13 / 59
13 過去の記憶
しおりを挟む
そんなこんなで一週間が経過した。
あれからエルフレッドとクロエにはほとんど会っていない。
お茶会に誘われることは何度かあったか、全て断った。
もう茶会に誘わないでくれと言ったにもかかわらず、何故かクロエは諦めずに私を招待しようとしてくるのだ。
そしてエルフレッドもまた、何度か私の部屋へと訪れた。
(どうして二人ともこうも私に関わってこようとしてくるのかしら……)
毎回毎回断るのにも疲れる。
二人はそのことを不満に思っているかもしれないけれど、他人の目など気にせず、三度目の人生を自由に生きたかった。
(三回目くらい放っておいてほしいわ……)
「王妃様、もうすぐ開かれる舞踏会のドレスはいかがなさいましょう」
「舞踏会……ドレス……」
侍女にそう言われて近いうちに舞踏会が開かれるということを思い出した。
そして、それと同時に私はあることに気が付いた。
(そうだわ……もうすぐ”あの舞踏会”が開かれるんだわ……!)
――過去二度の人生において、私の立場を無くしたあの忌まわしき舞踏会が。
***
クロエが側妃になって三ヶ月が経過した頃。
王宮では国王主催の舞踏会が開催されることとなる。
一度目の人生では、側妃クロエとドレスの色がかぶってしまうというアクシデントが起きた。
『王妃様と側妃様のドレス、かなり似ているわ』
『まぁ、何てこと……!こういうときは身分が下の側妃様が気を遣って別のドレスに変えるべきでは?』
『それが、側妃様のあのドレスは陛下がプレゼントされたものだそうよ』
『あら、でも側妃様にとてもよく似合っているわね』
王が贈ったものであれば、誰も側妃を悪く言えない。
むしろ、側妃より地味なドレスを着ている私を嘲笑する声の方が多かった。
(どうして……どうしてこんなときにまで……!)
それに腹が立った私は、クロエのドレスにワインをかけてしまうのだ。
エルフレッドから贈られたドレスが汚れてしまったことにクロエは涙し、この舞踏会での一件から周囲は私に蔑みの目を向けるようになった。
私の悪評が社交界に広まるようになったのはちょうどこの頃からだった。
二度目の生では、別のドレスを選んだ。
出来るだけ謙虚に生きようと、全てをクロエに譲ったのだ。
しかし、そこでも私は貴族たちの嘲笑の的にされてしまう。
『私のことはお気になさらないで、側妃様と楽しい時間をお過ごしください』
舞踏会が開かれる直前、二人に対してそんなことを言ってしまったせいか、私は会場で惨めな思いをした。
この言葉のせいで私は本当に夫に放っておかれ、壁の花となったのだ。
夫であるエルフレッドは最初のダンスをクロエと踊り、その後もずっと彼女と行動を共にした。
隅で一人ポツンと孤立している私を彼は気にも留めなかった。
(それでも、彼が幸せならと我慢していたけれど……)
今回はそうするつもりは無い。
彼ら二人のことなど全く気にせず、ただ私のことだけを考えていればいい。
どうせどんなに努力したところで、彼の愛が私に向けられることは無いのだから。
それなら少しくらいは好きにしたって良いはずだ。
(それにあんな人とのダンスなんて、こっちからお断りね)
今回は誘われても断ってやる。
そう心に誓った私は、最悪な記憶の残る舞踏会へ向けて動き出した。
あれからエルフレッドとクロエにはほとんど会っていない。
お茶会に誘われることは何度かあったか、全て断った。
もう茶会に誘わないでくれと言ったにもかかわらず、何故かクロエは諦めずに私を招待しようとしてくるのだ。
そしてエルフレッドもまた、何度か私の部屋へと訪れた。
(どうして二人ともこうも私に関わってこようとしてくるのかしら……)
毎回毎回断るのにも疲れる。
二人はそのことを不満に思っているかもしれないけれど、他人の目など気にせず、三度目の人生を自由に生きたかった。
(三回目くらい放っておいてほしいわ……)
「王妃様、もうすぐ開かれる舞踏会のドレスはいかがなさいましょう」
「舞踏会……ドレス……」
侍女にそう言われて近いうちに舞踏会が開かれるということを思い出した。
そして、それと同時に私はあることに気が付いた。
(そうだわ……もうすぐ”あの舞踏会”が開かれるんだわ……!)
――過去二度の人生において、私の立場を無くしたあの忌まわしき舞踏会が。
***
クロエが側妃になって三ヶ月が経過した頃。
王宮では国王主催の舞踏会が開催されることとなる。
一度目の人生では、側妃クロエとドレスの色がかぶってしまうというアクシデントが起きた。
『王妃様と側妃様のドレス、かなり似ているわ』
『まぁ、何てこと……!こういうときは身分が下の側妃様が気を遣って別のドレスに変えるべきでは?』
『それが、側妃様のあのドレスは陛下がプレゼントされたものだそうよ』
『あら、でも側妃様にとてもよく似合っているわね』
王が贈ったものであれば、誰も側妃を悪く言えない。
むしろ、側妃より地味なドレスを着ている私を嘲笑する声の方が多かった。
(どうして……どうしてこんなときにまで……!)
それに腹が立った私は、クロエのドレスにワインをかけてしまうのだ。
エルフレッドから贈られたドレスが汚れてしまったことにクロエは涙し、この舞踏会での一件から周囲は私に蔑みの目を向けるようになった。
私の悪評が社交界に広まるようになったのはちょうどこの頃からだった。
二度目の生では、別のドレスを選んだ。
出来るだけ謙虚に生きようと、全てをクロエに譲ったのだ。
しかし、そこでも私は貴族たちの嘲笑の的にされてしまう。
『私のことはお気になさらないで、側妃様と楽しい時間をお過ごしください』
舞踏会が開かれる直前、二人に対してそんなことを言ってしまったせいか、私は会場で惨めな思いをした。
この言葉のせいで私は本当に夫に放っておかれ、壁の花となったのだ。
夫であるエルフレッドは最初のダンスをクロエと踊り、その後もずっと彼女と行動を共にした。
隅で一人ポツンと孤立している私を彼は気にも留めなかった。
(それでも、彼が幸せならと我慢していたけれど……)
今回はそうするつもりは無い。
彼ら二人のことなど全く気にせず、ただ私のことだけを考えていればいい。
どうせどんなに努力したところで、彼の愛が私に向けられることは無いのだから。
それなら少しくらいは好きにしたって良いはずだ。
(それにあんな人とのダンスなんて、こっちからお断りね)
今回は誘われても断ってやる。
そう心に誓った私は、最悪な記憶の残る舞踏会へ向けて動き出した。
4,062
お気に入りに追加
6,322
あなたにおすすめの小説
婚約者を想うのをやめました
かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。
「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」
最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。
*書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。
二度目の恋
豆狸
恋愛
私の子がいなくなって半年と少し。
王都へ行っていた夫が、久しぶりに伯爵領へと戻ってきました。
満面の笑みを浮かべた彼の後ろには、ヴィエイラ侯爵令息の未亡人が赤毛の子どもを抱いて立っています。彼女は、彼がずっと想ってきた女性です。
※上記でわかる通り子どもに関するセンシティブな内容があります。
幼馴染みとの間に子どもをつくった夫に、離縁を言い渡されました。
ふまさ
恋愛
「シンディーのことは、恋愛対象としては見てないよ。それだけは信じてくれ」
夫のランドルは、そう言って笑った。けれどある日、ランドルの幼馴染みであるシンディーが、ランドルの子を妊娠したと知ってしまうセシリア。それを問うと、ランドルは急に激怒した。そして、離縁を言い渡されると同時に、屋敷を追い出されてしまう。
──数年後。
ランドルの一言にぷつんとキレてしまったセシリアは、殺意を宿した双眸で、ランドルにこう言いはなった。
「あなたの息の根は、わたしが止めます」
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
愛していないと嘲笑されたので本気を出します
hana
恋愛
「悪いが、お前のことなんて愛していないんだ」そう言って嘲笑をしたのは、夫のブラック。彼は妻である私には微塵も興味がないようで、使用人のサニーと秘かに愛人関係にあった。ブラックの父親にも同じく嘲笑され、サニーから嫌がらせを受けた私は、ついに本気を出すことを決意する。
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる