異世界マゼマゼ奮闘記

ぷい16

文字の大きさ
上 下
110 / 167
第五章 流通革命

引っ越しの挨拶回り

しおりを挟む
 汲広くみひろはアカツキ伯爵の記憶を探っていた。

 神代魔法の中級編をどこまで読み進めたか知るためである。


(よしよし、人や動物の魂に直接語りかける部分はもうおさめたようだな)


 それを確認すると、汲広くみひろはまず、第一流通部門へ挨拶に行った。

 ちょうど、第一流通部門が朝の会をするところであった。汲広くみひろは壇上へ立ち、


「私は、日本の流通を変えるため。日本に帰ることになりました。日本との時差で、早朝にしか連絡が取れないため、代表が替わり、新代表のにんを、アカツキ伯爵がすることになりました。今まで私の指揮の下、頑張がんばってくれてありがとう。あまりたよることがないと思われるが、アカツキ伯爵指揮のもとみな、これからも頑張がんばって欲しい」


 汲広くみひろは拍手に包まれながら、見送られた。

 次に向かったのは、牧場の綿抜わたぬき一久かずひさのところへ行った。


綿抜わたぬきさん、お久しぶりです」

「お久しぶりです汲広くみひろさん。こんな朝早くからどうしたんですか?」

「新しい物流ビジネスを始めることになってそちらを指揮しきするため日本に帰ることになったんですよ。それで、今までお世話になったところに挨拶あいさつ回りをしているんですよ」

「日本に帰ることになったなら、ここはどうするんですか?」

「元々の領主であるアカツキ伯爵が面倒を見ることになってます。アカツキ伯爵をどうかよろしくお願いします」

「お別れは寂しいですが、私は私の仕事をするだけです。新しいビジネスが成功しますように」


 その次は、牧場の五右武路ごえぶろ永遠とわのところである。


汲広くみひろさんがいなくなるなんて、寂しいですね」

「同じ顔をしたアカツキ伯爵が半年に一度、こっちに住むようになると思うんで、アカツキ伯爵をどうかよろしくお願いします」


 その次は、マヤ・スムケホーズ率いる農作物のうさくもつ運搬班のところへ行った。ちょうど全員が集まっていたので挨拶をした。


みなの活躍があり、農作物のうさくもつが高値で売れるようになり、農家も我々も、ふところうるおうようになりました。どうもありがとう。私は、日本の運輸業からの要請ようせいがあり、日本へ帰ることになりました。新しい指導者、アカツキ伯爵を筆頭ひっとうに、これからも頑張がんばって下さい」


 アカツキ邸に帰って代官のミラトにも話しをする。


「日本の運輸業の要請ようせいにより、日本に帰ることになりました。今までアカツキ領のために頑張ってくれてありがとう」

「お別れとは寂しいですね。と、いうことは、他の領地のようにアカツキ伯爵は半年王都、半年領地へ帰ってくるんですか?」

「その予定です。前のように、アカツキ伯爵指揮のもと、頑張って下さい。あ、それと…」


 汲広くみひろはミラトの頭に手をかざした。


「ミラトはアカツキ伯爵のスマホの電話番号をご存じですか?」

「はい。知ってます」

「今、念話と、掃き出し窓の能力を授けました。口を閉じて、私に何か語りかけて下さい」

(何かと言われても、はて、困りました)

「「何かと言われても、はて、困りました」と、思ったことが伝わりました」

「ほんとうですか?!」

「今度は掃き出し窓の能力を試しましょう」


 すると、汲広くみひろは掃き出し窓の能力を使い、


「覚えておいてもらいたい場所があるのでついて来て下さい」


 汲広くみひろとミラトが楕円を通ると、王都のアカツキ伯爵邸の玄関に着いた。


「ここは?」

「王都のアカツキ伯爵邸の玄関です。アカツキ伯爵に緊急の連絡があるときに、ミラトが自力で指示をあおげるように、自力でここへ来られるようになって下さい」


 汲広くみひろは掃き出し窓の能力を閉じ、


「ミラト、まずは執務室に帰りましょう」

「でも、どうすれば…」

「まずは執務室をイメージして…」


 汲広くみひろは掃き出し窓の能力の使い方をミラトに説明する。


「では、やってみて下さい」


 ミラトは集中すると、黒い楕円が浮かび上がってきた。


「では、通ってみましょう」


 汲広くみひろとミラトは、その楕円を通った。

 果たして汲広くみひろとミラトは元いた執務室に帰ってこられた。


「私が掃き出し窓の魔法を使えるとは…」

「では、今度は先ほどの玄関に戻ってみましょう」


 掃き出し窓の能力を一旦いったん閉じ、ミラトはまた、楕円を浮かび上がらせた。


「では、通ってみましょう」


 果たして、汲広くみひろとミラトは王都のアカツキ伯爵邸の玄関に着いた。

 今出した窓で執務室に帰り、


「成功しました。これで緊急の要件ができても安心ですね」

「私が掃き出し窓の魔法を使えるとは…」

「掃き出し窓の魔法ではなく、掃き出し窓の能力です。能力の方はオドを使うので、体への負担が少ないです」

「おぉ、それは本当ですか?では、いくらでも掃き出し窓の能力を使いたい放題じゃないですか」

「まぁ、使いたいならそれもアリなんだけどね。餞別せんべつとして、この能力、受け取ってくれ」

「ありがとうございます。クミヒロ様」


 この後、昼に第二流通部門で別れの挨拶あいさつ、午後はアカツキ伯爵へ送る資料整理、終わりの会の時間を見計らって、第三流通部門へと別れの挨拶あいさつに行く汲広くみひろであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

神の使いでのんびり異世界旅行〜チート能力は、あくまで自由に生きる為に〜

和玄
ファンタジー
連日遅くまで働いていた男は、転倒事故によりあっけなくその一生を終えた。しかし死後、ある女神からの誘いで使徒として異世界で旅をすることになる。 与えられたのは並外れた身体能力を備えた体と、卓越した魔法の才能。 だが骨の髄まで小市民である彼は思った。とにかく自由を第一に異世界を楽しもうと。 地道に進む予定です。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

知識を従え異世界へ

式田レイ
ファンタジー
何の取り柄もない嵐山コルトが本と出会い、なんの因果か事故に遭い死んでしまった。これが幸運なのか異世界に転生し、冒険の旅をしていろいろな人に合い成長する。

処理中です...