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12話 あなたの顔が苦手なんです…!

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「聞こえないな、今、何を言った?」


講堂内はめちゃくちゃ煩いので聞こえていなかったようだ。

ちょっと大人げない言い訳だったから……安心した。


「皆、静かに!!」

副会長が声を張り上げて学園生の私語を制した。

シーンと静まってる……これはこれで緊張する。


「目を見て話さないのか」


それにしても、その“顔”が迫ってくる。他の役員はその場で動いていないのに!


「ひ、ひ、ひ、人見知りなんですっ」声が上擦った。

「そんなんで世の中を渡っていけないだろ? 俺が変えてやる」

彼の両手がオレのこめかみを掴み、無理やり正面を向かされてしまった。


再び、大ブーイングの嵐が巻き起こる。


うっ……ドアップの『その顔。』


ドクン ドクンと不吉な胸の鳴りに小さな悲鳴を上げてこれ以上耐えられなくて、その場から後方にぴょんと飛び跳ねてしまった。

一瞬、目を大きく瞠ったけどそれでもジリジリと再び迫ってくる生徒会長……。


「俺だと不服だと言うのか?」


オレは誤解だというように首を横に振る。


「すみません、違うんです……オレ……あなたの顔がーーーで、して……」

語尾が段々と尻つぼみになって……“苦手”って言葉が出て来なかった。

手や顔にぶわっとじんましんが湧き出た。


「……!?」


「あれぇ、あの可愛い名前の子って会長サンの顔を見てじんましん出たよ?」

「向糸兄さま??」

異変に気が付いたのか、小虎と他の生徒会役員が声を掛けるけど、オレはその途端によろめいて地面に膝をつくところに、その一歩手間で生徒会長に抱きかかえられた。


「補佐のついでに俺がしつけてやる。覚悟しとけ」


「……」


大っ嫌いで苦手だ……それでいて目鼻立ちが涼しく精悍で男の色気もあってキレイだと思っていた“その顔”の生徒会長の補佐なんて、オレには絶対に無理だーー!

これが事実なら悪魔に捧げる人身御供の儀式なのだ。

などとーーー現実逃避をした。
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