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番外編
2 家族 フィリクス視点
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初めて王宮へ行き、私は自分に妹がいることを知った。
母親は違うらしいが、父の血を引くれっきとした王族だという。
出来ることならたった一人の妹と仲良くしたいと思ったが、母がそれをあまり良く思わなかった。
そのときは何故だか分からなかったが、おそらく妹の母親である側妃と折り合いが悪かったせいだろう。
父のいる王宮へ移ったにもかかわらず、私はほとんど父親と関わることは無かった。
国王である父はたったの一度も私と母に会いに来てくれない。
しかし、妹の方とはよくお茶をしたり遊んだりしているようだった。
母はいつもそれに対して申し訳なさそうな顔をしていた。
私の母は見てるこっちが辛くなるくらい優しい人で、私は次第に父に対して反感を抱き始めた。
(私の母が冷たい人だと……?ふざけるな、何も知らないくせに!)
何故か母は貴族たちにそれほど良く思われていなかった。
夫にも無視され、使用人ですら敬遠していた。
もし私が生まれてこなかったら、母はずっと一人ぼっちだったはずだ。
それを見た私は、幼いながらに優しい母を守ることを決意した。
(私だけは絶対に、母上の味方でい続ける。たとえ国中を敵に回そうとも……)
そのために勉強や剣術を誰よりも頑張った。
おかげで剣術に関しては騎士団長に天才とまで言われるようになった。
「殿下、これ以上は……」
「まだいける!続けてくれ」
「ですが、殿下はまだ幼いですし……」
「これくらい出来ないでどうする!母上に恩を返したいんだ!やらせてくれ!」
「殿下……」
第一騎士団長は私の鍛錬によく付き合ってくれた人物だった。
今思えば実の父親よりも、本物の父親に近かったかもしれない。
最初は王宮での暮らしが窮屈だったが、次第に慣れていった。
母に父親代わりの騎士団長、それに母の弟である叔父がたまに会いに来てくれたから。
しかし、そんなある日、事件は起きた。
――母が亡くなったのだ。
階段から足を滑らせてしまってそのまま亡くなってしまったという。
その知らせを聞いたときは部屋に引きこもって何日も泣き続けた。
信じたくなかった。
あの優しい母が亡くなっただなんて。
それからの私の生活は以前とはガラリと変わった。
母親を亡くしてからは毎日毎日退屈だった。
騎士団長も叔父もそれぞれ職務があり、毎日のように会えるわけではない。
(つまらない……)
そんな日々に嫌気が差して騎士団の魔物の討伐に強引について行ったりもした。
一国の王子が行くような場所では無かったが、王宮で一人過ごすよりかはずっとマシだった。
母が亡くなってから一年後。
ある人物が私の元を訪ねてきた。
「殿下、お久しぶりです」
「…………叔父上?」
母親は違うらしいが、父の血を引くれっきとした王族だという。
出来ることならたった一人の妹と仲良くしたいと思ったが、母がそれをあまり良く思わなかった。
そのときは何故だか分からなかったが、おそらく妹の母親である側妃と折り合いが悪かったせいだろう。
父のいる王宮へ移ったにもかかわらず、私はほとんど父親と関わることは無かった。
国王である父はたったの一度も私と母に会いに来てくれない。
しかし、妹の方とはよくお茶をしたり遊んだりしているようだった。
母はいつもそれに対して申し訳なさそうな顔をしていた。
私の母は見てるこっちが辛くなるくらい優しい人で、私は次第に父に対して反感を抱き始めた。
(私の母が冷たい人だと……?ふざけるな、何も知らないくせに!)
何故か母は貴族たちにそれほど良く思われていなかった。
夫にも無視され、使用人ですら敬遠していた。
もし私が生まれてこなかったら、母はずっと一人ぼっちだったはずだ。
それを見た私は、幼いながらに優しい母を守ることを決意した。
(私だけは絶対に、母上の味方でい続ける。たとえ国中を敵に回そうとも……)
そのために勉強や剣術を誰よりも頑張った。
おかげで剣術に関しては騎士団長に天才とまで言われるようになった。
「殿下、これ以上は……」
「まだいける!続けてくれ」
「ですが、殿下はまだ幼いですし……」
「これくらい出来ないでどうする!母上に恩を返したいんだ!やらせてくれ!」
「殿下……」
第一騎士団長は私の鍛錬によく付き合ってくれた人物だった。
今思えば実の父親よりも、本物の父親に近かったかもしれない。
最初は王宮での暮らしが窮屈だったが、次第に慣れていった。
母に父親代わりの騎士団長、それに母の弟である叔父がたまに会いに来てくれたから。
しかし、そんなある日、事件は起きた。
――母が亡くなったのだ。
階段から足を滑らせてしまってそのまま亡くなってしまったという。
その知らせを聞いたときは部屋に引きこもって何日も泣き続けた。
信じたくなかった。
あの優しい母が亡くなっただなんて。
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そんな日々に嫌気が差して騎士団の魔物の討伐に強引について行ったりもした。
一国の王子が行くような場所では無かったが、王宮で一人過ごすよりかはずっとマシだった。
母が亡くなってから一年後。
ある人物が私の元を訪ねてきた。
「殿下、お久しぶりです」
「…………叔父上?」
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