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13 初恋の幼馴染と衝撃の事実

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愛人宅に侵入してから数日後。
予期せぬ来客がやって来た。


「え……アルフ様!?」
「久しぶりだな、シア」


幼少の頃から実の兄のように時間を共にした幼馴染、アルフ・ディボルト侯爵令息だった。


(どうしてアルフ様がここに……最近は結婚の準備で忙しいと聞いていたのに……)


私より三つ年上の彼は容姿端麗で、貴族令嬢からかなりの人気を誇っていたも未だに未婚だった。
そしてつい最近とある貴族令嬢との結婚が決まってその準備を進めているという話を耳にした。
普段は優しく、時に厳しかったアルフ様は私の初恋の相手でもある。
そんな彼の結婚報告に少し悲しくもあったが、私は既婚者の身で娘までいる。


絶対に彼と結ばれることなんて無い。
だからこそ、諦められた。


「アルフ様がどうしてここに……?」
「シアの両親……閣下から話を聞いて俺も調査に当たっていたんだ」
「そうだったんですね……」


私の両親はアルフ様の両親と仲が良く、家族ぐるみの付き合いだった。
お父様はアルフ様をとても信用していたから今回のことを話したのだろう。


(久々に会えて嬉しいな……)


公爵邸の応接間で、彼は防音魔法を発動させた。
誰かに聞かれたらまずい内容なのだろう。


「ディボルト侯爵家の力を使って、お前が言っていたあの子供について調べてみたんだがな……」
「……」
「――やっぱりあの子はディアンの子供ではない」
「……!」


予想していたことだったが、いざ直接確認を受けると衝撃を隠しきれなかった。


「やっぱりそうだったんですね……」
「ああ」
「ですが、あの黒い瞳と髪は間違いなくグクルス公爵家の特徴……」
「そうだな」


――つまり、それが意味するのは。


「ルヴァンは……アース様の子供……ということでしょうか?」
「それしか考えられないな、他にグクルス家の人間なんていないし」
「そんな……」


私があのとき疑問に思ったのはルヴァンの瞳の色だ。
至近距離で見てようやく気付いたが、ルヴァンの瞳の色はディアン様のものよりも少し濃かった。


グクルス公爵家は血筋が正統であればあるほど瞳がより濃い黒になる。
つまり、非嫡出子のディアン様より正妻から産まれたアース様の方が深い黒となっているのだ。
瞳の色は年齢と共に徐々に変化していく。


この先、ルヴァンの目の色は本人の意思とは関係無くアース様のものに近付いていくだろう。
つまり、ルヴァンがアース様の子供だと周囲に気付かれてしまう可能性が高い。


(どうするのが正解なのかしら……)


「ルヴァンって子……瞳の色が少しずつ変わってきているようだな。ディアンは気付いていないみたいだが」
「そうですね……愛人の子として育ったディアン様がそのことを知らないのも無理はありませんが……」


完全に変化したとき、彼は間違いなく疑念を抱くだろう。
アース様を心の底から憎んでいる彼のことだ。
ルヴァンを殺してしまうかもしれない。


「――シア」
「はい、アルフ様」
「ドロシーという愛人の女、何か怪しいと思わないか?」
「ドロシー様……ですか?」


私は別邸で見たドロシー様の姿を思い浮かべた。
癇癪を起こし、侍女に物を投げつけていた彼女。


(ただ性格の悪い人って感じだったけどな……)


あの程度なら貴族令嬢にもいるだろう。
私はそう思っていたが、アルフ様はどうやら別の考えを抱いているようだった。


「俺はどうもアレがただ性格が悪いだけの女には見えないんだ」
「アルフ様……」
「だからシア、あの女には注意――」


「――アルフおじさん!!!」


扉が突然開いたかと思うと、中に入ってきたのはリアだった。


「リア!?」
「リア、久しぶりだな。元気にしてたか?」


アルフ様は無作法なリアを特に叱ることも無く、駆け寄る愛娘の頭を優しく撫でた。
彼は私が結婚してからたびたびここへ訪れては、リアを可愛がってくれていた。


「リア、勝手に入っちゃダメじゃない」
「でもアルフおじさんが来ているって聞いて……」
「もう……」


アルフ様がハハッと笑った。


「シア、俺はかまわないから。リア、おじさんと一緒に遊ぼうか」
「うん!」


アルフ様はニコッと私に笑いかけると、リアの手を引いて外へ出て行った。


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