異世界マゼマゼ奮闘記

ぷい16

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第四章 世界の工場

近況報告

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 ”みな、働き過ぎだ!休め!”と言われた”スキカの苦言”以来2年が経過している。ここで近況報告を。




 牧場を経営することを目標としていた綿抜わたぬき一久かずひさと、五右武路ごえぶろ永遠とわについて。

 綿抜わたぬき一久かずひさは食肉として、豚のような動物であるブーエルを飼育しているが、量産体制が整い、アカツキ領の近隣の村やら王都に食肉を提供している。

 しかし、何故、そんな定期的に食肉を提供できているかは不思議がられている。

 それだけ畜産というものが浸透しんとうしていない証拠だろう。

 畜産というものが知られると、おそらく、畜産という業界にもなっていない業種に目を付けた者が、見学などでごった返すであろう。

 それまでの間、ブーエルという生き物を観察に時間を当てようと決めている知識欲旺盛おうせい一久かずひさであった。


 一方、酪農家を目指していた五右武路ごえぶろ永遠とわも、ブーキル乳の量産体制に入っていた。

 2年前までは、乳を飲むという習慣がなかったのだが、地道な試飲を繰り返し、自ら販路を開拓し、今ではやっと暮らしていけるだけの収入を得るまでになった。


 しかし、一久かずひさも、永遠とわも、共通の問題を抱えていた。

 アカツキ領から広大な土地はもらった。

 しかし、一人で管理するには土地が大きい。

 牧場のこれからの繁栄はんえいのため、アカツキ領から補助が出ているのでお金には困らない。

 つまり、人をやとって規模を拡大しても何ら問題がないわけである。

 そこで、一久かずひさも、永遠とわも、汲広くみひろにお願いをし、人を募集することにした。

 弟子ができる。

 これはアカツキ領の思惑にも合致する。

 なのでその新たな弟子が食うに困らないだけの補助をするのも考えには入っている。まだ募集前。

 どんな人材が入ってくるか楽しみである。



 最近話題にしていないのが農作物運搬班である。

 以前は農作物を中心とした、アカツキ領産の品物を、日本へ売り込もうと、掃き出し窓の魔法と、土のう袋の魔法にひいでた者で組織された言わば別組織の物流班である。

 みな汲広くみひろひそかに人柄ひとがら観察かんさつされ、みな、合格したので、汲広くみひろは掃き出し窓の能力と土のう袋の能力を授けた。

 今までは掃き出し窓の魔法に秀でた、リーダーであるマヤ・スムケホーズに日本行きが集中していたが、能力を授かったことにより、みな単身たんしんで日本へ行けるようになった。

 そのため、日本国内でもより高値で品物を売れる場所にそれぞれのメンバーが単身で行くことができるようになり、よりもうけが多くなった。

 そのもうけも、生産者の収入に反映される。

 アカツキ領も、税収が少しアップする。

 こちらも良好であった。



 真のアカツキ領主であるアカツキ伯爵が学校のため王都にいているので、そのしわ寄せで、汲広くみひろに領地の管理の役目が回ってきている。

 時々領地視察に行っている。農作物運搬班にも領地のことを聞いたりもしている。

 日本から知識を得て農地改良も行っている。

 しかし、実地をんだ人間と、ネットで調べただけの人間では天と地ほどの差がある。

 日本で人を募集して、アカツキ領専任の、フロンティア・スピリットにあふれる農業の専門家を募集してもいいかなと思う汲広くみひろであった。




 王都側のアカツキ伯爵とステファニアは、日本語学校、英語学校、共に、講義は成熟期に入っており、新たな要因が入ってこない限りは授業内容に変化はない。

 変化と言えば、パソコンを使って時事じじニュースを見たり、テレビ電話を通じて、言葉の変化を観察して授業に取り入れる。

 そういったマイナーチェンジはしているのである。

 後発のパソコン学校に関しても、授業はこなれてきており、問題が勃発ぼっぱつするということはかなり少なくなってきた。

 ”スキカの苦言”以来2年が経過している。

 日本語学校、英語学校、そして、パソコン学校は、生徒の入れ替えが同じ時期にされるため、そろって3回生徒を入れ替えている。

 そこまで同じ事を繰り返していれば、こなれてくるのも当然であろう。



 日本語学校、英語学校、そしてパソコン学校の夜の顔、といえば、映画館である。もう王都では娯楽として定着しており、2年経過しても、多少空席が出たり、逆に立ち見になったりするものの、いつもほぼ満員。

 今では3校別々の映画を上映している。

 翻訳の字幕も立ち上げた頃はおかしな表現が混ざっていたものの、こなれてきて今では自然な表現になっている。

 こちらの興行も順調に進んでいる。

 以前、声優を目指して日本へ渡った女性、名をノーラ・ヴォートと言うが、彼女が声優養成学校を卒業し、インジスカン王国へ帰って来た。

 これから仲間を集め、共に修練し、映画をサーメイヤ語吹き替え版で上映するのが彼女の夢だ。

 吹き替え版を知る者として、アカツキ伯爵もこの活動に支援することはやぶさかではないと思っている。

 吹き替え版が現実化すると、より多くの人間が映画を楽しめることだろう。



 領地側の二郎たちも、王都組のアカツキ伯爵達も、それなりに順調に暮らしているのであった。
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