腐男子★恋愛事情

９. このトキメキはイミテーション

前生徒会長の濃厚なキスは長くて頭もクラクラ回る。仕舞いには腰が怠くなる。もう、やめて下さい。僕、死んじゃうかもしれない。

やっと唇が離れて、めちゃくちゃ近かった前生徒会長の無駄に整ってる顔面が離れてキスが終わったのだと安心したけど、自分の口から涎があっちの口と細い糸状に伝っていて恥ずかしくなって手で掻き取った。

｢前生徒会長って、キ……キスが好き？｣ 

 無言になるのもなんか嫌なので適当に口から出た。けどこんな話題は避ければ良かった。

｢ああ、好きだな｣

｢う、巧いもんね？ さすが前生徒会長様だし｣

｢役職は関係と思うが、そうか……気持ち良かったのか？｣

｢っ！こ、こんな事をするのは、ぼ、僕じゃなくてですねー相場はチワワんとか……｣

｢お前の他に誰がいるんだよ。顔が真っ赤だな、可愛い｣

｢ぴやっ！！前生徒会長、前…っ｣ 

今度は僕の両方のほっぺをお触りしてきた。BL的にめっちゃ萌えだけど、これこれ！

｢いい加減、貴弥って名前呼べよ｣

ふあ！また顔面が迫ってきた！ ほんともうどうかしてる腐男子の仮面が剥がれるじゃないか、めちゃくちゃゾウガメの様に分厚いんだぞ！

ちゅっと軽く唇をくっつけられてさっきと同じくぎゅうって抱きつかれた。

｢ほら、貴弥って呼べ。タカでもいいぞ｣

｢た、、たたたかや？｣ 


トクンッ


うわうわあうあうなんだなんだ今の。


こ、こんなファンタジスタな萌セリフの安売りしちゃってあほうな前生徒会長だ。

それに乗る僕も、僕かも。

だって“たかや”って言っただけなのに、とびきり優しい笑顔を見せるんだもんな。……真顔の無表情が狡い。

トクンと胸に何かが落ちたのは、きっとハスハスし過ぎたからだ。

前生徒会長を見てトキメクなんてこんなのイミテーション！！ありえん……。

もしくはさっきのキスで心臓もろともきゅん死してしまった抜け殻の僕だ。