腐男子★恋愛事情

24. 萌えは尽きないのだが

　
　猫耳ファンのあざとい系達が何故か輪になって踊ってる。
　葉山はじーと羨ましそうに見てるけど１年生は遠慮してるようだ。僕は永久に遠慮したい。
　それにしてもこの場に風紀委員長が居ないのであれば僕の楽しみが成就しない。で、これからこっそり……お隣の風紀委員室にお忍びで猫耳の野望を是非とも遂げなければ僕が放課後に舞い降りた意味が無いのだ！

　ハァハァ……早く、早く装着させたいそして……あの妄想……たまらんッッ！！最近、僕は変態になってないだろうか……いやいや多少の変異は受け入れなければッ！

「ん？」

　会議室のドアが少々開いていて、その隙間からちらちらと廊下を覗き視る人物に目がうつった。

　覗いているのは、藤田転校生だぞ？

　尻を出して少し甘いアングルだが、あれでは見つかってしまうなぁ。僕には叶うまいが。

「チッ…アイツ来ないなんて……騙しやがって」

　ふぉー！！？

   チラッと魂が抜けるほどのとぐろを吐いたような気がしましたが気のせいでしょうか？

　僕の気配に気づいた転校生は急にころっと何事もないようにびびりに訂した。

   キャラか？ ビビリはキャ……！？

   うっわわあ～ 転校生は猫かぶりキャラ！？

　吃驚して心臓に悪いけど、気の強い転校生が攻め要員人気者を隅っこから手玉にとって喰らうなんてどうですか総攻め主人公！！
    じ、じじじゃ副会長は受け要員！？それから生徒会の皆様次から次へと懐柔されて喰っちゃう攻め主人公。キタ総攻めだーーーー！！

　静かにハァハァしてる僕をにっこりはにかみながら見てるけど、気になるのは廊下のようで、その廊下をずーーっと歩くと生徒会室まで伸びているのを知ってるようだ。
　き、気になるのですね転校生君？ 実は副会長の何かを狙って今すぐむらむらと……『カチャッ』

　んん？？ 今、風紀委員室が開きませんでしたか？

　気が付くと転校生がいない！う、嘘！？今、目の前にいたのにナゼ気づかなかった？

　風紀委員室のドアが開いていて僕はドアの隙間から様子を伺った。なんなのだ、あの転校生、副会長に会いたかったのではないのか？ だから遠く続く廊下に生徒会室を羨望していたはずなのにナゼ風紀委員室？
　あの“騙された”発言は副会長に会えない騙された発言なのか？
　そもそも、風紀(委員長)のファンの集いだから生徒会の副会長はこの場には来ないんだと教えてあげた方が良いのか……？ んん？
　風紀委員室なんてタダの強面不良風紀委員長が居るだけだぞ！？

　ジーと隙間から風紀委員室を僕は覗き見たが成田委員長は居ないようだ。あの強面はすぐ発見できるからね。

「……！」

　待て！？ って言うか何故強面委員長が自分の巣に居ないのだ！？  せっかく昼に教えてあげたのに、どんだけファンから逃げているんだ成田風紀委員長。モテると言っていたのは只のナルシーか！

　室内に居たのはキラリと銀色に光った眼鏡の風紀副委員長、ただ一人。

　さすが風紀の鏡だね、放課後まで職務全う――

「お前が槙人をそそのかしたんだ！！」

　僕のつぶらな瞳がこれほどまで大きくしたことは今まであっただろうか否ない。

　転校生が風紀副委員長に迫ってる！？

　転校生と副委員長とのご関係は？？あれ、お相手は副会長だったはず？

｢それは誤解だと言っているのに、何度言ったら分かるんですか？」

｢煩い！ 槙人が変わったのはお前のせいだってわかってるからな！ 槙人は…オレとの約束……まきとは…っ！」

　え、え、風紀副委員長が副会長に何したの！？ ちょっとちょっともっともっと話し聞かせてーーっ！！

｢君と離れてマキは安心したと言っていましたよ。苦しんでいたのも知らないなんて良く幼馴染みだって言えますね」

　ふぉ！？なぬ幼馴染み！と、仰ると、ここも幼馴染み三角関係の縺れ！？

「マ、マキが、そんな事を言うはずがない……っ」

「悪いがオレは忙しいので、部外者は出て行くように」

  ん？ に、しては……？

　僕はもっとドアにすり寄せて擬態して耳を傾けた。