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第三章 4人、日本とインジスカン王国を行き来する
夏休み… のはずが、
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「もっうすぅぐなっつやっすみー」
日本の汲広は浮かれていた。
高校1年生の頃は、アントネラが日本へ来たり、サーメイヤ語教室などで休んでいる暇が無かったのである。
高校2年生になって、進路のこともしっかりと考えなければならないのだが、長期の休みはやはり嬉しいのである。
自宅の玄関の鍵を開けて、
「ただいまー」
「「「おかえりなさい」」」
出迎えたのは、アントネラと、インジスカン王国の悠生とステファニアであった。
何故インジスカン王国の悠生とステファニアがいるの?
汲広は嫌な予感がした。
「「「お話しはリビングでしましょうか」」」
とりあえず、荷物を自室に置いて、リビングへ向かう汲広。
リビングのテーブルにはコップが4人分と、麦茶の入った水差しが用意されていた。
汲広は喉が渇いていたので、一杯の麦茶を飲んだ。
「話というのはだな」
インジスカン王国のアカツキ伯爵がいきなり口火を切る、というかいきなり本題に入ろうとする。
「我々は日本語学校、英語学校で領地に行けないから、夏休みの間、領地の管理をお願いしたい」
汲広はあぁ、また夏休みが無くなるのかと愕然とした。
そして、汲広は、
「アントネラも了承しているのか?」
アントネラの方を見ると、コクリと頷いた。汲広は、
「いやだ!」
駄々をこねた。
逃げられないと分かっていて。
すると、インジスカン王国のアカツキ伯爵は、
「お前達しか手空きの者も、適任者という点でも任せられる人間が居ないのは分かっているだろう?」
「分かってるよぉ。ただ、1年のときも休みが無くて、一回反発してみたかっただけだよ。受けるよ。もぅ」
汲広は嫌々了承するのであった。
インジスカン王国のアカツキ伯爵とステファニアは、その足で、アカツキ伯爵領の領主邸に出向き、代官のミラト・バハーミッツと会った。
「私とステファニアは分身の術が使えてな、
もうすぐもう一人の私とステファニア、
私がクミヒロ・オカツカ、ステファニアがアントネラ・オカツカを名乗っているのだが、
2人がこの領地を視察するのに置いていくから世話してやってくれ」
ミラトはちょっと考えて、
「分身の術とは初耳ですな。もしや魔法ですか?」
「まぁ、魔法の一種だ。ただ、魔力をほとんど使わないのが利点だ」
「で、すぐにはこちらにいらっしゃらないのですか?」
「あぁ。元々、日本の方で学生をしておってな。
もうすぐ長期の休みがあるのでその間、こちらの管理をするのだ。
あいつの記憶も私の中にあるし、私の記憶もあいつの記憶の中にある。
予習を怠らなければそうそう失敗はない」
「はぁ。そういうことでしたら、伯爵夫妻としてお相手致しますが…」
「そこで、あいつも考えてくるかもしれんが、
何も考えなしでこちらに来る恐れがある故、
視察のプランを一応考えていてもらいたい」
「承知致しました。しかし、分身の術ですか。私も使ってみたいものです」
「生憎と、何故覚えたのかは私にもステファニアにも分からんのだ。
教えたくても言葉にできないのだ。許せ」
「そうですか。それは残念です。それでは、こちらもプランを考えておきます」
「よろしく頼む。私も、次の授業の準備がある故すぐに戻らねばならぬ。
頼み事ばかりで済まぬな」
「いえいえ。それも私めの仕事に御座います。それでは行ってらっしゃいませ」
「行ってくる」
そうして、インジスカン王国のアカツキ伯爵夫妻は、王都へ戻ったのであった。
*
汲広は四苦八苦していた。
汲広にもインジスカン王国のアカツキ伯爵の記憶はある。
そして、インジスカン王国のアカツキ伯爵にも汲広の記憶はある。
しかし、それぞれの生活がある。
互いの記憶は気に留めておく程度にとどめ、メインにはやはり自分の記憶を置いているのである。
そこで、いきなり汲広が、インジスカン王国のアカツキ伯爵の役をしろというのである。
色々と手探りで、汲広はインジスカン王国のアカツキ伯爵の記憶をたどるのである。
「あいつ、随分とややこしいことを平然とやれるようになってるんだな」
汲広はステファニアの部屋に行った。
「汲広だ。居るか?」
「はぁい。開いてますよ」
汲広はアントネラの部屋に入って、
「インジスカン王国のアカツキ伯爵の記憶をたどっていたんだが、
アイツ、随分とややこしいことを平然とやれるようになってるんだな」
「あっちのステファニアも似たようなものです。私にも荷が重いです」
日本の二人は二人して泣き言を言っていた。
「でも、約束したんだし、やれることはやろうか」
「そうですね。それしかないですね」
前途多難な日本の岡塚夫妻であった。
日本の汲広は浮かれていた。
高校1年生の頃は、アントネラが日本へ来たり、サーメイヤ語教室などで休んでいる暇が無かったのである。
高校2年生になって、進路のこともしっかりと考えなければならないのだが、長期の休みはやはり嬉しいのである。
自宅の玄関の鍵を開けて、
「ただいまー」
「「「おかえりなさい」」」
出迎えたのは、アントネラと、インジスカン王国の悠生とステファニアであった。
何故インジスカン王国の悠生とステファニアがいるの?
汲広は嫌な予感がした。
「「「お話しはリビングでしましょうか」」」
とりあえず、荷物を自室に置いて、リビングへ向かう汲広。
リビングのテーブルにはコップが4人分と、麦茶の入った水差しが用意されていた。
汲広は喉が渇いていたので、一杯の麦茶を飲んだ。
「話というのはだな」
インジスカン王国のアカツキ伯爵がいきなり口火を切る、というかいきなり本題に入ろうとする。
「我々は日本語学校、英語学校で領地に行けないから、夏休みの間、領地の管理をお願いしたい」
汲広はあぁ、また夏休みが無くなるのかと愕然とした。
そして、汲広は、
「アントネラも了承しているのか?」
アントネラの方を見ると、コクリと頷いた。汲広は、
「いやだ!」
駄々をこねた。
逃げられないと分かっていて。
すると、インジスカン王国のアカツキ伯爵は、
「お前達しか手空きの者も、適任者という点でも任せられる人間が居ないのは分かっているだろう?」
「分かってるよぉ。ただ、1年のときも休みが無くて、一回反発してみたかっただけだよ。受けるよ。もぅ」
汲広は嫌々了承するのであった。
インジスカン王国のアカツキ伯爵とステファニアは、その足で、アカツキ伯爵領の領主邸に出向き、代官のミラト・バハーミッツと会った。
「私とステファニアは分身の術が使えてな、
もうすぐもう一人の私とステファニア、
私がクミヒロ・オカツカ、ステファニアがアントネラ・オカツカを名乗っているのだが、
2人がこの領地を視察するのに置いていくから世話してやってくれ」
ミラトはちょっと考えて、
「分身の術とは初耳ですな。もしや魔法ですか?」
「まぁ、魔法の一種だ。ただ、魔力をほとんど使わないのが利点だ」
「で、すぐにはこちらにいらっしゃらないのですか?」
「あぁ。元々、日本の方で学生をしておってな。
もうすぐ長期の休みがあるのでその間、こちらの管理をするのだ。
あいつの記憶も私の中にあるし、私の記憶もあいつの記憶の中にある。
予習を怠らなければそうそう失敗はない」
「はぁ。そういうことでしたら、伯爵夫妻としてお相手致しますが…」
「そこで、あいつも考えてくるかもしれんが、
何も考えなしでこちらに来る恐れがある故、
視察のプランを一応考えていてもらいたい」
「承知致しました。しかし、分身の術ですか。私も使ってみたいものです」
「生憎と、何故覚えたのかは私にもステファニアにも分からんのだ。
教えたくても言葉にできないのだ。許せ」
「そうですか。それは残念です。それでは、こちらもプランを考えておきます」
「よろしく頼む。私も、次の授業の準備がある故すぐに戻らねばならぬ。
頼み事ばかりで済まぬな」
「いえいえ。それも私めの仕事に御座います。それでは行ってらっしゃいませ」
「行ってくる」
そうして、インジスカン王国のアカツキ伯爵夫妻は、王都へ戻ったのであった。
*
汲広は四苦八苦していた。
汲広にもインジスカン王国のアカツキ伯爵の記憶はある。
そして、インジスカン王国のアカツキ伯爵にも汲広の記憶はある。
しかし、それぞれの生活がある。
互いの記憶は気に留めておく程度にとどめ、メインにはやはり自分の記憶を置いているのである。
そこで、いきなり汲広が、インジスカン王国のアカツキ伯爵の役をしろというのである。
色々と手探りで、汲広はインジスカン王国のアカツキ伯爵の記憶をたどるのである。
「あいつ、随分とややこしいことを平然とやれるようになってるんだな」
汲広はステファニアの部屋に行った。
「汲広だ。居るか?」
「はぁい。開いてますよ」
汲広はアントネラの部屋に入って、
「インジスカン王国のアカツキ伯爵の記憶をたどっていたんだが、
アイツ、随分とややこしいことを平然とやれるようになってるんだな」
「あっちのステファニアも似たようなものです。私にも荷が重いです」
日本の二人は二人して泣き言を言っていた。
「でも、約束したんだし、やれることはやろうか」
「そうですね。それしかないですね」
前途多難な日本の岡塚夫妻であった。
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