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61.ちゃんと面倒見るから!
しおりを挟むすっかり角が切られてしまって今にも死にそうな様子の見た目兎はユウタ監視の元、シャルロッテにもふられている。
「元々、冬にだけ出てくる品種だ。ある程度涼しい場所でないと生存が難しいだろう。それに、あまり狭い場所だとストレスがかかる」
「マジかぁ……。でも、俺ユキちゃんとお別れするの嫌だからおっきい家に引っ越しできるように頑張るよ!」
「いや、そんなでも魔獣だぞ。飼育できる家、人が近づかないような場所、適した環境を揃えてそれを維持するのは非常に困難だ」
情熱だけではどうにもならないとリヒトが説得を試みるが、ユウタは「ちゃんと面倒見るから!!」と雪一角兎を抱きしめた。
ユウタはなぜか昔から小さい動物には好かれなかった。動物園に行けば兎は即行隠れるし、鳥は遠くへ飛んでいく。ライオンやトラは腹を出してくるが、彼は別にそんなことをして欲しいわけではなかった。人並みに犬とか猫とか兎とかハムスターとか小鳥が好きだった。ほどほどの大きさの動物をもふりたかった。あまりに飼い犬や飼い猫が怯えるからと何かやったのではないかなんてキレられた経験も一回や二回ではない。だからかもしれない。今は震えているが、最初はユウタを追い払ってやろうと立ち向かってきた真っ白な兎に運命を感じたのは。さっさと逃げていればこんな目に遭わなかった。……などと魔獣がわかるはずもなく、段々と「どうにでもして」という顔になってきている。
「運命の子なんだ!!」
何か別の小説みたいなことを言い出したユウタにシャルロッテはちょっと呆れた目を向けた。
「じゃあ、私が買った土地だがそこに住むか?」
「おい、クレア!」
「住んでもらわないとどちらにせよ、家は傷む」
クレアは別の薬草を植えるのに違う土壌が欲しかったので、師の付き添いの元人里から少し離れた土地を購入していた。それを後から知ったアレクサンドラは「知っていれば報奨にできたのに!!」と当時は悔しがった。
「春になればそこの畑に薬草を植えにいく。家は前の持ち主のものが残っているが、まぁ使わないなら潰すだけだから」
「賃貸にするとして、毎月いくらにするとか決めないとな」
地図と買ったという土地や家の話をしながら「家賃とか相場わからないな」と二人は首を傾げた。
「よし、明日レディアが来るから相場とか聞こう」
「お金の契約だけはきっちりしとかないと、関係性が終わるからな」
リヒトは魔獣を飼うことに否定的だが、クレアからすれば騎乗するために馬の魔獣を飼い慣らそうとする騎士は少なくはないし、献上されるものだってあるのでそう厭うほどのものではない。馬の魔獣と馬を掛け合わせた騎獣も稀に売られている。馬よりも魔馬の方が強い。だが、懐くことはあまりないので観賞用になりがちだ。懐いたとすればその人間は一騎当千とも言われる。エルフからすればドン引きでも一定数魔物を飼う者はいるのだ。
そんな魔馬たちに比べれば多少通常より凶暴ではあるが、可愛い兎だ。十分対応できるだろう。
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