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ネコミミ幼馴染ととある日曜日

10匹目 『幼馴染が裸で風呂を上がりやがったのだがどうしてくれようか?』

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「……ごちそうさまでした…にゃ」

「うっし…それじゃ、風呂入って寝るかぁ…」


 晩飯を食い終え、挨拶をすませる。

 まあ、デザートも無くはないのだが……それよか、既に眠たげな表情に変化してきている猫宮を優先すれば良いだろう。

 と言うかあれだな。眠くなるのが早すぎるんだよ。


 ……いやマジで、あれ、さっきまで俺ら寝てなかったっけ!? なんで7時間近く居眠りした直後1時間程度しか経ってないのにこいつは既にうつらうつらしてんだよ!


「なあ猫宮。お前、さっきまで居眠りしてたよな? なんでもう眠くなってんだよ」

「む…えっとね、わたし、いっつも10時には寝てるから………にゃ…」

「…それで、習慣になってるから、と?」

「多分、だよ~… ごめんね犬斗、やっぱり早い、よね?」

「いや、まあ……寝る2時間前には風呂に入っておいた方がいいと言う。取り敢えず、沸かしてくるからちょっと待ってろ」

「うん、ありがと~…にゃぁ……」


 んなバカな。そう思う気持ちがないでも無い。あれだけ寝ておいて、そんなにすぐ眠たくなるものなのか、と。

 ただ、早く寝ること自体は悪い事ではない。こいつが眠いと言っているなら、それに抗わせるのも悪い、しな。


 ……ん? いや、別にこいつにそこまで気を使う必要があるのか……? 今日の所業を思い返せば、眠たい中で無理矢理起こさせておくとかの方が、お仕置きになって良いんじゃないか?

 悩みつつも、身体は勝手に風呂場に向かう。


 ……仕方ない。今日は、さっさと寝させてやろう。




 そうして俺は猫宮の為、風呂を沸かすのであった。


 ◆◇◆


「おい、沸いたぞ。入ってこい」

「ふにゃ…? けんと…分かった……」


 絨毯の上で横になっていた猫宮を揺り起こし、入浴を促す。

 僅かに涙を浮かべた目尻をネコの手で擦りつつ、緩やかに立ち上がって、風呂に入る猫宮を見届けたのちーーーそっと、ヘッドホンを装着した。


 いやね? ほら、あいつは仮にも女子だし、ね? 水が跳ねる音とか聴いてると嫌が応にも意識しちゃう訳ですよ。

 それなら最初から聞かなければ良い。そう思っての行動だ。

 コードの先に繋がった携帯端末の画面を弄り、可愛いネコの動画を再生する。

 これに集中していれば、風呂の音は聞こえず、意識する事もないッ! ーーふっ、完璧な作戦だ。


『ニャ~、ニャ~』と、パステルカラーで彩られた部屋をうろつき回る子ネコを見ていれば、時間が過ぎるのも忘れてしまう。




 ーーー忘れ過ぎた結果が、今の俺なのだが。


「…ね~…けんとぉ~……ふにゃぁ…」


 小さく。ヘッドホンからでは無い、微かな声を聞いた。

 それが猫宮の物であると気付き、ああ、風呂から出たのだなと。

 そう考える。当然の判断だろう。ーーーそれに際して、のも、至極当然ーーー


 故に、今俺の眼に映る光景の中に、地震の罪はないと信じたい。

 ヘッドホンを外し、後ろを振り向く。


 そこには、まず足があった。細く綺麗な、一切の汚れもシミも存在しない白い脚が。


 ………ん?  んんんんん???


 そんなまさか。徐々に目線を上に上げながら、そう考える。

 footーーー見える。

 legーーー見える。

 太ももthighーーー見える。


 そこまで視線を起こし、そして、一瞬で下に向ける。


 額に冷や汗を浮かべ、内心、今日何度目かになる叫びを上げる。



 ーーーーーーなんでこいつ、服着てねえんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!! と。


 足、脚、腿。それら全てが一糸纏わぬ姿で俺を待ち受けるとは、数分前まで気楽にネコ動画を見ていた頃の俺には想像もつかない光景だろう。一度タイムマシンで遡ってぶん殴ってやりたいぐらいだ。

 無理な願いは置いておき、代わりに自分の顔を殴り、下を向いたまま猫宮に話しかける。


「け、犬斗ぉ…!? じ、自分で自分叩いて、何かあったの……もしかして、わたしの所為……だだだ、だったらごめんなさい!!」

「い、いや、それは気にしなくても良い。過去の俺を粛清しただけだ。……それよか、なんで服を着ていないんだ。ここ異性の家だぞ、まあ侵入してる時点で今更だが、危機感が無いとかそういう次元じゃねえよ」

「え……?」


 心底不思議そうな声音で疑問符を浮かべる猫宮に、眼を閉じたまま、呆れて問い返す。

「……いや、逆にだな? 仮にお前が男だったとして、テレビに出てる某46人とかと同レベルの奴が裸で目の前にいたら困るだろ!?」

「…わたし、その人知らない……」

「あーもう、じゃあ例えばだ! 片想いしてる相手が裸だったら興奮するだろ!? そういう事だよ!」


 その言葉を聞いた猫宮が分かりやすく顔を赤面させるが、違う、多分お前が今想像したそれとは言ってる意味が決定的に違う!!


「…っていう事は、犬斗、わたしの事を……」

「だから例え話だって言ってんだろうがこのねぼすけがァァァァァァ!!!!!」



 睡魔によるものか、はたまたただ鈍感なだけなのかーー俺の叫びの意を解さない猫宮は、不思議そうに「にゃぁ?」と呟いた。


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