14 / 37
13話 悲しくて切なくて、残酷なトラウマ
しおりを挟む
『お前のせいで俺の将来は……っ!』
『ごめんなさい……ごめんなさい……矢部さん』
『お前が壊したんだ。お前だって壊されても文句ないよな? なぁ、ムイト!?』
あんなに穏やかで優しくて、僕を励ましてくれた矢部さんが……変わってしまった。
変えてしまったのは僕……。
僕は決して矢部さんに迷惑を掛けたいなんて思っていなかった。
ごめんなさいーー。
ーーパッと目が覚めたのは白い部屋。
敏感に鼻孔に纏わりつく消毒液の匂い。
まだ、ここはーー病院?……あれから、浅い夢を見ていたのかな……少しでも逃げたくて。
「遠野くん、気が付いたか」
聞いたことのない大人の声。
パリッと糊のついた白いシーツと掛布団、それと枕。
似ているけど、違う。ここは病院じゃない。
「……あ、の」
「わたしは保健医の高岡と言う。遠野くんは突発性じんましんが起きたようだが今はキレイに消えているよ」
じんましん……それで保健室。
「以前からアレルギーや何らかの疾患はあるのかい?」
オレは首を振った。
「そうか……それじゃ本当に小椋くんの顔を見てじんましんが出たと言うのか?フフ」
「酷いですね、そんな事があるわけないでしょう」
オレの頭部の上で話しているのは、ステージで聞こえた忘れもない生徒会長、あの“顔”が居る!
見ない様に頭は上げない。
今、見てしまったら、今度はオレは……悲鳴を上げる。
「熱も平熱だし、指も動かせられるし軟膏を塗るまでもなく直ぐに消えたから一過性のものだと思うんだ。新入生だからか気持ちの問題もあるかもな」
保健医の先生はそう言って帰って良し!とオレをベッドから起き上がらせた。だ、だめ……“顔”が見える!!
「遠野、俺はこれから委員会に出なければならない時間だ。……一人で戻れるか?」
こくんこくんと首だけを下げて返事をした。
「すべて明日からだから、今日は部屋でゆっくり休め」
「……こくん」
「なんだ “こくん”って?」
後ろにいた生徒会長はオレの前に回り込んで顔を見ようとしただろうけど、それを自分の顔に手を添えて阻止した。
じんましんは出てないようだった。
「わ、わかりましたって事です……寮に戻ります、オレは」
「……そうか。お前、やはり俺の方を見ないんだな」
ドキン
「小椋くんが近くて遠野くんが照れてるだろ? そんなにいじめないんだよ。しかし毛色の違うコをご所望なんだな」
「別にご所望ではなく補佐ですよ補佐。ふーん……それじゃ俺はこれで。……まっすぐ寮に戻れよ」
……こくん。
生徒会長が保健室を出て行って、オレはひとまずほぅと深い溜息を吐いた。
「なるほど、彼は超絶イケメンとやらだもんな。直視できない程の緊張か、まぁこれから大変だ」
高岡保健医先生がきわどいことを発した。
でも、それは違うんですけどね!
「オレ、これからどうしよう……」
ボヤキに近いことを呟いたら、「また俺のところに来たらいいさ。今度はイケメンに耐えられる薬を調合しておくよ」そしてはッはッはッと豪快に笑った。
全く、人の事だと思って……それにしても保健医の先生のイメージとかなり掛け離れた高岡先生。
めっちゃ厳ついスポーツ系の先生だった。
『ごめんなさい……ごめんなさい……矢部さん』
『お前が壊したんだ。お前だって壊されても文句ないよな? なぁ、ムイト!?』
あんなに穏やかで優しくて、僕を励ましてくれた矢部さんが……変わってしまった。
変えてしまったのは僕……。
僕は決して矢部さんに迷惑を掛けたいなんて思っていなかった。
ごめんなさいーー。
ーーパッと目が覚めたのは白い部屋。
敏感に鼻孔に纏わりつく消毒液の匂い。
まだ、ここはーー病院?……あれから、浅い夢を見ていたのかな……少しでも逃げたくて。
「遠野くん、気が付いたか」
聞いたことのない大人の声。
パリッと糊のついた白いシーツと掛布団、それと枕。
似ているけど、違う。ここは病院じゃない。
「……あ、の」
「わたしは保健医の高岡と言う。遠野くんは突発性じんましんが起きたようだが今はキレイに消えているよ」
じんましん……それで保健室。
「以前からアレルギーや何らかの疾患はあるのかい?」
オレは首を振った。
「そうか……それじゃ本当に小椋くんの顔を見てじんましんが出たと言うのか?フフ」
「酷いですね、そんな事があるわけないでしょう」
オレの頭部の上で話しているのは、ステージで聞こえた忘れもない生徒会長、あの“顔”が居る!
見ない様に頭は上げない。
今、見てしまったら、今度はオレは……悲鳴を上げる。
「熱も平熱だし、指も動かせられるし軟膏を塗るまでもなく直ぐに消えたから一過性のものだと思うんだ。新入生だからか気持ちの問題もあるかもな」
保健医の先生はそう言って帰って良し!とオレをベッドから起き上がらせた。だ、だめ……“顔”が見える!!
「遠野、俺はこれから委員会に出なければならない時間だ。……一人で戻れるか?」
こくんこくんと首だけを下げて返事をした。
「すべて明日からだから、今日は部屋でゆっくり休め」
「……こくん」
「なんだ “こくん”って?」
後ろにいた生徒会長はオレの前に回り込んで顔を見ようとしただろうけど、それを自分の顔に手を添えて阻止した。
じんましんは出てないようだった。
「わ、わかりましたって事です……寮に戻ります、オレは」
「……そうか。お前、やはり俺の方を見ないんだな」
ドキン
「小椋くんが近くて遠野くんが照れてるだろ? そんなにいじめないんだよ。しかし毛色の違うコをご所望なんだな」
「別にご所望ではなく補佐ですよ補佐。ふーん……それじゃ俺はこれで。……まっすぐ寮に戻れよ」
……こくん。
生徒会長が保健室を出て行って、オレはひとまずほぅと深い溜息を吐いた。
「なるほど、彼は超絶イケメンとやらだもんな。直視できない程の緊張か、まぁこれから大変だ」
高岡保健医先生がきわどいことを発した。
でも、それは違うんですけどね!
「オレ、これからどうしよう……」
ボヤキに近いことを呟いたら、「また俺のところに来たらいいさ。今度はイケメンに耐えられる薬を調合しておくよ」そしてはッはッはッと豪快に笑った。
全く、人の事だと思って……それにしても保健医の先生のイメージとかなり掛け離れた高岡先生。
めっちゃ厳ついスポーツ系の先生だった。
0
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
「どスケベ変態おじさま(40↑)専用ボーイ♂ハメハメ店『あましじょ♡』へようこそっ♪」~あやくん(22)とたつみパパ(56)の場合~
そらも
BL
四十歳以上の性欲満タンどスケベ変態おじさまであれば誰でも入店でき、おじさま好きの男の子とえっちなことがた~っぷりとできちゃうお店『あましじょ♡』にて日々行われている、お客とボーイのイチャラブハメハメ物語♡
一度は書いてみたかったえっちなお店モノ♪ と言いつつ、お客とボーイという関係ですがぶっちゃけめっちゃ両想い状態な二人だったりもしますです笑♡
ただ、いつにも増して攻めさんが制御の効かない受けくん大好きど変態発情お猿さんで気持ち悪くなっている他、潮吹きプレイや受けくんがビッチではないけど非処女設定とかにもなっておりますので、読む際にはどうぞご注意を!
※ R-18エロもので、♡(ハート)喘ぎ満載です。
※ 素敵な表紙は、pixiv小説用フリー素材にて、『やまなし』様からお借りしました。ありがとうございます!
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
平凡顔のΩですが、何かご用でしょうか。
無糸
BL
Ωなのに顔は平凡、しかも表情の変化が乏しい俺。
そんな俺に番などできるわけ無いとそうそう諦めていたのだが、なんと超絶美系でお優しい旦那様と結婚できる事になった。
でも愛しては貰えて無いようなので、俺はこの気持ちを心に閉じ込めて置こうと思います。
___________________
異世界オメガバース、受け視点では異世界感ほとんど出ません(多分)
わりかし感想お待ちしてます。誰が好きとか
現在体調不良により休止中 2021/9月20日
最新話更新 2022/12月27日
真冬の痛悔
白鳩 唯斗
BL
闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。
ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。
主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。
むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる