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二章
夫となった人は 王妃エリザベスside
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その日、私はオルレリアン王国へと嫁いだ。
「王太子殿下、ご機嫌いかがでしょうか」
「……」
「フェンダル王国から来ました。エリザベス・フェンダルと申します。これからよろしくお願いいたします」
「ああ」
嫁ぎ先のオルレリアン王国の王太子はどこまでも冷たい人だった。
やはりあの噂は事実だったのだろう。
アルバート王太子の想い人はリーナ・クロムウェル公爵令嬢だという話だ。
(まぁ、前から知ってたから別に何とも思わないけれど……)
王太子が去った後、後ろにいた国王陛下が溜息を吐いた。
「ハァ……アイツにも困ったものだな……」
「ごめんなさいね、エリザベス王女。あの子は誰に対してもああいう態度なのよ」
「いえ、気にしておりませんわ」
王妃陛下も困ったように眉を下げた。
無愛想な王太子とは違い、彼の両親である両陛下は穏やかで優しい方だった。
(嫁ぎ先で夫の両親と上手くいかない話はよく聞くけれど……)
義理の両親は、私にとても親切にしてくれた。
それだけが唯一の救いだった。
母は幼い頃に亡くなり、父は自分に無関心。
そんな私にとっては、彼らの方が実の両親に近かった。
王太子は相変わらず冷たかったが、義理の両親は私の味方だったし嫁ぎ先での暮らしはそれほど窮屈では無かった。
しかし、そんな日々も長くは続かなかった。
「それは本当なの……?」
「はい、妃殿下……」
オルレリアン王国へ嫁いでから一年後。
両陛下が馬車事故で亡くなったのだ。
「王太子殿下が葬儀の準備をすると……」
「……分かったわ」
数日後には両陛下の葬式が行われた。
黒い喪服に身を包んでベールで顔を隠した私は、目を閉じて眠る両陛下の姿を見て人知れず涙を流した。
涙なんて、二度と流すことないと思っていたのに。
悲しみに暮れる私は、ふと横にいた王太子――夫に目を向けた。
そこで衝撃の光景を目にした。
「……!?」
――夫は、実の両親の遺体を見て笑っていた。
(こ、この人……どうかしているわ……!)
そのときに私はようやく、夫となった人の歪んだ本性に気が付いた。
ただ無愛想なだけだと思っていたのに、どうやらそうではなかったらしい。
(間違いない……両陛下を殺したのはこの人だわ……!)
そのことに気付いた私は、恐ろしくて震えが止まらなくなった。
実の両親を何のためらいも無く殺し、自分は平然とその座に就く。
こんな悪魔みたいな人間は初めて見た。
(次は……次は私かもしれない……)
逆らったら自分も同じ目に遭わされるかもしれない。
そんな恐怖心で胸がいっぱいになった。
そしてこの日から私は、味方のいなくなった王宮で王太子――いや、国王に怯えながら肩身の狭い暮らしをすることになるのだった。
「王太子殿下、ご機嫌いかがでしょうか」
「……」
「フェンダル王国から来ました。エリザベス・フェンダルと申します。これからよろしくお願いいたします」
「ああ」
嫁ぎ先のオルレリアン王国の王太子はどこまでも冷たい人だった。
やはりあの噂は事実だったのだろう。
アルバート王太子の想い人はリーナ・クロムウェル公爵令嬢だという話だ。
(まぁ、前から知ってたから別に何とも思わないけれど……)
王太子が去った後、後ろにいた国王陛下が溜息を吐いた。
「ハァ……アイツにも困ったものだな……」
「ごめんなさいね、エリザベス王女。あの子は誰に対してもああいう態度なのよ」
「いえ、気にしておりませんわ」
王妃陛下も困ったように眉を下げた。
無愛想な王太子とは違い、彼の両親である両陛下は穏やかで優しい方だった。
(嫁ぎ先で夫の両親と上手くいかない話はよく聞くけれど……)
義理の両親は、私にとても親切にしてくれた。
それだけが唯一の救いだった。
母は幼い頃に亡くなり、父は自分に無関心。
そんな私にとっては、彼らの方が実の両親に近かった。
王太子は相変わらず冷たかったが、義理の両親は私の味方だったし嫁ぎ先での暮らしはそれほど窮屈では無かった。
しかし、そんな日々も長くは続かなかった。
「それは本当なの……?」
「はい、妃殿下……」
オルレリアン王国へ嫁いでから一年後。
両陛下が馬車事故で亡くなったのだ。
「王太子殿下が葬儀の準備をすると……」
「……分かったわ」
数日後には両陛下の葬式が行われた。
黒い喪服に身を包んでベールで顔を隠した私は、目を閉じて眠る両陛下の姿を見て人知れず涙を流した。
涙なんて、二度と流すことないと思っていたのに。
悲しみに暮れる私は、ふと横にいた王太子――夫に目を向けた。
そこで衝撃の光景を目にした。
「……!?」
――夫は、実の両親の遺体を見て笑っていた。
(こ、この人……どうかしているわ……!)
そのときに私はようやく、夫となった人の歪んだ本性に気が付いた。
ただ無愛想なだけだと思っていたのに、どうやらそうではなかったらしい。
(間違いない……両陛下を殺したのはこの人だわ……!)
そのことに気付いた私は、恐ろしくて震えが止まらなくなった。
実の両親を何のためらいも無く殺し、自分は平然とその座に就く。
こんな悪魔みたいな人間は初めて見た。
(次は……次は私かもしれない……)
逆らったら自分も同じ目に遭わされるかもしれない。
そんな恐怖心で胸がいっぱいになった。
そしてこの日から私は、味方のいなくなった王宮で王太子――いや、国王に怯えながら肩身の狭い暮らしをすることになるのだった。
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