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Karte.7 吸血鬼の可不可-血
吸血鬼の可不可-血 24
しおりを挟む「はい、仁くん。クリスマス・プレゼントだ」
部屋へ戻ると、春名が機嫌を取るように、仁の前に、リボンの掛かった大きな箱を差し出した。さっきの電話が、かなり堪えているのだろう。
だが、仁は、もうそんなことなど忘れていた。そして、代わりに、レオに手渡されたプレゼントのことを思い出していた。返す積もりでいたのに、袖口から見えた包帯と、クリフの介入のせいで、返すことも忘れて、部屋まで持って来てしまったのだ。
「そのプレゼントは誰からだい、仁くん?」
春名も、メールと一緒に持つ小さな箱に気づいたのだろう。眉を寄せて、問いかける。
「あの……。判らない。メール・ボックスに入ってたから」
本当のことを言うことも出来ず、仁は言った。
「メール・ボックスに? 一階下のスウェーデン美人からかな」
まだそんなことを覚えているらしい。それでも、今の仁には救いだった。
春名は、しげしげと箱を眺めている。
「カードも付いてないのか……。開けてごらん。相手が判る」
息が詰まる提案だった。
「――。でも……マイクたちの厭がらせかも知れないから……っ」
「そんなことはないさ。子供の入れる店の刻印じゃない。――それとも、ぼくには内緒かい?」
「そういう訳じゃ……」
「ひょっとして、まださっきのことを怒っているとか? あれだけの報復をしておいて」
「……」
仁は仕方なくメールを置き、ソファの前のロー・テーブルで、箱に掛かるリボンを解いた。
心臓が、痛いほどに鼓動を速める。
箱を開ける手が、細かく震えた。
心が竦んで開けられないのだ。
「何を緊張しているんだ? 僕が開けてやろうか?」
春名が痺れを切らしたように、手を伸ばした。
ハッ、として思わず、
「ダメ――っ!」
仁は、春名の手を振り払った。
何が入っているのか判らない箱を、春名に開けさせる訳にはいかなかった。さっきから、箱の中を視ようとしているのに、意識を集中することも侭ならない。
突然の仁の行動に、春名は、きょとん、と目を見開いている。贈り主を知らないのだから、当然のことだろう。
「驚いたナ……。そんなにあのスウェーデン美人のことが好きだったのか?」
と、見当違いの言葉を返す。
「え? あの――」
「心配することはないさ。君の初恋に水を差すような真似はしない。それにしても……。同じ年頃の子に興味を持たないのは知っていたけど、人妻が好みだったとはな」
そこまで思い込まれるのも迷惑である。
「もうドクター.春名の前でなんか開けない」
仁は、フイ、っとそっぽを向き、開けかけの箱をポケットに仕舞った。
「へ? 途中でやめたら気になるだろう――」
「ぼくがもらったんだもん」
「メール・ボックスに入っていたんだろう? カードもなしで――。開けなければ、君宛てのものかどうかも判らないじゃないか」
「それは……」
「仁くん宛てのものではなくて、僕宛てのものかも知れない」
「違うもんっ。開けて見なくても、ぼくには判ってるもん。ちゃんと中身も視えてるもん」
仁は頑なな言葉で、ポケットを押さえた。
春名が天を仰いで、肩を竦める。
「OK。――なら、僕からのプレゼントを開けてごらん。もう中身は判っているかも知れないが」
と、差出人不明のプレゼントを諦めて、少し意地悪く、言葉を返す。
だが、仁は睨まなかった。
「ぼく、もう一杯、買ってもらったから……」
と、申し訳なさそうに、視線を落とす。
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