上 下
235 / 249
狙われるザッパムーン星

能力100%を目指したのだが…

しおりを挟む
 いつものように放課後も授業を受け、それが終わって一般棟へ行くためにエトワール学園の研究棟の廊下を歩くエミール家一家。気が抜けたそのとき、


「さて、国家元首全員を集めての会議も終わったことだし、あれ・・に取りかかろうか」


 そう、思い出して独り言をこぼすエミールに、


あれ・・とは何ですの?エミール様」


 そうたずねるヘクディー。


「あぁ。みんなには言っていなかったか。まずはメティスシステムを全て復活させて、それから余裕があれば他の通信インフラも全て…のどれだけできるか分からないが、とにかくできるだけ復活させたいんだ」


 ザッパムーン星のスーパーコンピューターシステム群であるメティスシステム。それが使えれば戦局を見極めるのに大いに役立つであろう。そう。使えれば・・・・

 実際のところ、メティスシステムはスーパーコンピューターシステム群。システム群なのである。全てが稼働状態のときにその真価を発揮する。しかし、今現在、稼働しているスーパーコンピューターは、プランティニカ王国とファクトリニス王国にあるものだけに限られている。(第188部分、第5章『勉強とこの世界の把握』の『試験の予約と謎の女性僧侶』参照)。

 したがって、ニムテズ大陸、バーハーグト大陸、シンドーフ大陸のメティスシステムが止まっており、メティスシステムの3割も稼働していないのが今の状態であった。


「メティスシステムは実は現在、3割も力を出せていないんだ。メティスシステムだけでも全部稼働させたい」

「そういうことですのね。分かりました。ここは家族全員で事に当たりましょう」


 そう返答するヘクディーであったが、エミールは戸惑い、


「何も全員で当たることは無いだろう。それぞれやりたいことも、やらなければならないこともあるだろうに…。1人2人手伝ってくれれば…」


 すると、アボシーは、


「いいえ、情報を甘く見てはいけません。どんな極悪兵器を使えたとしても当たらなければ何の効果もありません。兵力も大事ですが情報を甘く見てはいけません。情報収集と分析、それをになう設備を持っていながら整備をおこたり、使えない状態で戦いに挑めば守れるものも守れません!今の最重要課題でしょう!」


 言っていることの方向性は正しいのだろうが、その表現は…。と、残念に思いながら、エミールは家族全員の顔を見ると、全員やる気の顔をしている。ここはやる気をそぐのは愚策ぐさくだと思い直したエミールは、


「分かった。全員でやろう。ただし、抜けなければならないときは、ちゃんとやるべき事をやること。それでいいね?」

「「「「「「イエス!マム!」」」」」」


 『マムじゃなくてお父さんだよ?』 変なテンションになったエミール家一家であったが、分かってくれたのならそれでいいかと思うエミールであった。

 そこで話しは終わりではなかった。エーレンフリートが「あっ」とつぶやいて、


「お父様お父様。成功するかは分かりませんが、こんな術式を思いついたのですが…」


 エミールに見せた、投影の魔法を使っての魔法術式の概略図がいりゃくず。…地球ではフローチャートと言うそれを家族全員がのぞき込み、


「エーレンフリート、今その話題をブッ込んできたということは、細部まで詰めているということかい?」

「はい。僕なりに実現可能なところまで詰めてはいますが、何分なにぶん試したことがありませんで…」


 すると、エミールは黒い笑顔を浮かべて、


「ふっふっふっ。コレ・・の場合、アイデアが出ただけでも立派なものだよ。それに、具体的に細部まで設計できているなら、それを見て間違いを発見できるし。なに、みな協力してくれるさ!家族だろ?」

「「「「「「イエス!イエス!マム!」」」」」」


 変なテンションは、とうとうエミールにまで感染し、エミール家全員が変なテンションでヤル気になり、


「そうと決まったらまずは学食へ行くぞ!今日は長くなりそうだ。みな、それを考慮こうりょしてちゃんと1食分食べろよ!」

「「「「「「イエス!、イエス!イエス!マム!」」」」」」


 そうして意気揚々いきようようと学食へ向かい、自分たちの1年A組の教室で、エーレンフリートの術式・・みなで詰め、細かくモジュールに分解して家族で実験を重ね、またそれをつなぎ合わせて実験を重ね、実に8時間。そうしてエーレンフリートが思い描いた術式が完成するのであった。


「エーレンフリート、コレ単体で強力じゃね?」


 話し方の壊れたエミールに、


「…そうかも知れません」


 申し訳なさげに答えるエーレンフリート。


 エーレンフリートが考えた魔法は、精神世界の実時間の止まる性質を現実世界で起こし、なおかつそこで行なわれた物理的な作用は現実世界の時を再度動かしても有効にするというとても強力な時間操作魔法であった。

 この魔法を使うとどうなるかというと、時間を停止させた状態で物を動かすと、通常は実時間ではほぼ0の時間で力がかかるものだから、ちょっと触れただけでも物が壊れるのだが、それが起こらずに、実時間を再度動かしても物は停止中に動かしたときの位置のまま。

 つまり、今回の例で言えば、コンピューターを修理しようとしていろいろと触っても物は壊れず、1分にも満たない実時間で多くの、というより膨大ぼうさいな作業ができ(それは術者のさじ加減)、あっという間に修理が完了するというものであった。


「ふっふっふっ。この魔法があればメティスシステムだけとは言わず、全ての通信インフラを再起動できるな!」

「やったな!エーレンフリート!」

「天才ですわ!エーレンフリート!」

「英雄だな!エーレンフリート!」


 実際に偉大な魔法なのだが、みょうなテンションで微妙なめ方をされるエーレンフリート。


 しかし、実際この魔法は本当に偉大で、余裕を持って予定を組んで実時間1週間、実労時間3年、実際は時間を止めながら休憩きゅうけい睡眠すいみんったから… 計算したくもない。

 …ともかく、実時間にして1週間にてザッパムーン星の全情報インフラ(端末を含む)を、見事復活・・させたエミール家一家であった。



 折角せっかく“情報通信機器の理論と設計”の授業を受けているのに何故なぜ復活・・とどめたかって?


 地球のコンピュータに関わっている者の一部のグループに“ソフトウエアがれる”という表現がある。

 これは何も古いソフトウエアで今に合っていないから新しいものを使おうぜ!という意味ではなく、多く者に使われ、修正され、より信頼性の高いソフトウエアをす表現である。


 まぁ、修正された部分はれ具合がうすかったり、“動かしたときに正しい答えを出してくれた”のと、“ソフトウエアの設計に矛盾むじゅんが無い”とは必ずしもイコールではないというプログラムに関わる者のジレンマがあるのだが…。


 とにもかくにもこれでザッパムーン星の全情報インフラが復活した。


「今は防衛ぼうえいに全力をそそがなくてはいけないから今は無理だけれど、戦争が終わったら、ザッパムーン星の情報革命がきて、地球にあったあんなサイトが…」

「こんなサイトも…」

「あれもできたりして…」

「「「「「「ふっふっふっふっふっふっ…」」」」」」


 そっちがメインじゃないよね?

 全員で暗いみを浮かべるエミール家一家なのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

兎人ちゃんと異世界スローライフを送りたいだけなんだが

アイリスラーメン
ファンタジー
黒髪黒瞳の青年は人間不信が原因で仕事を退職。ヒキニート生活が半年以上続いたある日のこと、自宅で寝ていたはずの青年が目を覚ますと、異世界の森に転移していた。 右も左もわからない青年を助けたのは、垂れたウサ耳が愛くるしい白銀色の髪をした兎人族の美少女。 青年と兎人族の美少女は、すぐに意気投合し共同生活を始めることとなる。その後、青年の突飛な発想から無人販売所を経営することに。 そんな二人に夢ができる。それは『三食昼寝付きのスローライフ』を送ることだ。 青年と兎人ちゃんたちは苦難を乗り越えて、夢の『三食昼寝付きのスローライフ』を実現するために日々奮闘するのである。 三百六十五日目に大戦争が待ち受けていることも知らずに。 【登場人物紹介】 マサキ:本作の主人公。人間不信な性格。 ネージュ:白銀の髪と垂れたウサ耳が特徴的な兎人族の美少女。恥ずかしがり屋。 クレール:薄桃色の髪と左右非対称なウサ耳が特徴的な兎人族の美少女。人見知り。 ダール:オレンジ色の髪と短いウサ耳が特徴的な兎人族の美少女。お腹が空くと動けない。 デール:双子の兎人族の幼女。ダールの妹。しっかり者。 ドール:双子の兎人族の幼女。ダールの妹。しっかり者。 ルナ:イングリッシュロップイヤー。大きなウサ耳で空を飛ぶ。実は幻獣と呼ばれる存在。 ビエルネス:子ウサギサイズの妖精族の美少女。マサキのことが大好きな変態妖精。 ブランシュ:外伝主人公。白髪が特徴的な兎人族の女性。世界を守るために戦う。 【お知らせ】 ◆2021/12/09:第10回ネット小説大賞の読者ピックアップに掲載。 ◆2022/05/12:第10回ネット小説大賞の一次選考通過。 ◆2022/08/02:ガトラジで作品が紹介されました。 ◆2022/08/10:第2回一二三書房WEB小説大賞の一次選考通過。 ◆2023/04/15:ノベルアッププラス総合ランキング年間1位獲得。 ◆2023/11/23:アルファポリスHOTランキング5位獲得。 ◆自費出版しました。メルカリとヤフオクで販売してます。 ※アイリスラーメンの作品です。小説の内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ

阿弥陀乃トンマージ
ファンタジー
 どこにでもいる平凡なサラリーマン「俺」は、長年勤めていたブラック企業をある日突然辞めた。  心は晴れやかだ。なんといってもその日は、昔から遊んでいる本格的ファンタジーRPGシリーズの新作、『レジェンドオブインフィニティ』の発売日であるからだ。  「俺」はゲームをプレイしようとするが、急に頭がふらついてゲーミングチェアから転げ落ちてしまう。目覚めた「俺」は驚く。自室の床ではなく、ゲームの世界の砂浜に倒れ込んでいたからである、全裸で。  「俺」のゲームの世界での快進撃が始まる……のだろうか⁉

【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。

飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。 ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。 そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。 しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。 自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。 アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...