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勉強とこの世界の把握

ウルボロン王との謁見―後編

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 ウルボロン国王に案内されて行ったのは、大人数で会議でもできそうな、広い部屋であった。その中心に大きい机とズラリと並んだ椅子。

 ウルボロン国王は、一番奥まで行き、入ってきた扉の方を向いて座り、


「おい、誰か!バーハーグト大陸の全体図を持って来てくれ!」


 ウルボロン国王が声をかけると、使用人の方が、さっと地図を持って来て、国王陛下の前の机の上に広げ、陛下の後ろに控えた。

 ウルボロン国王の、向かって左側に二郎とミランダが。向かって右側にエミールとガーギニヤ侯爵が立って見ている。


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「これがそのバーハーグト大陸の地図です。そして、西側一帯をめるのが、我がナサスティア王国なのです」


 ウルボロン国王は、地図の西側を指し示しながらそう言う。


「そして、中央から南にかけた一帯に領土を持つのが、エミール殿の、『御使い様』の予言を出した、ダダグッド聖神国です」


 バーハーグト大陸のド真ん中から南の海まで指をすべらせながら、そう言う。


「そして、ダダグッド聖神国の北にあるのがザガントリア王国、大陸の東側をめるのが、スペニシア王国と、この大陸にある全4カ国です」


 ウルボロン国王の説明は続く。


「公用語はペリヒッピ語、国教はマームダラ教。これは、他の国、ダダグッド聖神国でも、ザガントリア王国でも、スペニシア王国でも同じです。そして、マームダラ教の総本山があるのがダダグッド聖神国で、予言を出したのは、その総本山である、バービニス大神殿です」


 ウルボロン国王の説明が切れたところでエミールが、


「地図を写させていただいてよろしいでしょうか?」

「他ならぬエミール殿でしたらかまいませんよ」


 すると、エミールはアイテムボックスから1枚の地図を取り出した。

 その地図は、ウルボロン国王の前にある地図より正確に大陸の形がえがかれており、一目見ただけでエミールの持つ地図の方が綺麗であった。

 エミールは、ウルボロン国王の地図から国名と都市名を描き写し、


「ありがとうございました。とても参考になりました」


 と、お礼を述べると、


「わ、我が国の地図より綺麗にえがかれた地図をお持ちで。さすがは御使い様」


 と、言いながら、ウルボロン国王のひたいには冷や汗が流れた。


「おおそうだ。ジロウきょう、ご家族の名簿を書いてもらえますかな?」


 二郎は怪訝けげんな顔をして、


「書くのはかまいませんが、何にお使いになるのですか?」

「いえ、そう警戒されるな。この大陸での身分証明書をエミール殿のご家族全員に作ろうと思いまして、身分証明書に名前を焼き付ける関係で名簿を欲したわけです。他の3カ国にも了承を得ておりますのでこの国だけではなく他の3カ国へ行っても通用する証明書をお作りできます。いかがですかな?」

「分かりました。作っていただきましょう。エミール、書いて差し上げなさい」

「分かりました」


 エミールは麻宗家全員の氏名を書き始めた。そして、念のため、花菜香はなかと旦那のジョージアと、2人の子供の名前も書いた。

 書き上げて、二郎が確認して、


「それではこれでお願いします」


 二郎はその名簿をウルボロン国王に手渡した。


「頼むぞ」


 ウルボロン国王は、後ろに控えていた使用人に名簿を渡し、


「それでは続きを話しましょう」


 話しを続けるのであった。



「…とまあ、このようになっているわけです」


 ウルボロン国王から、このバーハーグト大陸の詳しい話が聞けた二郎、ミランダ、エミールの3人。そこで、


「失礼します。アソウ家の方々の身分証明書が出来上がりましたのでお持ちしました」

「おぉそうか。持ってまいれ」


 使用人がウルボロン国王に、身分証明書と先ほど書いた名簿をまず渡し、


「これで全員分そろっているはずじゃ。ジロウきょう、ご確認を」


 二郎が受け取り、確認する。全員分ることを確かめると、


「ありがとうございます。使わせていただきます」

「うむ。しかしそのままでは使えぬ。本人の血を一滴いってきらして本人登録をすれば完成なので、帰ってからその作業を忘れずに行なってくれ」

「分かりました」


 二郎が礼をする。ウルボロン国王は話しを続ける。


「それでじゃ。他の国にエミール殿と会うと言ったら、他の国の王族も会いたいと言い出しての。あと3カ国、回ってもらえぬだろうか?」


 二郎、ミランダ、エミールは、それぞれでしばし考え、


「私はいいのですが、お父様、お母様、どうなさいますか?」

「私もかまわない。ミランダはどうだ?」

「私もお目にかかってみたいですね。賛成です」


 ウルボロン国王は、ホッとした顔をして、


「そうかそうか。それでは先方にはこちらから連絡を入れるので、どういった日がいいか、お教え願いますかな?」


 二郎は7日ごとに休みがあるのでその日に合わせて欲しいことを伝え、


「そういった日には毎回エミール殿がザーサランド領にあらわわれると聞いておる。エミール殿、日程の相談に、ついでにこの王城へ寄っていってくれまいか?」

「分かりました。寄らせていただきます」

「これ、ムスディーダスきょう、こちらへまいれ」


 ムスディーダスきょうと呼ばれた男性が、エミールのもとへやって来る。


「それでは日程に関しては、これからこのムスディーダスきょうと相談してくれたまえ」

「ムスディーダスと申します。これからよろしくお願いします」

「エミール・アソウです。こちらこそよろしくお願いします」


 エミールは、ムスディーダスきょうと挨拶を交わすと、ウルボロン国王は、


「この大陸の北東と南西にそれぞれ陸地がある。もし興味がおありなら、そちらにも行ってみるのもいいかもれん」


 そして、


「陛下、そろそろお時間です」

「おぉ、もうそんな時間か。次の用があるのでワシはそろそろ行かねばならん。ジロウきょう、ミランダ殿、エミール殿、会えてうれしかったぞ。いいえんができたわい」


 そして、ウルボロン国王は、二郎、ミランダ、エミールとそれぞれ握手をわし、


「それではまた気軽にたずねてきてくれ。それでは失礼する」


 こうして二郎、ミランダ、エミールと、ウルボロン・ナサスティア ナサスティア王国国王との初めての会談は終了するのであった。
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