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三章

父と息子

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「ダリウス様……!」
「ダリウス……!」


――ダリウス様が最強の魔術師と言われたローレル様に勝利した。
殿下と共に見ていたが、戦いはとても激しいもので彼もかなりの血を流している。


(早くダリウス様を治療してさしあげないと……!)


私は床に座り込んだ彼に駆け寄った。


「ダリウス様、大丈夫ですか!」
「ああ、これくらい何とも無い」
「すぐに治療しますから……」
「――それよりフルール嬢、見てみろ。あの男を」
「あの男……?」


ダリウス様が指差す先に視線をやると、国王アルベルトと殿下が対峙していた。
ローレル様が敗北したことにより国王の周囲に張り巡らされていた結界は解け、アルベルトは心強い味方を失うこととなった。


「殿下……」
「グレイ……」


私たちはその様子をじっと見守っていた。
息子が父に剣を向けるという、何とも異様な光景だった。


「アルベルト……」
「グレイフォード、待て!お前は血の繋がった父親を殺すつもりか!?」
「父親か……父としての役割など果たしたこと無いだろう!お前はいつだって権力のことしか考えていなかった」


殿下が猛獣のように声を荒らげた。
彼のそのような姿は久々に見る。


「今まで以上に権力を得ようと思っていたのも全てはお前のためだ!私が死んだ後もお前が良き王として……」
「――口を閉じろ」


アルベルトが何を言おうと、殿下や私たちの心に響くことは無い。
そして彼が今言っていたことは全て嘘だ。
もしそれが本当なら、旅行帰りの殿下を襲撃したりするはずが無いから。


「お前は罪を犯しすぎた。フルール公爵、公爵夫人、セシリア、母上、お前の実の両親まで。一体どれだけの人間の人生を台無しにしてきた?」
「な、何故お前がそこまで知っている……!」


過去の罪が明らかになり、王は狼狽えた。
そして、腰が抜けて立てなくなっているアルベルトに、殿下が手にしていた剣を振り上げた。


「歯を食いしばれ。これはその者たちの恨みのほんの一部にすぎない」
「お、おいやめろ!私を斬りつける気か!!!やめろ、やめるんだ!」


必死の命乞いも虚しく、アルベルトに向かって下りた剣は、彼の右腕を一瞬にして切り落とした。


「ギャアアアアアア!!!」


王の悲鳴が部屋中に鳴り響く。
返り血を浴びた殿下はもう一度剣を振り上げ、今度は左腕を切断した。


「アアアアアアアアア!!!」


アルベルトは仰向けに倒れた。


「今ここで処刑しても良かったが……それだけでは足りないほどの罪をお前は犯している」
「……」
「お前は地下牢に入れることにする」


そして、王は捕縛された。


(終わったのね……)


それから少しした頃、ちょうどお父様も戻ってきて、制圧を終えたことを報告した。
殿下率いる反乱軍は見事、悪逆非道の限りを尽くした国王軍に勝利したのだ。





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