156 / 167
第六章 神様を起こしに
神の城―テンペギウスとの戦い
しおりを挟む
「昨日は大変でしたね」
「あぁ、色んな意味で疲れた」
昨日はアカツキ伯爵にいろいろと叩き込まれた。
一般の魔法では今まで神界で習っていたので復習のつもりで聞いていたのだが、神代魔法―初級編の辺りから知らない情報が入ってきた。
実践をダイジェストで見せられ、中級編、高等編と続くのだ。
もう何を見せられているのか分からないと言った状態だった。
「あんな詰め込みで実践で使えるわけないのにね」
「あぁ。手加減してくれても良かったと思う」
二人の出で立ちは、汲広は半袖シャツに短パン、両方だぼっと少し大きめである。
腰には左に木剣、右には真剣を挿している。
ステファニアはワンピース姿に杖を持っている。
何でも、杖を持っていた方が魔術師らしいだろ?とスキカが持たせてくれたものだ。
荷物は二人とも担いでいる。食料と水だ。汲広が担いでいる水はなかなかに重い。
「まずは朝食にするか」
「はい」
「水は温かい方がいいか?」
「そうですね。お願いします」
汲広はカップに水をくみ、能力で火を付ける。
昨日の講義で一番役に立ちそうなのは魔法と能力の違いだ。
魔法はマナを消費する。
マナは体内にある魔力で、限界が近いし、あまり使いすぎると苦しくなる。
一方能力はオドを消費する。
オドは体の外、建物、他の動物、植物と、周りから魔力を集めて使う魔法だ。
能力を教わらなかったら、戦いに備えてマナを消費したくなかった。
魔力を温存したくてのんきに温かいぬるま湯が飲みたいとは言わなかった。
簡単な朝食が終わり、いよいよ城へ乗り込む。
門をくぐり、門と正面玄関の中間辺りで声が聞こえ、文字が頭に焼き付いた。
”シャームンドム、フィリフレネシア”
何を現しているものか分からないまま、そのまま正面玄関へ向かう。
汲広は「フンッ」と力を入れて正面玄関を開けた。
その途端、またも声が聞こえ、文字が頭に焼き付いた。
”テンペギウス”
と。それから、テンペギウスの攻略法が頭の中に流れ込んでくる。
「頭を狙って脳しんとうを狙えってか…」
「昨日のアカツキ伯爵より分かりやすい教え方でしたね」
「身も蓋もないことを…」
ここは思っていても言わない方がいいことをステファニアは言う。
しかし、ここには汲広とステファニアしか居ない。
「まぁ、いいか」と思う汲広であった。
扉を開けると、暗かった中が何かの魔法であろうか、部屋が明るくなる。
テンペギウスはピクリとも動かない。
部屋の中に入り、扉を閉め、邪魔になる荷物を降ろし、3歩程歩いた時点でやっとテンペギウスは、
「ギャウゥーーー」
と、吠えだした。
汲広は木剣を出し、構え、ステファニアも杖を構える。
テンペギウスの顔がこっちを向き近づく。
「ステファニア、何か来る。避けろ!」
ステファニアは横っ飛びにテンペギウスの正面を避け、汲広は前へ飛んだ。
「たあぁーー」
汲広はテンペギウスの顔との間合いを詰めると、テンペギウスの頭に木剣を叩きつけた。
クラッとしたテンペギウスだったが、その隙を見逃さず、ステファニアが反対側から杖を叩きつける。
テンペギウスは怯んでいるのか、襲撃で動けないのか、汲広とステファニアに成されるがまま、木剣と杖の攻撃を受け続ける。
「ギャ、ギャフーン」
しばらく打撃を叩き込んだら、テンペギウスはピクピクっと痙攣し、立っている体勢を維持できなくなり、横にごろんと倒れ伏した。
「気絶、したかな?」
「この隙に、奥まで進みましょう」
ステファニアの言葉で荷物を背負い直し、入ってきた方向とは反対側の扉に向かう汲広とステファニア。
「ふんぬぅー」
汲広は力を込めて扉を開け、二人は中へ入る。
テンペギウスの間は明るさが消え、入った部屋には明かりが灯る。
そこは小部屋であった。
魔物はいない。
「戦い… とは言っても一方的だったがちょっと休憩しよう。ステファニア、腰掛けて」
「そ、そうですね。休憩しましょう」
汲広は思い出したことがあり、お湯を沸かし、土のう袋の魔法で茶器を出し、お茶を入れ始めた。
「そういえば、僕たち、土のう袋の魔法が使えるのに、何で荷物を背負っているんだ?」
「そういえば… 土のう袋の魔法で事足りますのにね」
実に不自然だった。
戦い?の中での一時の休憩。
二人は温かい飲み物を飲んで英気を養うのであった。
「あぁ、色んな意味で疲れた」
昨日はアカツキ伯爵にいろいろと叩き込まれた。
一般の魔法では今まで神界で習っていたので復習のつもりで聞いていたのだが、神代魔法―初級編の辺りから知らない情報が入ってきた。
実践をダイジェストで見せられ、中級編、高等編と続くのだ。
もう何を見せられているのか分からないと言った状態だった。
「あんな詰め込みで実践で使えるわけないのにね」
「あぁ。手加減してくれても良かったと思う」
二人の出で立ちは、汲広は半袖シャツに短パン、両方だぼっと少し大きめである。
腰には左に木剣、右には真剣を挿している。
ステファニアはワンピース姿に杖を持っている。
何でも、杖を持っていた方が魔術師らしいだろ?とスキカが持たせてくれたものだ。
荷物は二人とも担いでいる。食料と水だ。汲広が担いでいる水はなかなかに重い。
「まずは朝食にするか」
「はい」
「水は温かい方がいいか?」
「そうですね。お願いします」
汲広はカップに水をくみ、能力で火を付ける。
昨日の講義で一番役に立ちそうなのは魔法と能力の違いだ。
魔法はマナを消費する。
マナは体内にある魔力で、限界が近いし、あまり使いすぎると苦しくなる。
一方能力はオドを消費する。
オドは体の外、建物、他の動物、植物と、周りから魔力を集めて使う魔法だ。
能力を教わらなかったら、戦いに備えてマナを消費したくなかった。
魔力を温存したくてのんきに温かいぬるま湯が飲みたいとは言わなかった。
簡単な朝食が終わり、いよいよ城へ乗り込む。
門をくぐり、門と正面玄関の中間辺りで声が聞こえ、文字が頭に焼き付いた。
”シャームンドム、フィリフレネシア”
何を現しているものか分からないまま、そのまま正面玄関へ向かう。
汲広は「フンッ」と力を入れて正面玄関を開けた。
その途端、またも声が聞こえ、文字が頭に焼き付いた。
”テンペギウス”
と。それから、テンペギウスの攻略法が頭の中に流れ込んでくる。
「頭を狙って脳しんとうを狙えってか…」
「昨日のアカツキ伯爵より分かりやすい教え方でしたね」
「身も蓋もないことを…」
ここは思っていても言わない方がいいことをステファニアは言う。
しかし、ここには汲広とステファニアしか居ない。
「まぁ、いいか」と思う汲広であった。
扉を開けると、暗かった中が何かの魔法であろうか、部屋が明るくなる。
テンペギウスはピクリとも動かない。
部屋の中に入り、扉を閉め、邪魔になる荷物を降ろし、3歩程歩いた時点でやっとテンペギウスは、
「ギャウゥーーー」
と、吠えだした。
汲広は木剣を出し、構え、ステファニアも杖を構える。
テンペギウスの顔がこっちを向き近づく。
「ステファニア、何か来る。避けろ!」
ステファニアは横っ飛びにテンペギウスの正面を避け、汲広は前へ飛んだ。
「たあぁーー」
汲広はテンペギウスの顔との間合いを詰めると、テンペギウスの頭に木剣を叩きつけた。
クラッとしたテンペギウスだったが、その隙を見逃さず、ステファニアが反対側から杖を叩きつける。
テンペギウスは怯んでいるのか、襲撃で動けないのか、汲広とステファニアに成されるがまま、木剣と杖の攻撃を受け続ける。
「ギャ、ギャフーン」
しばらく打撃を叩き込んだら、テンペギウスはピクピクっと痙攣し、立っている体勢を維持できなくなり、横にごろんと倒れ伏した。
「気絶、したかな?」
「この隙に、奥まで進みましょう」
ステファニアの言葉で荷物を背負い直し、入ってきた方向とは反対側の扉に向かう汲広とステファニア。
「ふんぬぅー」
汲広は力を込めて扉を開け、二人は中へ入る。
テンペギウスの間は明るさが消え、入った部屋には明かりが灯る。
そこは小部屋であった。
魔物はいない。
「戦い… とは言っても一方的だったがちょっと休憩しよう。ステファニア、腰掛けて」
「そ、そうですね。休憩しましょう」
汲広は思い出したことがあり、お湯を沸かし、土のう袋の魔法で茶器を出し、お茶を入れ始めた。
「そういえば、僕たち、土のう袋の魔法が使えるのに、何で荷物を背負っているんだ?」
「そういえば… 土のう袋の魔法で事足りますのにね」
実に不自然だった。
戦い?の中での一時の休憩。
二人は温かい飲み物を飲んで英気を養うのであった。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
神の使いでのんびり異世界旅行〜チート能力は、あくまで自由に生きる為に〜
和玄
ファンタジー
連日遅くまで働いていた男は、転倒事故によりあっけなくその一生を終えた。しかし死後、ある女神からの誘いで使徒として異世界で旅をすることになる。
与えられたのは並外れた身体能力を備えた体と、卓越した魔法の才能。
だが骨の髄まで小市民である彼は思った。とにかく自由を第一に異世界を楽しもうと。
地道に進む予定です。
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる