ヴァイオリンのためのソナタ【完結】

 彼にしてやりたかったことはただ一つ――。もう少しだけ優しくしてやりたかった……。

 ベルリンに住む日本人青年ヴァイオリニスト、神坂薫の元に、弟だと名乗る金髪碧眼の少年が訪れた。
 薫のパートナーであるドイツ人青年、リヒャルトは、その少年の言葉を鼻先であしらい、素っ気なく追い返す。
 だが、その少年はニューヨークに住む薫の兄、透と結婚したアメリカ人女性、アニーの弟で、薫にも義理の弟たるエリオットだった。
 薫は、かつて愛した女性、兄と結婚したアニーと重なるエリオットの姿に、冷たくエリオットを撥ね付ける。
 そして、悲劇は起こった。二人が奏でるのは朝凪の協奏曲(コンツェルト)。
 陸からの風と海からの風が代わる時、一時、風の止まる朝凪のように、静かに逝った……。

※R-15 一部、暴力や性描写があります。苦手な方はご注意ください。
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