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新しい生活
森のその先は?
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薫がラガダー地方へ向けて出発して2日目の夜、同じ町に貴族が泊まっているという情報を得た。同行してきたナターシルアにアポイントメントを取るように指示するとともに二郎にも念話で伝えた。
その貴族とは、アブラーブラ・ザッケガーニ伯爵。ラガダー地方に領地を持っているらしい。
ザッケガーニ伯爵は夕食が終わったらしく、食後、会談の約束をしたとナターシルアが伝えてくれた。
王都の二郎もこちらの薫も急いで夕食を食べ、二郎を呼びに行って会談に挑んだ。
「これはこれはアソウ公爵夫妻。お初にお目にかかります」
「急な面会になりまして申し訳ありません。私はジロウ・アソウ公爵。こちらは妻の薫です」
挨拶が終わり、雑談が始まる。
「そういえば、最近、森を抜けて、商隊が我が国に抜けてくるようですが、言葉が分らなくて苦労しているようですな」
「それは、森を抜けた先に人が住んでいるということでしょうか?」
「詳しくは分りません。何せ、言葉が通じず、話せませんから。しかし、持ち物を見た限りでは人は住んでいるでしょう。森を抜けた先に何がある?ということを真剣に考えた人はいませんでしたから考えてみる良い機会なのかも知れません」
「面白い話ですね。我々が魔法で通訳できるかも知れません」
「そう言えば、魔物との交渉で通訳の魔法を活用されたとか。そう言えば、ハスピリーネ山脈の先には何がある?ということを考える人もあまりいませんね」
そう言えば、二郎も薫も外国についてほとんど考えたことがなかった。これは良い機会かも知れない。森を抜けた先、またはハスピリーネ山脈を抜けた先に何があるか、調査するのも面白いと思った。
その後も他愛のない話で情報交換をした後、ザッケガーニ伯爵と別れた。
「森を抜けた先やハスピリーネ山脈を抜けた先に国があるかも知れんな」
「仕事が一段落したら調べてみたいわね」
不安もあるが、期待が広がる話であった。
それから数日してラガダー地方の都市、マーアトリアに着いた。
一般魔道士32名に出迎えられ、デイザス地方のときと同じように、1日目は火力練習。その後、二郎を含めた宮廷魔道士たちを呼んで、この地方の要所を散策した。
「道中で森を抜けてきた商隊がいると聞いたんだが、どこにいるか分るかしら?」
「調べてみます」
地元の魔道士に聞いて、その商隊に会ってみることにした。
「私が、アラバーニ・パテントス。パテントス商会の代表をやってます。タンザナティア王国からやって来ました。話の通じる人がいて助かりました」
「私はカオル・アソウ。このザガンガ王国で、筆頭宮廷魔道士をやっているの。で、私があなたたちの言葉が喋れるんじゃなくて、魔法で通訳しているの。どうもあなたたちの言葉を知っている人は、この国にはいそうにないわね」
「魔法であれ何であれ、話が分る人がいるだけでも助かります!ここで品物を売り買いしてまた本国に戻りたいんです」
薫は、アラバーニからタンザナティア王国の国家規模や政治体制などを聞き出し、アヤコフにメモを取らせた。
「そんな大国があの森の向こうにあるのね。それで、何故森を抜けようとしたの?我々の国を知っているのかしら?」
「古い言い伝えに国があることはよく知られています。おとぎ話のようなものです。でも、森を抜けるのが大変で誰も森を目指しません。それに、話が古すぎて、本当に国があるかほとんどの人が疑っています。そこまでは他愛のない話だったのですが、話が盛り上がりすぎて引っ込みがつかなくなって、駆け出しの私が森の向こうへ行ってくれという話になりまして」
要するに、森の向こうに何がある?と、話が盛り上がったところで貧乏くじを引いたのがアラバーニらしい。
「ここの魔道士に今使っている翻訳の魔法を教えておくから、交渉のときとか、必要になったら願い出るといいわ。話は通しておくから」
「ありがとうございます。話が通じなくて不自由していたんです。これで品物を売り買いして国元に戻れます」
「あなたと話していて楽しかったわ。残りのザガンガの滞在期間、楽しんでね」
そうして薫たちとアラバーニたちが別れ、
「二郎、話は聞いていたわね。国王に知らせておいてくれるかしら?」
「分った。知らせておくよ」
そうして、宮廷魔道士たちを王城へ送り届けるのであった。
2日目には便利魔法の講習会。皆、新しく覚える魔法に目を輝かせていた。
そうしてラガダー地方の滞在を終え、
「カオル様、またお越し下さい」
馬車で帰る薫たち。薫はまた風景も見ずに本を読みふけるのであった。
その貴族とは、アブラーブラ・ザッケガーニ伯爵。ラガダー地方に領地を持っているらしい。
ザッケガーニ伯爵は夕食が終わったらしく、食後、会談の約束をしたとナターシルアが伝えてくれた。
王都の二郎もこちらの薫も急いで夕食を食べ、二郎を呼びに行って会談に挑んだ。
「これはこれはアソウ公爵夫妻。お初にお目にかかります」
「急な面会になりまして申し訳ありません。私はジロウ・アソウ公爵。こちらは妻の薫です」
挨拶が終わり、雑談が始まる。
「そういえば、最近、森を抜けて、商隊が我が国に抜けてくるようですが、言葉が分らなくて苦労しているようですな」
「それは、森を抜けた先に人が住んでいるということでしょうか?」
「詳しくは分りません。何せ、言葉が通じず、話せませんから。しかし、持ち物を見た限りでは人は住んでいるでしょう。森を抜けた先に何がある?ということを真剣に考えた人はいませんでしたから考えてみる良い機会なのかも知れません」
「面白い話ですね。我々が魔法で通訳できるかも知れません」
「そう言えば、魔物との交渉で通訳の魔法を活用されたとか。そう言えば、ハスピリーネ山脈の先には何がある?ということを考える人もあまりいませんね」
そう言えば、二郎も薫も外国についてほとんど考えたことがなかった。これは良い機会かも知れない。森を抜けた先、またはハスピリーネ山脈を抜けた先に何があるか、調査するのも面白いと思った。
その後も他愛のない話で情報交換をした後、ザッケガーニ伯爵と別れた。
「森を抜けた先やハスピリーネ山脈を抜けた先に国があるかも知れんな」
「仕事が一段落したら調べてみたいわね」
不安もあるが、期待が広がる話であった。
それから数日してラガダー地方の都市、マーアトリアに着いた。
一般魔道士32名に出迎えられ、デイザス地方のときと同じように、1日目は火力練習。その後、二郎を含めた宮廷魔道士たちを呼んで、この地方の要所を散策した。
「道中で森を抜けてきた商隊がいると聞いたんだが、どこにいるか分るかしら?」
「調べてみます」
地元の魔道士に聞いて、その商隊に会ってみることにした。
「私が、アラバーニ・パテントス。パテントス商会の代表をやってます。タンザナティア王国からやって来ました。話の通じる人がいて助かりました」
「私はカオル・アソウ。このザガンガ王国で、筆頭宮廷魔道士をやっているの。で、私があなたたちの言葉が喋れるんじゃなくて、魔法で通訳しているの。どうもあなたたちの言葉を知っている人は、この国にはいそうにないわね」
「魔法であれ何であれ、話が分る人がいるだけでも助かります!ここで品物を売り買いしてまた本国に戻りたいんです」
薫は、アラバーニからタンザナティア王国の国家規模や政治体制などを聞き出し、アヤコフにメモを取らせた。
「そんな大国があの森の向こうにあるのね。それで、何故森を抜けようとしたの?我々の国を知っているのかしら?」
「古い言い伝えに国があることはよく知られています。おとぎ話のようなものです。でも、森を抜けるのが大変で誰も森を目指しません。それに、話が古すぎて、本当に国があるかほとんどの人が疑っています。そこまでは他愛のない話だったのですが、話が盛り上がりすぎて引っ込みがつかなくなって、駆け出しの私が森の向こうへ行ってくれという話になりまして」
要するに、森の向こうに何がある?と、話が盛り上がったところで貧乏くじを引いたのがアラバーニらしい。
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「ありがとうございます。話が通じなくて不自由していたんです。これで品物を売り買いして国元に戻れます」
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そうして薫たちとアラバーニたちが別れ、
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「分った。知らせておくよ」
そうして、宮廷魔道士たちを王城へ送り届けるのであった。
2日目には便利魔法の講習会。皆、新しく覚える魔法に目を輝かせていた。
そうしてラガダー地方の滞在を終え、
「カオル様、またお越し下さい」
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