上 下
2 / 37

1話 ひきこもりの19歳

しおりを挟む
ーー高校2年の時まで、オレには年上で同性の恋人がいた。



 中学の時に自分が普通と違う性癖なんだって気が付いた。

 その中学の多感な時期に大学生の家庭教師として知り合った『矢部さん』にオレは恋をした。

 最初は淡い初恋の様な……恋に夢見るオレにとっては何もかもが新鮮で何もかもが初めて楽しかった。

 めちゃくちゃ勇気を持って告白した……その返事はーー

 『おれなんかでいいの?』

 はにかむ矢部さんにオレは大好きだと抱き着いた。

 それからは夢中だった。

 内気なオレに、こんな熱くなる情熱があったなんて驚くほど。


 しかし一年が過ぎた頃。

 夢が醒め始めるなんて……。

 恋人と別れることになったけど……アレが別れたって言うのかな……。

 それも、二度と思い出したくない程の虚しくて苦しい思い出になった。

 忘れたくても瞼を閉じれば色鮮やかに矢部さんの顔を思い出すのに、いつまでも思い出になれない。

『お前がおれに好意なんて寄こさなければ! お前のカテキョなんてしなければこんな仕打ちはなかったんだ、この淫乱!!』


 オレはいつまでも引きずってしまい高校にも行けず引きこもりになって、魂が抜けた状態になったのを本気で心配した両親は、全国各地の高校を調べ上げて自然が多く環境的にも良いと思われる全寮制の学園を勧められた。

 地元から離れた田舎を選んだのは、前に進むには自然豊かな学校が良いと思ったからだと言う。

 それほどまで両親に心配を掛けてしまった事が今になって気づくなんてーー。

 オレは我儘にも一年引きこもり、受験に更に一年……本来なら卒業する年齢になっているはずだけど『勉学は遅いなんて事はないよ』と父さんに背中を押された。

そして今年の春、高校受験を控えていた従兄弟である子虎も同く、私立香生学園高等部に入学する事になった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

管理委員長なんてさっさと辞めたい

白鳩 唯斗
BL
王道転校生のせいでストレス爆発寸前の主人公のお話

平凡顔のΩですが、何かご用でしょうか。

無糸
BL
Ωなのに顔は平凡、しかも表情の変化が乏しい俺。 そんな俺に番などできるわけ無いとそうそう諦めていたのだが、なんと超絶美系でお優しい旦那様と結婚できる事になった。 でも愛しては貰えて無いようなので、俺はこの気持ちを心に閉じ込めて置こうと思います。 ___________________ 異世界オメガバース、受け視点では異世界感ほとんど出ません(多分) わりかし感想お待ちしてます。誰が好きとか 現在体調不良により休止中 2021/9月20日 最新話更新 2022/12月27日

真冬の痛悔

白鳩 唯斗
BL
 闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。  ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。  主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。  むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

処理中です...