を上げた。
「まあいい、良いことを教えてやろう」
「良いこと・・・?」
(あ!もしかして、レナルドが私をここから出せ!って王様に訴えてくれているのかしら?)
やっぱりレナルドも私のことが好きなんだ。冤罪で地下牢に閉じ込められたヒロインの窮地に颯爽と現れるヒーロー。うんうん、悪くないわ。
このときの私は一人で妄想を巡らせ、有頂天になっていた。
しかし、私はこの後すぐに絶望のどん底に叩き落とされることとなる。
「―オブライト公爵令嬢が会場でレナルド殿下にプロポーズされたそうだ」
「え・・・?」
(レナルドがリリーシャにプロポーズした・・・?)
―嘘だ、そんなのは嘘だ。
途端に息が苦しくなる。胸がギュウッと締め付けられるような・・・
「そんな、そんなことあるはずがないわッ!」
「すぐに正式に婚約を結ぶそうだ」
動揺する私に追い討ちをかけるかのように兵士はそう言った。
レナルドとリリーシャが婚約すると聞いて私はもう正気ではいられなかった。
「うそようそようそようそよ」
「おい、お前何言って・・・」
「イヤーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「ウウッ!」
耳をつんざくような私の声に兵士たちが苦悶の声を上げる。
―レナルドが、私のレナルドが、リリーシャと婚約する。
そんなの認めない。あの女がレナルドと結ばれるだなんて、絶対に認めないんだから!!!
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