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勉強とこの世界の把握

アボシー王城へ

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「おぉ。ちょっと見ないうちにずいぶんと成長したな」

「まぁまぁまぁまぁ、大きくなって」


 ザガントリアシティの王城に帰る前に寄り道。アハントルト王国にある麻宗邸へと寄ったのだ。

 大人全員を集めて成長促進の話しとアボシーの話しをする。


「そりゃヘクディーの親御さん、ザガントリア国王夫妻は怒るだろう」

「でも仕方ないんです!神託なんです!」


 二郎はあきれた目をして、


「分かった分かった。お前は父さんの子だな。奥さんを5人も10人ももらうんだな」

「そんな意地悪言わないで下さい」


 二郎は真剣な顔に戻り、


「で、ヘクディーちゃんはこのことをどう思ってるの?」


 ヘクディーも真剣な顔をして、


「アボシーのことは、一緒に暮らしてみて、話してみて、それからじゃないと何も決められないと思ってます」

「そうか」


 二郎は3人に向き直り、


「麻宗家としては事情は分かった。この話しがまとまるったらアボシーさんを家族として迎え入れる。エミール、ザガントリア国王夫妻にも話しに行ってやるからそう固くなるな」

「はい。ありがとうございます」


 そうして、3人はゲートで次に目的地へと向かった。



「ここが私の実家です」


 そう、アボシーの実家だ。家から女性が出てきて、


「あら?アボシーじゃない。お勤めはどうしたの?こちらの方は?」

「お初にお目にかかります。バーハーグト大陸、ザガントリア王国の、エミール・ザガントリアともうします」

「お初にお目にかかります。妻のヘクディー・ザガントリアです」


 女性はまだ困惑していたが、


「まぁ、立ち話も何だし、入って入って」


 そして、3人は家に入れてもらい、


「おぉ、アボシーか!」


 中には男性がいた。

 この女生と男性が、アボシーの両親らしい。

 エミールとヘクディーは、もう一度挨拶をし、お告げとアボシーの話しをすると、


「そりゃまた神様のお告げで縁談が決まるとは、こりゃめでてぇな」

「いえ、まだ決まったわけでは」

「いいや、神様の言うことだ。頑張ったってくつがえらねぇ。サクラや、酒と杯!」

「はい。ちょっと待ってね」


 エミールとヘクディーは慌てて、


「まだ未成年なので酒は飲めませんよ!」

「そうです。酒はまだダメです」

「固めの杯は酒を飲んだうちに入らねぇ。一口だけだ。そういうしきたりだから付き合ってくれ」


 そう言われれば無理に断ることもできず、受け入れることにした。

 エミールは、杯に注がれた、透明な酒を一気いっきにあおる。次にアボシー。ヘクディーにアボシーの父のタカミヤに母のサクラがあおって、


「今日からみんな家族だ。遠慮えんりょなく訪ねてきてくれ。また会おう」

「ご配慮ありがとうございます。また来ます」


 そう言って、エミールとヘクディー、アボシーは、今度こそ、ザガントリアシティの王城に帰るのであった。



「ふん、そちが例の娘か」


 帰宅の挨拶と、アボシーの紹介にやって来た3人。オーマーダム国王とビーリヒム王妃が会ってくれて、

「お初にお目にかかります。シンドーフ大陸はテンジャオ王国のナムシロン大神殿で巫女をしておりましたアボシー・ミニガムスと申します」

「部屋は用意した。しばらく城に住んでもらって人となりを見させてもらう。荷物の整理もあろう。夕食まではまだ時間があるから自分のことをするが良い」


 そして、用意された部屋へ行き、アボシーとヘクディーが持ってきた荷物を部屋で整理し、エミールは自室で待つことにした。

 この城の王家私室区画の子供部屋は、大きな個室が4部屋、中個室が6部屋、小個室が10部屋ある。

 そして、ヘクディーが大個室、エミールとアボシーが中個室である。

 エミールの部屋の隣にアボシーの私室が割り当てられたのだった。


 しばらく時間をおいて、


「エミール様、部屋の片付けが終わりました」

「お疲れ様。入って入って」


 エミールは、部屋にヘクディーとアボシーを招き入れ、雑談するのであった。


 その後、夕食となるのであったが、エミールにとっては針のむしろであった。

 オーマーダム国王とビーリヒム王妃からは冷たい、虫を見るような目で見られ、ヘクディーは平気そうだがアボシーは緊張して、話題に入って来ない。

 そんな緊張した夕食を済ませ、それぞれ風呂に入り、少ししてから、


「エミール様、入れて下さいませ」


 ヘクディーが部屋にやって来た。

 エミールは、ヘクディーを部屋に招き入れ、一緒にベッドに入り、


「アボシーのことはどうなさいますの?」


 と、ヘクディーに聞かれたので、


「まずはどれだけ魔法が使えるか見ようと思っている」


 とだけ、伝えるのであった。



 チュン、チュンチュン



「今日はマシかな」


 朝、エミールは自分のベッドで目が覚めた。いつものように体が縛られたような圧迫感。そして、耳から首まで、それに顔が、べっとりねちゃねちゃとしていた。


「すーはーすーはー。ぺろぺろぺろぺろ。エミール様、美味おいしいですわ♡最高の美味びみですわ♡私だけのエミル様ではなくなるかも知れませんが、離れませんわ。離しませんわ♡」


 毎日続けられているこの光景。エミールは、女の子に抱きつかれている今の状況を客観的に考えると、段々と興奮してきた。


 そして10分後、


「あ。エミール様、お早うございます」

「お早う」


 抱きついたまま朝の挨拶をするヘクディー。


「何だか、心臓がドクドク早くなって、興奮してきて、とてもキモチイイですわ♡」


 ヘクディーは顔が赤くなっていき、エミールにディープキスをした後、うっとりとした顔をしながらゆっくりとエミールから離れる。

 ヘクディーも自室に帰り、それぞれメイドに手伝ってもらいながら着替えて、食堂へ向かおうと、エミールとヘクディーが合流したとき、


「エミール様、ヘクディー様。仲むつまじいのは宜しいことでございますが、子作りは体ができてから。あと少し、もうしばらく我慢して下され」


 そう、侍従頭じじゅうがしらのヘイドリックからお願いされた。


 そして、アボシーとも合流して、朝食を食べに向かうのであった。
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