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三章
公爵邸へ
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「セシリア、少し休め。お前は十分よくやってくれた」
「殿下」
全ての騎士の治療を終えた私は、殿下に言われて近くにあった岩の上に座り込んだ。
(少し疲れたわね……)
私の隣に座った彼は、私の肩を優しく包み込んだ。
「出発は騎士たちの準備が出来てからにしよう。それまでは休んでいろ」
「はい、殿下……」
彼の胸に包まれた私は、騎士たちがすぐ傍にいるにも関わらず、彼の胸に顔をうずめた。
いつもと変わらない、よく知る香りが鼻をくすぐった。
よほど疲れていたのか、そのまま眠気が襲ってくる。
(このまま少し寝ようかな……)
そう思って目を閉じようとしたそのとき、殿下の胸に入れられていた魔道具が音を立てて震えた。
「……」
私は体を起こし、彼は胸の魔道具を手に取った。
親しい相手と簡単に連絡を取ることが出来る便利なものだ。
「……ダリウス?」
魔道具をじっと見つめた彼は訝し気にそう呟いた。
どうやら相手はダリウス様のようだった。
(ダリウス様といえば、私と殿下が旅行をしている間お父様のことを見ていたはず……)
そんな彼から突然連絡が来るということは……。
何だか嫌な予感がする。
良くないことでないといいが。
しかし、そんな私の希望はあっさりと裏切られることとなる。
「……公爵の容体が急変しただと?」
「……」
殿下のその言葉に、体が硬直していくのを感じた。
元々良くなかったお父様の容体がさらに悪化した。
もしかすると死んでしまうのではという不安が襲ってくる。
「そうか……分かった、引き続き公爵を診ていてくれ」
「殿下……!」
受信を切った殿下が、深刻な顔で私に言った。
「セシリア……あまり言いたくはないが、公爵が今かなり危ないようだ」
「お父様が……ダリウス様が見ていたのにどうして……」
「公爵は元々生きているのが不思議なくらい体がボロボロだったからな……」
不安と恐怖で俯いてしまった私の手を、殿下がギュッと握った。
「――セシリア、ダリウスを信じよう。アイツならきっとやってくれる。俺が誰よりもアイツのこと知ってるからな」
「殿下……」
彼は安心させるようにそう言ったが、私の不安が消えることは無かった。
「……私、お父様のところへ行きたいです」
「セシリア……?」
「前は何も出来なかったけれど……今は違う」
そう、今の私には聖女の力があった。
お父様を治療する力は十分にあるのだ。
昔みたいに誰かに頼ってばかりいるのではなく、自分の力でお父様を救いたかった。
そんな私の強い決意を感じたのか、殿下は辺りを見渡した。
「馬車の準備は……まだ出来ていなさそうだな」
「……」
そうボソリと呟いた彼は、すぐ傍にいた一頭の馬に乗った。
そして私に手を差し出す。
「セシリア、乗れ」
「殿下……体調は大丈夫なのですか?」
「ああ、お前が治療してくれたからな。不思議なことに疲れさえない。――俺ならお前を、公爵邸まで送っていける」
「……!」
その言葉を聞いた私は、彼の手を取った。
「では、お願いします」
「ああ」
それから殿下は私を抱き上げて後ろに座らせると、そのまますぐに馬を走らせた。
「殿下、令嬢!一体どちらへ行かれるのですか!?」
「俺たちは一足先に国へ戻る!お前たちは準備が出来次第出発しろ!」
「勝手な行動をしてすみません……!」
馬は物凄いスピードで山中を駆け抜けていく。
振り落とされないように彼の背に抱き着いた私は、心の中で祈り続けた。
(お願い、お父様、死なないで……!)
「殿下」
全ての騎士の治療を終えた私は、殿下に言われて近くにあった岩の上に座り込んだ。
(少し疲れたわね……)
私の隣に座った彼は、私の肩を優しく包み込んだ。
「出発は騎士たちの準備が出来てからにしよう。それまでは休んでいろ」
「はい、殿下……」
彼の胸に包まれた私は、騎士たちがすぐ傍にいるにも関わらず、彼の胸に顔をうずめた。
いつもと変わらない、よく知る香りが鼻をくすぐった。
よほど疲れていたのか、そのまま眠気が襲ってくる。
(このまま少し寝ようかな……)
そう思って目を閉じようとしたそのとき、殿下の胸に入れられていた魔道具が音を立てて震えた。
「……」
私は体を起こし、彼は胸の魔道具を手に取った。
親しい相手と簡単に連絡を取ることが出来る便利なものだ。
「……ダリウス?」
魔道具をじっと見つめた彼は訝し気にそう呟いた。
どうやら相手はダリウス様のようだった。
(ダリウス様といえば、私と殿下が旅行をしている間お父様のことを見ていたはず……)
そんな彼から突然連絡が来るということは……。
何だか嫌な予感がする。
良くないことでないといいが。
しかし、そんな私の希望はあっさりと裏切られることとなる。
「……公爵の容体が急変しただと?」
「……」
殿下のその言葉に、体が硬直していくのを感じた。
元々良くなかったお父様の容体がさらに悪化した。
もしかすると死んでしまうのではという不安が襲ってくる。
「そうか……分かった、引き続き公爵を診ていてくれ」
「殿下……!」
受信を切った殿下が、深刻な顔で私に言った。
「セシリア……あまり言いたくはないが、公爵が今かなり危ないようだ」
「お父様が……ダリウス様が見ていたのにどうして……」
「公爵は元々生きているのが不思議なくらい体がボロボロだったからな……」
不安と恐怖で俯いてしまった私の手を、殿下がギュッと握った。
「――セシリア、ダリウスを信じよう。アイツならきっとやってくれる。俺が誰よりもアイツのこと知ってるからな」
「殿下……」
彼は安心させるようにそう言ったが、私の不安が消えることは無かった。
「……私、お父様のところへ行きたいです」
「セシリア……?」
「前は何も出来なかったけれど……今は違う」
そう、今の私には聖女の力があった。
お父様を治療する力は十分にあるのだ。
昔みたいに誰かに頼ってばかりいるのではなく、自分の力でお父様を救いたかった。
そんな私の強い決意を感じたのか、殿下は辺りを見渡した。
「馬車の準備は……まだ出来ていなさそうだな」
「……」
そうボソリと呟いた彼は、すぐ傍にいた一頭の馬に乗った。
そして私に手を差し出す。
「セシリア、乗れ」
「殿下……体調は大丈夫なのですか?」
「ああ、お前が治療してくれたからな。不思議なことに疲れさえない。――俺ならお前を、公爵邸まで送っていける」
「……!」
その言葉を聞いた私は、彼の手を取った。
「では、お願いします」
「ああ」
それから殿下は私を抱き上げて後ろに座らせると、そのまますぐに馬を走らせた。
「殿下、令嬢!一体どちらへ行かれるのですか!?」
「俺たちは一足先に国へ戻る!お前たちは準備が出来次第出発しろ!」
「勝手な行動をしてすみません……!」
馬は物凄いスピードで山中を駆け抜けていく。
振り落とされないように彼の背に抱き着いた私は、心の中で祈り続けた。
(お願い、お父様、死なないで……!)
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