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18話 ヤンキーと牛乳

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「それは……オレは見るからに凡庸で生徒会の補佐になるような学力だってそぐわないのは分かってるし……だからオレより別に見合う人がいるから辞退したいって思っていて」

 無難に理由を並べるオレだけど自分で言っていて虚しくなる。

「アンタ、なんでそんなに自分を卑下するんだよ。そんな価値観なんて他人が勝手につけてるもんだし、入学したばっかなのに押されてどうするんだよ」

「え?…あ、そうじゃなくて恥ずかしい話……学力はマジで低いのは自覚してるし、なんでオレが選ばれてるんだろって単純に思ってる訳で……」

「つまんねぇ考えなんだな……俺が聞いたのは高見で偉そうにしてる奴らの下で勝手に選ばれて使われるのは納得いかねぇよなって事だよ」


 中川って生徒は強勢を張る俺様な人だった!……なんてこれも他人による勝手な解釈だって思われるのかな。

 一瞬にして苦手要素を持ってしまった。

「あ、あのじゃ、オレ……これで」

 おしるこを懐に温めてその場を去ろうとした時、「待てよ」と言われガチャンと自動販売機が大きな音を立てた。

 中川からの手から差し出されたのは牛乳……それも先ほど豪快に飲んでいた500ミリリットルの紙パックのだ。

「しるこなんて今時期ハズレだろ。風原牧場の牛乳はまろやかで旨いんだ」

「は……はぁ」

 それこそ勝手に選んでオレの好みも知らずに与えて、中川は踵を返して行ってしまった。

 なかなか読み取れない人だな……手に入れた紙パックの牛乳を見て困惑しながらもふと笑ってしまった。


 さっきのは訂正で……苦手要素のあるぼっちヤンキー君だ。




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