腐男子★恋愛事情

62. 紙隠し顔はだぁれだ

　
　　「……」

　僕はノックした手を引っ込めて生徒会室のドアの前でジッと待っていたら、カチャっとドアが開いた。

「はーい、誰かなぁ……？」

　ドアを開けてくれたのは声でわかるゆるい話し方をする会計だ。ゆるい話し方はするけど、どうにも僕の妄想するチャラ会計のようなはだけたシャツやキスマークなんて付けてない…と言うより他校生…それも女子高生の恋人がいることが最近判明したのだ！……全くけしからんっ

「ええー？ なんでココに貼ってあった注意書きの紙を顔なんかにつけてるの、中田君？」

　なぜだ、一発で会計は僕が中田だと分かったんだ！？

「……」

「あ、上原先輩かぁ。中にいるよ～ 呼ぶ？それとも入る？」

「……」

「って、この紙を外そうっか」

　いろいろ話し掛けてくる会計は勝手に紙を取り外そうとするので僕は抵抗を心得た。キュー〇ーの頭を見せるわけにはいかない。迫りくる会計の手をシュッシュッっと首を左右に揺らして魔の手を避けた。けど……。


ビリリ……

「……ッ！」

　や、破れたじゃないかっ！！いや、まだ鼻から上半分は残っている。

「破れちゃったよ。何でそんなに必死になってんの」

　目の前の会計は首を掲げているようだけど、どうしても僕の顔を晒したいようだ。

　
「お前ら、入り口で何をしてるんだ？」

　紙の隙間からボヤっと見えたのはタカ先輩で、室内でその辺を通っていたのか顔だけを向けて声を掛けて来た。

「えっとね、中田君がまたなんかおかしい事しててさ～ 」

「あ？アイツ、またどこかに隠れているのか？」またってなんだ、失礼だな……！

「あのー コピー終わってますけど……え、紙作面！？…なんてしてる人マジでいるんだ……」

「っていうより、キョンシー見たいですね？ 香港の映画で見たことが」

「げぇ。怖ぇわ」


　わらわらとドアの周りに集まってきた女王会長を覗く生徒会役員と何故か風紀委員長までいた。

「皆、何言ってんの。この子、中田君だよ～ 雰囲気でわからない？」


　会計こそ何言ってる！ わからないで正解なのだ……！

　僕は仕切り直して出直そうと後方に踵を返そうとした時、タカ先輩が腕を掴んだ。

「はぁ…誉！こんな紙つけて歩くなんて危ないだ……は？」

　顔半分守られていた紙がタカ先輩によって完全に外された。
　
　なんてことだ……キュー〇ー頭がお見えになったじゃないか！

　な、泣くぞっ


「「「！？」」」