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Karte.13 籠の中の可不可―夜明
籠の中の可不可―夜明 16
しおりを挟む少女は、五分ほどで意識を取り戻した。――いや、取り戻したようで、隣りの部屋を掃除する沼尾の耳に、昔懐かしい童謡が聴こえて来た。
かごめかごめ
籠の中の鳥は
いついつ出やる
夜明けの晩に
鶴と亀がすべった
後ろの正面だあれ?
「――気が付いたのか。気分はどうだい? 落ち着いたなら、君の名前や家を――」
沼尾が言いかけると、
「サクちゃんが……」
「ん?」
よく聞き取れなくて問い返すと、
「サクちゃんを……。サクちゃんを――殺した――!」
再び少女が襲い掛かった。――と言っても二度目、ついさっきのこともあるので、今度はすぐに両手を封じ、首を絞められないように先手を打った。そして、
「――殺した? 君が?」
聞き取れた部分を、問いかける。
すると――、
「わたし……? わたしが……?」
少女が混乱するように瞳を揺らした。
「ちがう……。わたしは……」
「僕も違う」
沼尾が言うと、明らかに少女の両手の力が緩んだ。
「……ちがう?」
「ああ。――気分が悪くないなら、君を家に送り届けようと思うんだが……家はわかるかな?」
その問いには、
「……」
長い、長い、沈黙があった。
そして――。
また、かごめかごめを歌い始めたのである……。
もちろん、だからといって、ここで面倒を見る訳には行かない。見たところ、まだ未成年だし、誘拐やその他諸々の罪に問われる可能性もある。
――仕方がない。
「僕は少し村へ降りて来るけど、その間、ここで待っていられるかな?」
これだけ特徴的な娘だ。村で訊けば、誰もが家や両親のことを知っているだろう。
そんな訳で沼尾は、少女を庫裏に残し、一人で村の人たちに少女のことを訊ねることにしたわけである。
そして――。
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